(毒)備忘録 7月3日

2009年7月 9日
カテゴリ : 多読, をさなごのやうに
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「パピイ」さんとしばらくメールのやりとりをしています。
「近眼の独眼龍」さんのメールを紹介した「備忘録」に関わる話です。

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最初の行はわたしがパピイさんとのメールに書いた
「やさしい文章の重要さは少しずつ確かさを増しているように思われます。」
のことです。そう書いたわたしに対して、パピイさんはそれは「常識ではないの
ですか?」と書いています。

それはそうなのですが・・・ わたしの反論?異論?は最後に書きます。

「確かさを増しているように」と言われていますが、
やさしい英語が重要って、常識ではないのですか?

私はもともと伊藤サムさんの「やさしくたくさん」から多読にたどり着いた
せいもあるのかもしれませんが、ある程度多読をしてくると自然に
悟るものだと思っていました。

例の英語入試問題だって、難しい受験勉強をいくらやったって
こんな簡単な英語もわからないだろうと言いたくて作りましたし、
SSSの掲示板の過去ログを見れば、そういう経験談はたくさん出てきますよ。

私にとって、印象的だったのは、しおさんの「3年4か月報告」です。

以下に、抜粋します。

投稿日: 2005/6/3(21:01)

みなさん、こんにちは。しおです。

2002年1月31日に多読を開始し、3年4か月がたちました。
読書語数は1280万語です。
2周年のときは850万語だったので、1年4か月で約430万語読みました。
2周年から間があいてしまいましたが、この間に思ったことや、読んだ本などを
報告したいと思います。

2周年報告のときは、実はひどいスランプに陥っていて、本の紹介はできません
でした。落ち込みをはっきり自覚したのは、2003年11月くらい、多読をはじめて1年10か月くらいの頃です。
3年5か月目にはいったいま、やっと調子が戻りました。

この落ち込みの時期に強く感じたことは

1)好きな本を読むことは、非常に大切である
2)やさしい本はたしかに英語力をつける効果がある
3)何ごともやりすぎてはいけない

という3点です。

タドキストの皆さんなら「な~んだ、当たり前でしょ」ということなのですが、
今回の長期に渡る落ち込みで、この3点の重要性が骨の髄まで(笑)分かりました。

(*この3点について書いていたらとても長くなってしまいました。
すみません。本の紹介を一番最後につけたので、よろしければそこだけ見てください。)

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■ 1)「好きな本を読むことは、非常に大切である」について
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私は、日本語でしか読書していなかった頃は、ミステリーやホラーサスペンスものばかり読んでいて、絵本や児童書の魅力を知ったのは、SSSの多読をはじ
めてからです。
以来、絵本・児童書が好きでたまらなくなりペーパーバックにはほとんど手を出さず、ひたすら絵本(Step into ReadingやI Can Readなど)児童書、GRを読んでいました。

そして「もうそろそろペーパーバックを読もうかな」と思い始めた2003年9月に、
『親子100万語』を執筆するお話を頂きました。
自分で読んでいないと、本を選べないし、責任もって紹介できないので、掲載候補の絵本・児童書シリーズを片っ端から読み始めました。
最初、これまでに読んだ本もかなりあるからなんとかなるかなと思っていたのですが、これが、読んでも読んでも終わりません。
掲載予定本のリストは自分が作ったのだから自業自得なのですが、特に、レベル0~2が膨大でした。
(注:全部といっても、シリーズものは、全部、あるいは8~9割読んだシリーズも
あるし、最初の1,2冊だけ読んだシリーズもあります。単独で題名を掲載した本
は全冊読んでいます。)

ひたすら読んで読んで、語数を数え、YLを考えて、YL表をつくって、を長期間繰り返していると苦痛で、絵本や児童書は見るだけでお腹いっぱい。
約7か月かかって、2004年4月初にはなんとか読み終わりましたが、心が麻痺したような状態がずっと続きました。
読書していても、心に膜がはったようですっと感動がはいってこないし、本の話をしていても噛み合わない感じで、とにかくダメなのです。
『多読入門』でまた忙しくなったこともあり、完全に立ち直るのに1年かかりました。

いくら好きなタイプの本でも、それが毎日毎日続き、リストをつぶしながらノルマを消化するために読むのでは感動する気持ちが擦り切れます。長続きするはずもありません。 私は、「ノルマをこなす」ということにかけては、かなり耐性のあるタイプですが、それでもこうなってしまったので、酒井先生のおっしゃる「ノルマはダメ!」っていう教えがうわっつらではなく心底理解できました。
(「今ごろ!」って言わないで下さい~~)
自分はできていないのに、掲示板では「自分の好きな本を読んでくださいね~」とめちゃくちゃ力をいれてアドバイスしていました。(爆)

結局、長い目で見れば、自分の心にしたがって、「読みたい」と思う本を手に取っていくのが最強なんだと思います。そうしないと長続きはしません。

------------------------------------------------------------------ ■ 2)「やさしい本はたしかに英語力をつける効果がある」について
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ちょうど『親子100万語』の作業がピークだった2004年1月に何を思ったか、
TOEFLを受験し、2周年で報告しました。
(ちょっとした知人の言葉がもとで「いつか留学したい」と思い、現状把握にと
受験したのですが、原稿が終わったら、そんな気はきれいさっぱりなくなりました。
どうも現実逃避したかっただけらしい(恥))

