英語育児はいかがなものか 再説 第2回 「haruharu」さんへ

2009年11月 2日
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第1回にいただいたharuharuさんのメールにわたしが返信しました。

なお、第1回で紹介したharuharuさんのメールの全文が繰り返されていますから、
かなりの長さです。なお、混乱を避けるため、以下はすべてわたしの返信だけで、
今回付け加えた文章はありません。

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haruharuさん、メールをありがとうございました。


このメールをブログで紹介して、以下のようにわたしの意見を
つけてもいいでしょうか?


> > 今日、“「英語育児」はいかがなものか!”というブログ記事を拝見しました。
> > うちでも小さい娘に、英語にふれさせているため、興味深く読ませていただきました。
> > マサミさんのおっしゃっていることは、ひじょうに理想的であり、正論であると思います。

ブログを見てくださってありがとうございました。

> > ただ、我が家で体験していることを少しお話させていただきたいと思います。
> > 娘が2歳ころから、DWEなどの英語教材を使い、ORTなど洋書絵本も読み聞かせています。
> > CDのかけ流しもこの2~3年ほど毎日していました。
> > そして、今、娘は5歳になりましたが、ORTの次のステージをいつも買うことを楽しみにしており、
> > 私も、ORTのステージ5くらいになってからは、いつのまにか英語を読んでいることを忘れ、
> > そのストーリーにワクワクして、入り込んでいる自分に驚きました。
> > それまでは、英語を読むことに必死で、この発音でよかったかな?・・とか、これはどういう意味だ?・・と
> > いうことに気をとられ、ストーリーを純粋に楽しむことがなかなかできないでいました。
> > しかし、今では、英語を読んでいるという意識は薄れ、読んだ瞬間にイメージが脳に広がるのです。
> > いままでの自分には考えられなかった不思議な・・そしてワクワクする体験です。

それはすばらしいです!
わたしの予想ではharuharuさんには「ながら」の効果がでたのではないかと
思います。

> > 娘の方はわたしよりもはるかに英語に関する感性は優れていて、
> > 「これはどういう意味だろう・・・?」と私が聞くと、とても豊かな日本語でその状況を説明してくれ、
> > ほほぅ・・・・と(内容の真偽はともかくとして)その理解力に私は驚かされます。

こどもの柔軟さは本当に恐るべきもののようです。
こどもはみな天才だとピカソが言っていたそうですが。

> > 教材を使って子供に英語を教えることや英語のCDを聞かせつづけることは、
> > それをしていない方にとっては、「不自然な気持ちの悪いこと」かもしれませんが
> > (人は、自分と異なるものに対して拒否反応をおこしがちですよね・・)
> > 我が家では、こういう方法を使って、英語を心から堪能できる境地まで辿りつくことができ、
> > 私も娘も、たいへん満足しています。

はい、そういう例はかなりたくさん聞いています。
こどもの柔軟さ、天才は間違いないと思われます。

> > 理想通りにできればそれに越したことはありませんが、しかし、それが無理であるのならば、
> > 自分にできる範囲で、やっていく・・・これは決して悪いことではないはず。
> > お母さんの声で英語絵本を読んであげられたら最高ですが、しかし、あまりにも下手であれば
> > 子供も親も楽しめませんし、なによりも、英語本来の音やリズムにふれされてあげることができません。
> > それでは、英語がどんな言語であるのか、正しく伝えることができません。
> > 子供には、英語であれ、なんであれ、本物に触れさせてあげたい・・と私は思います。

「理想」通りは無理かどうか・・・?

実は「理想通り」はそれほどむずかしいことではないと思われます。
それほどにこどもの能力はすごいわけです。

いくつかの例を見てきて、わたしはお母さんの声で十分だと考えています。
「正しく伝える」必要はないようで、お母さんの読み聞かせを続けていって
CDやDVDなどにも触れていると、そのうちお母さんの音をいやがるように
なるものと思われます。そうなったら自分からCDやDVDで英語を
楽しむようになるようです。

「本物」ってなんだろう?という根本的な問いもありますね。
ディズニーでなければいけない、アメリカ英語でなければいけない、
フィリピンの英語はだめ、ということでもないでしょう。

