多読と受験 多読で受験 T さんの中間報告

2010年9月 1日
カテゴリ : 多読, 聞き読み, をさなごのやうに, 多読と受験, 多読支援
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今年度も何人かの人に受験支援をしています。

そのうちの一人Tさん、高校3年生、がきのう研究室に来て、
多読をはじめていろいろ報告したいことがあると、切り出しました。

聞くと、これがまたよい資料なのです!

で、例によってメールで改めて書いてもらいました・・・

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T さんは「すろっぴ」さんと一緒にこの春(いつだったか?)研究室に現れて、
いろいろ話をして、わたしがお手伝いをすることになりました。
東京近郊のある国立大学を受けます。

多少心配がありました。

3年生の春まで部活動を一生懸命やっていて、たくさんは読んでいませんでした。
しかもかなり「まじめ」な性格のようで、細かいところまで理解したいらしい様子が
窺えました。

そうしたことから、これまでのように

   8月の末までに100万語読もうね、それから過去問!

というやり方ではうまくいかないかもしれないと危惧しました。

その危惧はいまも去ってはいませんが、T さんは予想したよりも多読に向いて
いたと見えて、きのうの報告ではこのまま多読を中心にしていけば
なんとかなるかもしれないと思えてきました。

  (結果についてはお知らせできないかもしれません。)

以下、報告に追加のコメントをしていきましょう。

読みやすいようにと矢印のところで改行を入れました。

before→after

①高校の教科書が読めない!分からない単語だらけだった。
→教科書が楽しい、今の高校生が小学四年の国語の教科書読んでる感覚

T さんが多読に向いていたのかもしれないと思ったのは、
昨日最初にこの感想を聞いたときでした。

実はT さんはわたしの研究室に来るようになってから「わずか」15万語しか読んで
いません。

  (「わずか」と括弧に入れたのは、「わずか」や「たっぷり」は人によって大きく
   ちがうからです。例の H くんはその後記録手帳を見せてもらったところ、
   3年間で「わずか」9万語ちょっとだった!)

②長文は、一語一句の意味を正確に日本語に訳せる=意味がわかるだと思ってた。だから止まったり往復して読むことが多かった
→ 文章を全体でとらえるようになった。訳せないのは英語ができないのではなくて、日本語表現力不足も考えられると思った。

最初会ったときにはいかにも「正確に和訳したい」という人に見えました。

そこで、その癖を洗い流すために、そして、受験までには100万語読めるように、
1日5000語ずつ読もうね、と課題を出したのでした。(この数字は徐々に
多くなると思われます。すでに5000語を越えるようになっているそうです。)

すろっぴさんの支援もあったので、いきなり毎週2000語から5000語くらいの本を
何冊も抱えて帰って、ほとんど読んできました。
そして毎週、どの本がおもしろかったか、「わたしは結構ロマンス好きです!」などと
感想を言ってくれます。

そのあたりから、順調に「多読」しているなとは感じていました。

③センターの一番最後の問題が手も足もでなくて正直出来るようになると思えず、投げやりだった。
→最後の問題から寧ろ解けるようになった。試験じゃなくてもはや読書・娯楽感覚で読む私。

これは多読している人の典型的な感想ですね。
試験問題の長文を「お話」として楽しんでしまう・・・

T さんは当初の真面目風な話にもかかわらず、ずいぶんと頭も気持ちも
やわらかい人だったようです。

④前置詞を暗記するのが大変。
→イメージで覚えられた。

これも、15万語で? というくらいの変化ですね。

⑤(これはビックリ!)
表現力はまずまず
→表現力がついた。 言いたいことをパッと言えるようになった。
1つのいいたいことに対して語彙表現知識が増えた。

よほど吸収率がいいのだろうか? うらやましい限りです。

何かものを落としたときに pick them up ということばがぱっと頭に浮かぶのだ
そうです。そのあたりの乗りやすさは「若さ」故? またしても、15万語で? です。
(そして音の英語らしさはすろっぴさん譲り?)

⑥文章を読むとき注目するのは一文の単語や文法。
→文章の表現に注目するようになった。
(ここスローモーション表現になっててインパクト強い~とか。)
(この表現かっこつけすぎ~とか。)
教科書=正しいと思ってたけど 批判する目もついた。

このあたりももう聞き飽きたでしょうが、15万語で? です、わたしにとっては。

特に T さんの最初のころの「正確に」という志向を知っているので、
なんて早々と抜け出したものだ、そして自分でそれを意識できるとは! と、
本当に驚いています。

⑦ORT二十冊読んでるだけでくらくら、疲れてた。
→読むのが速くなった。楽しい本だとなおさら。

ORT 20冊で疲れていたとは知りませんでした。

  (そんなことちっとも口に出さなかった) 

いまはそういうわけで、読むのが速くなったそうで、このまま読んでいけば
入試前日までに100万語に到達? いや、それはむずかしいでしょうね、普通は。
けれども乗りやすい質のようだから、もっと少なくても必要な変化は表れるのでは
ないかと期待しはじめています。

  (あまり「正確に」にこだわるようなら、多読ではなく、問題集や単語集をすすめる
   つもりでした。)

T さんは来週から過去問をはじめます。

これまでは100万語くらい読んでから過去問をはじめていました。
そして、多読はしてもしなくてもいいよと言っていました。
(そふぃさんは続けて多読もシャドーイングもやりましたね。)

T さんについては多読・聞き読み・シャドーイングと過去問を並行することにします。
その結果どういう変化が出てくるのか、わたしとしては楽しみでもあり、怖くもあり・・・

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ここで、わたしにとって、みなさんにとって、いちばん大事だと思われることは、
T さんの変化はどれもうれしいものだけれども、「15万語で!?」という点を除くと、
どれも前例があるということです。

いわば「多読と受験」の関係に一定の傾向があると言えそうなことです。
T さんんが挙げた1から7はどれもこれまでにほかの人から聞いた覚えがあります。

その辺も、「多読で受験」の道がはっきり見えてきたことの証と言えるように
思います。

さて、これから昼ご飯、それから大学に行きます。