全く準備せず受験したのに、Readingでは時間が30分ほど余ったうえ、CBT250というスコアだったのには、本当に驚きました。
●読むのに追われすぎて、リスニング、シャドーイング量が激減、直前1ヶ月は
子どもに付き合ってアメリカのアニメ『Spongebob Squarepants』のビデオを
数回みただけ。
●読んでいたのは、小学生向け絵本、児童書がメイン。

という状態だったからです。普通の試験対策とはかけ離れています。
この結果は「落ち込んでいる私への神様のプレゼントではないか?」とさえ思い
ました。
2周年報告にはTOEFLのことと、『親子100万語』の執筆にかかる前まで楽しんでいた輸入アニメや海外ドラマの視聴のことを書きました。
本の紹介は苦しくてできませんでした。

TOEFL直前1ヶ月の読書記録をみてみると、次の通りです。

 All Aboard Reading、Step into Reading 、Hello Reader!など40冊
 Gaspard and Lisaシリーズ 6冊
 Nate the Greatシリーズ
 Zack Filesシリーズ
 A Series of Unfortunate Events#1
 Famous Five#1
 Someday, Angeline
 Dog's don't Tell Jokes
 James and the Giant Peach
 The Minpins
 Howl's Moving Castle(『親子』への掲載はページ数の関係でカット)

All Aboard Reading、Step into Reading Hello Reader!は、ちょうどノンフィクションやアメリカ史ものの多い、3-4あたりだったので、TOEFLに役立ったのかもしれません。
TOEFL問題のアメリカの開拓史になんだか懐かしささえ感じましたし、AAR, SIR,HLRのノンフィクションは小学校高学年向けになるとかなり歯ごたえが
あるので鍛えられました。

多読をはじめてから2周年まで、大人向けの素材には殆ど触れていません。
大人向けペーペーバックは5冊だけ読みました。
英語ニュースは、偶然耳にはいる以外は聞かないし(興味がない&時間がない)英字新聞も読んでいません。
多読前に、「やさしいビジネス英語」やその他教材で学習しましたが、そういう
ものから2年も離れていれば普通かなり忘れるはずなので、TOEFL受験前は
かなり不安だったことを覚えています。

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■ 3)「何ごともやりすぎてはいけない」について
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これは1)、2)で書いた通りで、私は長期に渡りやりすぎてしまったのでその後、
1年近く調子が戻りませんでした。
やはり、自分の気持ちに素直に、自分の感動にしたがって読んでこそ、長く楽しく続けられるし、感動がともにあってこそ、英語がすっと頭の中にしみこむのだ
と思います。

TOEFLなど目標があって、もしこの投稿を読んで、「児童向けのレベル別絵本、
Chapter Book、ノンフィクションを大量読みしようか」と思う方がいたら、
●最初から期間限定にする(3か月とか)
●自分の気持ちをよく観察する
●どうにも気分がのらなくなったら、さっさと方針を変える
のなら、負荷を管理できればかなり力がつくのではないかと思います。

以下省略。

パピイさんの言うとおりで、しおさんだけでなく、ほとんどの人がやさしい本の
大切さを口にしています。(そもそも多読の大きな特徴で三本柱の一つなのです
からね。)みなさん、やさしい本があったからこそペーパーバックにたどり着いた
という思いがあるのでしょう。まことにしおさんの言う「2)やさしい本はたしかに
英語力をつける効果がある」と実感されているのでしょう。

で、パピイさんにメールをいただいてから考えているうちに、いまわたしが「やさしい
絵本の大切さ」をいうのは、これまでとちょっと違う意味だという気がしてきました。

    (そして、ここからは非常に危険な水域です。)

例として世の中の英語の先生たちを考えてみましょう。
中には何十年にもわたって何千万語、何億語と読んだ人もいるでしょう。

でも、そういう人たちのほとんどは Oxford Reading Tree や Longman
Literacy Land や graded readers を知らないだろうと思います。いわば
100万語をペーパーバック10冊で踏破し、1000万語を100冊で通過し、1億語を
1000冊で達成した人たちです。

そういう人たちが英語をどんな風に理解しているか、いや、誤解しているか、
それをわたしは学校英語によるものと考えて「さよなら英文法!」で疑問を投げかけ
ました。

その疑問は徐々に確信と変わりつつあります。そして理屈もつけられそうに思います。
たとえば何度も引用する「内容語と機能語」を見てください。ペーパーバックだけを
読んでいると内容語の知識が増える割に、大事な機能語の深さや広がりが指の間
からすり抜けてしまうとということもありえます。

    (また、これは少々飛躍かもしれませんが、ペーパーバックばかり読んでいると
     長い文が多いので、かえって「言葉の最小単位は文ではない」ことに気づき
     にくいかもしれません。うーん・・・要するに、長すぎて言葉を文単位で吸収
     できない!)

さて、きょうのところこのくらいにしておきましょう。いまにも暴走しそうです・・・