> > 本当は、ネイティブの方と直接、触れ合う機会があればそれが一番ですが、それも難しいですから、
> > やっぱりCDなどで本物の音を聞かせるのが手っ取り早いわけです。
> > そして、それは実際になかなか良い効果があります。
> >
> >
> > 3年前には、全く英語が聞き取れなかった大人の私でも、今では多少は何を言っているのかわかるようになり、
> > 娘は、ネイティブの方と会って話しても、違和感がなく、コミュニケーションをとれます。
> > 肉声であっても、CDの電子音であっても、英語の波動であることには違いなく、
> > それを聞きつづけることで、英語という特有の周波数の音を、脳に身体になじませていくことができるんですよね。
> >
> >
> > 今では私が英語絵本を読み聞かせると、娘は「ママの英語ちょっとちがうんだよね~」と言い出し、
> > 単語一つ一つ、言い直されます。
> > しまいに、「ママは読まなくていいから、CDを聞かせて!」と。。(苦笑)

はい、これが先ほど書いたことですね。
ほかにもそういう例を聞いています。

> > ママと楽しむ時間は、日本の絵本を読んだり、遊んだり・・と日常生活で充分得られますし、
> > 英語のCDを聞く時間も刺激があっていいですし、教材を使うのもスムーズに理解が深まって
> > より英語の世界へ入り込みやすくなり、どれも無駄ではなく、メリットもたくさんあります。
> >
> >
> > それが負に働くことがあるとすれば、?健康を害するほどやりすぎたり
> > ?子供が嫌がっているのにママが強制したり・・
> > こういう場合くらいじゃないでしょうか。

haruharuさんのようなやり方がうまく行った例はいくつも聞いています。
一方で、そうした「成功例」のお母さんと何度か議論をしています。

わたしの危惧はいつも決まっています。そこで次のような言い方をします。

「お母さんの思うとおりになっていることがいちばんの問題かもしれませんよ。
今後もお母さんが自分の思うとおりに(ときには自分の夢をこどもが達成してく
れると)思い込むこと、これがいちばん心配です」

つまりわたしはいわゆる英語子育てのよい結果を疑問視しているのではなく、
「英語子育て、英語キッズ、英語育児」といった「考え方」そのものに
不安を覚えるのです。

そうした流行は英語という一外国語に対する過度な期待と、
親たちの焦りや不安を反映しているように思います。
過度な期待はかならず裏切られるだろし、
焦りや不安はこどもにきっと悪い影響を残すと思われます。

マサミさんの場合、それからほかの何人かの親ごさんと
そのこどもたち、英語の獲得の様子を見ていると、
そうした過度な期待や不安や焦りは何もなくて、
実にのんびりした、当たり前な関係ができていると思います。

もう一つ、こどもは親に愛されたい気持ちが強いので、
なんとか親の期待に沿おうとします。haruharuさんのこどもさんは
そんなことはなさそうですが、必死で親の期待に応えようとする
こどももいます。親がこどもの英語に喜びすぎると、
こどもは親にほめられるために行きはじめる危険があります。
親という存在はこどもにとって絶対です。
ぜひ不必要なプレッシャーをかけることなく、
ゆっくり、のんびりと大きくなってほしいと願っています。

そこで、英語子育て、英語育児、英語キッズというようなことばが
氾濫すると、それこそ「英語子育てをしなければ親として失格だ」
というような親たちが増えることが心配です。
そのような親はきわめて強いプレッシャーをこどもに与えます。
悲劇に近い例も聞いています。

わたしは「うちのこどもは多読でバイリンガルになりました」という
親御さんのことを敢えてブログでもサイトでも紹介しないように
しています。紹介すれば多読の「宣伝」になるでしょうが、
それよりも世の親たちを「煽る」ことを恐れるからです。

> > 我が家では、現在5歳の娘は、こうして英語を聞き取り理解できて、
> > 英語人(英語をしゃべる人のことを娘はこう呼ぶ)と遊べることに喜びを感じていますし、
> > 私も、娘と日本の絵本を読むのと同じように、英語の絵本を楽しむひとときを過ごせることに、
> > 幸せを感じています。

非常に厳しいことを言うと、その幸せ感が未来の不幸の種になる場合が
あり得ると危惧しているわけです。

> > 英語育児に限りませんが、“こうでなくてはいけない・・”ということはなく、
> > 自分(子供)に可能な、自分(子供)に合った、ストレスのない、楽しめる方法をそれぞれのご家庭で見つけ、
> > それを実践していくしかないのではないかと感じています。


その通りです。
けれどもそのときに、ぜひ、余計なプレッシャーをかけていないか、
こどもは親の期待に無理に応えようとしていないか、
常に気をつけていらっしゃるとよいと思われます。