やさしいことばをたっぷり吸収すること 第三回 パピイさんの爆弾発言

2009年10月11日
カテゴリ : 多読, 多読のパラドックス
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「ビイル樽」を転がすことにしたので、みなさんに怖い思いをさせることがあるかも
しれません。何しろ坂道を大きなビイル樽が転がっていくんですから・・・

ゴロゴロ、
       ゴロゴロ
              ゴロゴロ
              ・・・・・・・・

次のメールは「パピイ」さんが送ってくださったものにかなり手を入れたものです。
原文は個人の名前がいくつも出ていたので、パピイさんの希望を容れて削除して
あります。けれども大事な「爆弾発言」の部分はそのまま残してあります。

例によって、まずパピイさんのメール部分だけをお読みになった方がいいかも
しれません。

最近のわたしの煩悩

「さよなら英文法! 多読が育てる英語力」とありますが、ずっとロマンスPB
を多読してきて、最近英語力が落ちてきたような気がしています。こんなこ
とを言ったタドキストはいらっしゃらないとだろうと想像しますので、先生
にメールします。

パピイさんは名にし負うロマンス読み。ロマンス本だけで1000万語以上読んで
います。そのパピイさんが ↑ こんなことを言い出すなんて!

    (多読している人たちを怖がらせてしまうのではないか? というのが
     パピイさんの心配でした。それはわたしがこの連載の第二回をなかなか
    公開できなかった理由とおなじです。でも、慎重にではあるけれど、
    ビイル樽は転がすことにしたのです・・・)

[長い]文章は句点で区切って固まりで読んで意味をとってはいるもの
の、主要な単語だけから意味を取るようなことをしている ことが多々あるよう
に感じます。

↑ これが今回の(連載第二回の)言いたいことでした。
むずかしい本はいわば「内容語」だけつまみ食いして読むことも可能なようです。
特に自分の専門に関わる内容の場合は、短い機能語はほとんど見なくても
何が書いてあるかわかってしまうのではないか?

    (実際、わたしの遠い親戚にあたるKさんは若い頃、英語の論文を
     大事そうな語だけ見て、「えいやっと訳し」て、バイトにしていたそうです。)

いくら読んでも大事な「やさしい語」の知識は深まらない可能性があるのでは
ないか? 少なくとも、読んでいる割には「読めるようにならない」のではないか?

どれも立派な「多読のパラドックス」ですね・・・

長い文章だと、まだまだ英語に振り回されているようです。多少あれ?と
なっても、ストーリーを追うのにあまり弊害もありませし、そこは自分には
わからなかったと言い聞かせ(わからないところは飛ばすに慣れきって
いるため)疑問を持ちません>これって「怖いこと」と感じます。

わたしがこのメールを公開したいと言ったときにパピイさんがいちばん心配した
のはこのこと ↑ だったろうと思います。

多読三原則の肝である「わからないところは飛ばす」を「怖いこと」と言っている
わけですからね、パピイさんがわたしへのその後のメールで

    「多読初心者に、(ベテランであっても)不安を抱かせるだけでしょう。」

と書いたのも無理はありません。

それなのにわたしがパピイさんの「怖い」発言を公開することにしたのは、
みなさんはきっとおわかりになると思うからです。

多読をたくさん積み重ねて、長い文章でも「さらっと読んで、ふかーくわか
るもの」という多読的精読ができるようになる英語力は、私にはまだまだの
ようです。

もちろん、量が全てを解決するのは間違いないと信じていますが、残り少な
い人生(笑)を考えて効率という面から見ると、同じ時間をやさしい本を読む
のに使う方がずっと早道でしょうね。

そう思います。わたしはかつて「Julie」さんに、「プロになりたければやさしい本を
たっぷり読みなさい」と言ったそうですが(わたしは覚えていない!)、
もし本当だとすれば、わたしはなんという「いいこと」を言ったのでしょう!
わたしはわたしが忘れ去っていたわたしに拍手を送りたい気持ちです。

PBばかり読んでいると英語力は落ちるよ(伸びないよ)というのは、洋書を読
むのに辞書は要らないと聞いて一般の人が感じる驚きと同じくらいの驚き
を、多くのタドキストの方は感じるでしょうね。飲み会会場に行く途中で、
YYYYYさんにこれを話したらウケてましたから、蘊蓄オフに参加するような方
たちと話すネタとしては面白いかも知れませんけどね。

パピイさんのこのメールくらい「多読のパラドックス」に満ちたメールはなかったと
思います。そしてパラドックスというのはアンブローズ・ビアスが言うように、
「人目を引くために逆立ちした真理」なわけで、パピイさんが書いている多読の
パラドックスはどれもわたしには事実らしいと思えます。

そうそう「煩悩」と書きましたのは、ロマンス98冊目を読んでいる時にこん
なことを感じて、それ以前にPBを10冊読んでいましたので、ちょうどPB108冊
目でしたので煩悩なのかな(笑)と思った次第です。

パピイさんのメールの劈頭にこんな落ちが隠れていたとは!

 【ご参考】PBばかり読んでいるとの「ばかり」を読書記録から調べてみまし
た。来週には100冊目1000万語を読み切ることになる想定で調べますと、
ロマンスPBを読み始めて2年3ヶ月の間に、他の児童書や絵本は130万語
しか読んでいないことになります。

 ・・・だから「英語力が落ちてきたような気が」したのかどうか--それはまだわかり
ません。おなじようにペーパーバックばかり読んでいるという人がどんな感想をお持
ちでしょう?

今の段階ではもっとたくさんの資料が集まらないとなんとも言えませんが、
「ペーパーバックばかり読んでいると英語力が落ちる」という発言は少なくとも
資料を集めたくなるくらいの「真実らしさ」はあるように思います。
「近眼の独眼龍」さんのメールもあることだし・・・

実はパピイさんとのやりとりはもう少し続きました。それは次の記事にします・・・