多読的スピーキングへ 多読授業の到達点いや通過点

2011年7月 4日
カテゴリ : 多読, 多読的リスニング(多聴), 聞き読み, 多読的鑑賞, 多読的シャドーイング, 多読的おしゃべり, 学校訪問
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多読授業が当初からめざしていた到達点にどこまで近づいたかという、
途中報告です。

この春から、わたしの授業を3週も続けて見に来てくださって、
ついには先週お母上を伴って「だれでも多読サークル」に現れた「Maeta」さんが
メールで授業の感想を送ってくれました。

わたしが秘かに持っていた多読の到達点は、外国語を母語と変わらないくらい
自在に使えることでした。

(多読から多聴へ、そして多読的スピーキングや多読的ライティングへ・・・)

まだまだ目標地点は雲の上ですが、多読は少しずつ着実に目標に近づいていると
思います。

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授業を見てくださったMaetaさんからのメールに、わたしが返事を書きました。
Maetaさんのお許しを得て、それをそのまま引用します。

Maetaさん、お返事遅くなりました!
さかい@tadoku.orgです。

>今日もお邪魔してしまいました。ありがとうございます。

来てくださって、ありがとうございました。

あんなに熱心に来てくださるとは・・・!
ありがとう! そして、紹介してくれたTさんにも感謝です。

以下は授業の様子を報告しつつ、ご自分の感想を書いてくださいました。

>今回は、True or False ゲームの紹介から始まりました。
>内容に惹きつけるため、クイズをする、ここまでは私でも思いつくことですが、
>そのクイズを、生徒に作らせよう、という企画は、素晴らしいと思いました。
>学生としては、面白いクイズをつくろうと、自発的復習に入りますし、
>より本に愛着も感じるかも。しかも英作文を書かせる動機付けとして
>完璧ですね。
>口頭で行えば、発話練習及び リスニングにもなるし。パチパチパチ…!

口頭でっていうのは考えてなかった・・・

このORTクイズは都立高校の英語の先生みげるさんが作ったものです。
それをぼくは、「お、これは学生自身が作って見せ合ったら、
いろいろいいことがあるかも知れない!」と思ったのでした。

いちばん肝心なところは、英語の勉強ではなくて、
ORTの絵や中身に注意を向けるかも知れないというところではないかと
思っています。

でも、そんなにうまい具合に行くのか?

多読的ライティングへの導入としてよさそうだとは思っています。
でも、実際どうなのか、学生は別にクイズを作ろうと思って読んで
いないかもしれないし・・・

報告しますね。

>既習クラス(上級)では、生徒自身でtopicsを選び,talk練習としての
>発表をしてもらっていました。
>さすがに各自よく準備してきたらしく、3名の生徒さんが、楽しそうに
>週末の経験を英語で語ってくれました。
>で、酒井先生は、受け止めながらも、スピーチの最低限の必要内容を
>付け加えるよう、指導されていました。
>みんな、英語で話すことが本当にうれしい、という感じで、
>自分を伸ばしたい、という自発性をここまで素直に導いている
>先生の雰囲気作りに圧倒されました。

Maetaさん、ほんとに、もう一度、報告をありがとうございます・・・
ぼく自身の授業を省みることができます。

あの3人の学生はぼくの多読授業の精華といっていいです。
もちろん、文法的に間違えているとか何とか、いろいろ注文は
可能ですが、booktalkを50週近く続けて(週に平均10分)
ぼくが「こんな風に変わっていってくれたらなあ」と
期待していた方向に、とても楽しそうに進んでいます。

(あの人たち、単位も成績も関係ないのに毎週来ています!)

