高度にお勉強なふたり・・・ お二人目からメール!

2009年11月20日
カテゴリ : 多読, 多読的リスニング(多聴)
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わたしはSSSの掲示板で何度か「多読は英語が不得意な人たちの駆け込み寺だ」
というようなことを書きました。

けれども「お勉強=学習」でがんじがらめになった人たちの駆け込み寺でもあったと
思うのです。

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「高度にお勉強なふたり・・・」という記事からはじまった「だれでも多読サークル」の
記事は、幸いにして所期の目的を達成しつつあります。

すなはち、徐々に「お勉強派」の人たちが「いい加減派」へと壊れていっています・・・
I さんが壊れてきたことはすでにお知らせしました。
高度にお勉強な二人のもう一人は、これからご紹介するMさんです。

Mさんははある大学の英文科の4年生で、英語学専攻・・・

・・・ということは大学では「お勉強な環境」に浸っているわけで、
お勉強派からいい加減はへの変身は非常にむずかしかっただろうと
察します。

ところがきのうの「だれでも多読サークル」で、見事に変身なさったことが判明。
さっそくメールで報告してもらいました。

酒井邦秀 先生
 
 こんばんは。いつもお世話になっています。
私の多読の経過について報告させていただきます。
おかげさまで、現在270冊(ORTは冊数にはカウントせず)、
133万語を突破しました。

ORT (英語では「オート」と読みますね、きっと。「オー・アール・ティー」と呼ぶのは
日本語特有の癖でしょうね)をカウントしなかったのは、サークルに通い始めたころは
大切さをご存じなかったためだと思われます。

いつかもう一度新たな目でORTを読み直してくださる日が来ますように・・・

 多読を進めていく中で私の英語に対する認識が
大きく変わってきました。
 まず、辞書を引かずに易しいものから読む
ことを通して、分からない単語に出会っても全く
不安にならないようになりました。
 多読を始める以前は英語の文章を読んでいて
分からない単語に遭遇すると、そこで気になってしまい、
とたんに文章を読み進めるのが苦痛になってしまい
がちでした。しかし、今では知らない単語に出会っても
平気で読み飛ばして物語を楽しむことができます。
もちろん、分からない単語は少ないに越したことはありません。
しかし、知らない単語が文中にあるということと、
物語全体を理解できるかどうかということは、本来直接は
関係しないということが分かったのです。
 それに、辞書を引かずに読み進めても、後になると
たいていの場合は、文脈や物語の流れ、あるいは挿絵
から、単語そのものの意味も分かってしまうことが多いのです。
分からない単語があっても、次のページを開くと意味が分かる
かもしれないという期待を持って読み進めるのも、
多読の一つの楽しみ方かもしれません。

Mさんの変身でわたしがいちばん感嘆したのは ここ ↑ です。
Mさんは本当に礼儀正しい人で、日本ではここ40年くらい見たことがないという
珍しい人です。

それだけに、わたしはMさんが「いい加減」になるのは相当大きな飛躍が必要と
予想していました。けれども、見事に変身なさったことが知らない単語に対する
態度の変化でよくわかります。

そうなると、Mさんの「きちんとした性格」は一挙にプラスに(なんのことか自分でも
よくわかりませんが)変わるかもしれないという気がします。

 それから、私は大学受験やTOEICの文法の問題を
解くのが大好きだったのですが、多読を始めて次第に
文法に対する関心が薄れてきました。おそらく、
一般化された英語の規則を学ぶことより、ごく自然に
使われている英語を吸収したいという気持ちが私の
中で強くなってきたのだと思います。
 それに、以前も似たようなことを書きましたが、
英語の文法事項や例文ををいくら暗記しても実践で使える
英語にはなかなか育ちません。楽しみながら生きている英語に
直接触れるということが、やはり近道だと思います。

↑ ここが実は愉快なところなのです!

わたしはMさんが「だれでも多読サークル」にはじめて現れてすぐに、
Mさんが大事にしている参考書や単語集を取り上げてしまいました。
でも長くなるので、そのことはこの記事の最後に書きます。

 今後は、今までよりも音を入れて、Reading と並行して、
Listening と Speaking の能力をつけたいと思っています。
最初の頃は多読に慣れるのにもある程度の根気を
必要としましたが、今では Happy Reading が私の生活の
一部となっています。英語をこれほど楽しく身につけられるという
ことを知ることができとても幸せです。

Mさんの変身は、多読以前が本当に几帳面なお勉強派だっただけに、
敬服しています。

Mさんは英語学を専攻するために大学院に進学するそうですが、
わたしはきのう、大学院の先生方には多読していることは秘密にすることを
助言しました。

多読は「お勉強派」の先生方にとっては危険かつ脅威の存在です。
(東京外国語大学の例でそのことを知っています。)
Mさんの進学する大学院はどこか知りませんが、英語の先生の95%は
多読には猛反対をするでしょう。従って、わたしはMさんに、「隠れ切支丹」に
なることを強く勧めました。

先生方はORTは読んでいません、当然のことながら。
一言で言えば、ことばのいちばん大事な「やさしい」土台を知らないのです。

Mさんがこのまま「やさしいことば」をたっぷり吸収したら、先生たちの知識を
軽く越えてしまいます。それをもし表面に出したら、先生方に疎まれる可能性が
あります。そこで、「隠れ切支丹」になることを勧めるわけです。

さて、わたしがMさんから取り上げた本、つまり多読開始前にMさんが
とても愛おしそうにしていた本を並べておきます。

    「英語力が飛躍するレッスン 音読・暗写・多読のメソッド公開」 今井康人 
                                             (青灯社)
    「速読英単語 上級編」 風早 寛 (Z会出版)
    「DUO 3.0」 鈴木陽一 (ICP Corporation)
    「対話文で覚える 英単語・熟語ダイアローグ1800」 秋葉利治・森秀夫
                                             (旺文社)
    「上級者へのTOEIC Test 英単語」 Z会出版編集部編 (Z会)
    「できる人のTOEICテスト勉強法」 中村澄子  (中経出版)
    「TOEICテスト900点 TOEFLテスト250点への王道」 杉村太郎 
                                        (ダイアモンド社)
    「できる人の英語勉強法」 安河内 哲也 (中経出版)

きのう、別れ際にMさんに「取り上げた本はもういらないんじゃない?」と
たずねました。

するとMさんは「記念のためにいつか返してください」という返事でした。

それ以上はことばを交わさずにきのうはさよならを言いましたが、
「多読以前の必死なお勉強時代」の記念品という意味だといいなと思ったのでした。

こういう本を「ドーピング」と思わずに「お勉強」している人がいたら、
Mさんの体験を参考にすることをすすめます。