字幕なし多観について katobushiさんのツイートから

まず、katobushiさんのツイートを引用・・・

僕が字幕なし多観をはじめたころのORTのような動画から、というコンセプトはよくなかったと反省しています!字幕なし多観のいいところは、レベルの概念を捨てやすいところだと思います!

字幕なし多観の効果は聞き読みよりもっと強力だとおもいます!プラス、字のない絵本から始めるみたいに1%も聞き取れないものからはじめることをお勧めしたいです!

レベルの概念を捨てる・・・大事件ですね。
これまでの多読はレベルの概念は大事だということで始まり、進んできました。

レベルの概念を使って入り口を入りやすくする--これはうまい作戦だったと思いますが、
場合によってはうまく行き過ぎていつまでもレベルから抜け出せないことがあります。
また学校などでは試験や成績や点数、数字に反映しやすいので、
そもそも抜け出す気がないのが普通・・・

わたし自身がレベルという考え方から抜け出すのにずいぶん時間がかかりました。
最初から警戒していたのに時間がかかったのだから、レベルや進度や理解度といった
考え方のしつこさは身をもって体験しています。

ではレベルの概念を捨てて、代わりにわたしたちの歩みを確認するには何がいいのか?
わたしは年齢だろうと思います。「をさなごのやうに」始めて、少しずつ世界と物語を
理解していく・・・

その場合、katobushiさんの言う「1%も聞き取れないものからはじめる」ことは、
赤ちゃんが自分の周囲の言葉や状況をほとんど理解できないところから成長していくことを
真似することになるでしょう。

つまり、最初は 見る・聞く・泣く(もごもご?) から始まって、一語文で話すへ、それから
読む・書くへ というところでしょうか? もちろん大人が同じような過程を経るのかどうか、
それはみなさんの報告で少しずつ明らかになっていくことでしょう。

(ついでに言うと、その過程に学校英語がどう関わるのかも、明らかになっていくでしょう。)

字幕なし多観について 朋在り遠方より来たる・・・

Sさんという方から手紙が届きました。
うれしいです・・・

約15年ほど前に先生の「快読100万語ペーパーバックへの道」に出会い多読を始めましたが、5万語で挫折。その後3年と10ヶ月前に再開しました。その時The Troy Stone (PR、オレンジ)を読み返すことができ、多読にはブランクがないと驚きました。
子供の時から暗記が苦手で勉強も落ちこぼれ、英語も然り、本だけは好きでした。20代のころ、翻訳ミステリーを多く読みました。その時にふと浮かんだ疑問、この本日本でも英語でもない別の世界の文ではないかと?

鋭いですね、この疑問。
この疑問を持たずに翻訳ミステリーを読み続ける人が多いと思います。
わたしも疑問を持たない方でした。英語で原文を読むようになってから疑問を持ったのでした。

 再開から1年半で100万語越え(345冊)、その中で印象に残っていることは、50万語の時 The Lady in the Lake が以前訳本で読んだ、同じ感覚カクカクした文章なんだと記憶しています。読んだ本は主に、児童書で Cam Jansen は全部読みました。あまり人気が無いようですがコージーミステリーが好きな人なら、サイドストーリーが楽しめます。あと、Jigsaw Jones。最初は歯が立たなかったのですが、65万語くらいから、どうにか読めるようになりました。好きです。
私の読みは単語一つ一つ読む黙読音読です。今でも子供の頃絵本をそのようにして読んでいた記憶があります。流石に150万語の頃、不安になり、シャドーイング、本の聞き読みかなと考えていた時に、ユーチューブで40年前に見たTVシリーズを見つけました。嬉しくて毎日1時間くらいストーリーを思い出しながら見ました。言葉は全然理解できずに、単語すら拾えない、でも徐々に拾えるように。でも、いくら好きでも半年も見ると飽きて、ほかを探しました。そこでまた50年前のDenis the Menace 、コメディーで、25分、子供向けで分かりやすく、ゆっくり時間が流れて行く時代背景、またその頃のアメリカの豊かさを感じました。半分くらい分かります。楽しいです。DVD購入しました。

(わたしは今でも黙読音読です。必死で脳内音読から逃れようとしていますが・・・)

 その後多観を始めて1年後、「クローザー」のDVDを見ました。全然分からず、日本語字幕を約3ヶ月100話見続け、音が英語なのに役者が日本語を話しているような錯覚に、まずいと思い、字幕を消してみると、音が小さく聞こえて、まりあさんのブログで、内容が理解できないと音が小さく聞こえると書かれていたことを思い出しました。見落としている映像もありました。違いはドラマがたんたんと進行しているように見えました。その中で感情を出す部分はよく分かりました。出演している色々な人種の役者たち、現在のアメリカを想像することができます。理解度1割?くらい?
以前先生のおっしゃった「愛と努力は隣り合わせ」を信じて。多観を始める時、大事なことは愛と興味です。これが継続に繋がります。

はい、やはり多読・tadokuは 愛 です。そして好奇心(とわたしは言います)!。
愛あればこそ 理解の壁 を乗り越えられる!!