あー、この話、長くなるので、ブログの方で・・・

>既習クラス(中級)では、ピンクレベルの本を選び、booktalkをする、という
>課題で、みんな初めてながら、健気にがんばっていました。
>先生が出られたあとも、引き続き、2名がtalkを披露してくれました。

「先生が出られたあとも」というところにちょっと説明を・・・

わたしの授業は一人一人が自分の作業を選んで90分間、好きなように
勧めていきますが、その中で book talk をやりたいという人は隣の教室で
book talk をやります。それが多読クラス2年目の10人です。
2年目、3年目の人たちの中にはDVDで映画を多観している人もいます。
その中には映画で聞き読みシャドーイングをしている人もいます。

そのほかにもう一つ別の部屋で、Maetaさんが最初に報告している3年目の
人たち3人が book talk と好きな話題で90分間話し続けています。

そしてこの4月から多読をはじめて、まだORTを中心に読むか、
ORTを中心に聞き読みをする人たちが別の教室でに30人近くいます。

つまりわたしは90分間、3つの部屋に分かれた学生を見て回り、
読書相談をしながら、研究室に戻って本を選んでまた学生に渡す、というように、
実に慌ただしく4つの部屋を行ったり来たりしているのです。

そこでMaetaさんが書いているようにある部屋から「先生が出られたあとも」
というようなことが起きます。幸いほとんどの学生はもうすっかり授業の方向を
納得していて、先生(わたし)のいない部屋で読書やCDを聞くことを普通のことと
考えているようです。

学生は放っておけば、自分に必要なこと、楽しいことは勝手にやるのです!

>ピンクレベルの本だと、絵がはっきりしているので、ちょっと紙芝居
>みたいな感じになるんですね。 すごいアイディアですね。
>しかも、自分の読んだことのない本を紹介されると、もっと読みたい気持ちに
>なりますね。
>で、正直自分より戸惑って本を紹介している友人をみて、自分はもっと
>スムーズにやってやるぞ、なんて思っている生徒もいそう。
>いろいろな手を駆使して モチベーションを高めていらっしゃる先生の
>技を感じました。
>真似しようにもとても及びませんが、少しでも今のレッスンを変えて行かれるといいな、と思いました。

なんだか、すべて計算の上でぼくが授業を作っているように
読めるかもしれませんが、そうじゃないのです、まったく!

ぼくはその場その場で反応しているだけなんですね。
Maetaさんが見ていてくださったときに何を言ったか、
よく覚えていますが、あれもあのときに思いついたことです。
技と言われると、とても気恥ずかしい。

うん、そうです。そういう意味ではやはり「技」ではないと思います。
(なんだかこれもブログで語りたくなってきた)
技ではなくて、多読支援三原則の三番目「一人一人の顔を見られること」
を実践しているのだと思います。技ではなくて、どちらかというと
「心構え」かな? 

ふと思うのは、空手の技、ではなくて、空手で、相手がどう出てきても
対応できるように、少し膝を曲げて、腰を軽く落として、
相手の出方を観察している--あんな感じかな?
ちょっと理想化しすぎたかも知れませんが。

あの場面でも、ぼくはクラス全体の「顔」を見て、
それに反応したのだと思います。
(それだけに忘れやすい?)

おっと、ピンク・レベルの絵本を見ながら、
最初は読み聞かせでもいいよ、というのは、
たくさんの観察から生まれた「技」です。
電通大生だけではないでしょうが、
はじめて人前で英語を口にするというのはかなりこわいと
思うので、それを「迂回」するためかな?

あ、それから、クラスのだれから指名するか、
それも技になっていますね。でも、だれでもそれはやる技か。

あーあ、やっぱり長くなってきた。
あとはブログで・・・ というのは、あの3人や既習上級クラス、
既習初級クラスの様子を録画して、みなさんにお見せしたいと
思っているのです。その時にもっとくわしく「観察と技」の
話をできるのではないかと思います。

>ぜひまた見学させてください。        Maeta

ぜひぜひ、また見学してください。
みなさんが見学してくださると、ぼくもいろいろ自分の授業のことが
わかってきます。

大学の正式な授業としては来年の1月までです。
先生である必要はありません。
どなたでも、いつでも授業を見に来てください!

そういえば! ORTのTrue or False 問題を学生に作らせて、
それを compile するっていうの・・・ すっかり忘れてる!!

あーあ、わたしはその場その場で学生に反応しているだけだということを
図らずも実証してしまった・・・ (ああ、どうしよう・・・?)