 多観を始めた頃、ライティングをしたくなり、Golden Book 「Best Word Book Ever」を書き写し始めました。今現在は多読は Fox君とThe High-Rise Private Eyes が楽しめるレベル。「易しい本を沢山」、これは頭で理解できても体が分からない。その地点まで行って、分かること沢山あります。
最後に多読、多観は学力の優劣にかかわらず始め、勧めていくことができると思っています。愛と、(楽しみたいと思う)少しの努力で。

Sさん、手紙をありがとうございました。
これからは繁く連絡をくださいますよう・・・
そしてみなさん、字幕なし多観の醍醐味を堪能されますよう・・・

字幕なし多観について 「ふわっと理解」にツイート

先日のブログに「だれでも多読武蔵野」サークルのBさんの感想を
書きました。その記事をFacebookから跳べるようにしたところ、
Kさんがこんなコメントをつけてくれました。

「ふわっと」できない性が…。最近乗り越えられそうです。

わたしは「乗り越えられそう」という部分に飛びついて、
詳しく知らせてくださいとお願いしました。いただいた報告から
「ふわっと理解」に関わるところだけを引用します。
報告全体は100万語通過したらフォーラムに投稿してくださるとのことです。

今回、英語のまま理解する大切さがやっと体感できました。
70万語を過ぎてから今年に入って毎月2万語前後しか読めませんでした。
受験英語はさほどやってきたつもりはないんですが、職業柄、このasは何? wouldは何?とひっかかります。わからない単語も調べてました。
そんなことしてるから物語が楽しめません。やさしいストレスなく読めるものをたくさん読んでinputしてこの癖を克服しなくてはなりません。
「下手に英語をやっていたために邪魔をする」というお話がよくありますが、私はそんなにできるわけではないし当てはまらないだろうと思ってました。

「木を見て森を見ず」--文法や訳語に気をとられると、物語は分からなくなります。
また、「自分は分かっているのだろうか?」と気にし始めたとたんに、
物語はおろか、英語を読むことさえ疎ましくなります。

「字幕なし多観」の効果は、ある面で「聞き読み」に似ています。
朗読を聞きながら文章を読むと、日本語に訳したり、文法的な吟味をしている
暇がありません。分からないところは放っておくしかありません!

「英語をやっていたために邪魔をする」 ・・・
「わたしはそんなに勉強しなかったから邪魔されないだろうと考えていると
意外なところで実は脚を引っ張られていることがあります。
フォーラムでkatobushiさんが書いた「学校英語のしつこさ」ですね。
それはそれはしつこいのです、学校英語は。そこがおそろしいところ。

Kさん、とても大事な報告をありがとう!
100万語通過のお祝いが待ち遠しい!!

字幕なし多観について キャラクターが鍵?

やはり字幕なしで映画やドラマやアニメを楽しんでいる人はあちこちにいる
と見えて、きょうも報告がありました。

実に示唆的なので、字幕なしに関する部分をそのまま引用します。

字幕なし多観が楽しく続けられるかどうかは
どれだけ(言葉がわからなくても)登場人物の気持ちを想像し共感できるか
それと
お気に入りの(または気になる)登場人物がいるか
にかかっているように思います。

この登場人物(キャラクター)というのが
見続けるのに
けっこう大事なんじゃないか、と思っています。

これが面白ければ、それだけで目が離せなくなって
ストーリーさえわからなくても見続けてしまうのが
人間の特性かもしれません。

私の姪は2才くらいから「相棒」が大好きでしたし
娘も3才のとき「渡る世間は鬼ばかり」の
再放送にはまっていました。
息子の友だちは2才の頃、まだ片言のときに
「はぐれ刑事純情派」が大好きで
藤田まこと演じる主人公が出ると
「ハグレ、ハグレ」と興奮して見入っていました。

2歳や3歳のこどももドラマの世界や物語に惹かれるのでしょうか?
おそらく惹かれるのでしょうね。

彼らが殺人や鑑識結果や店の経営や嫁姑問題などが
わかっていたわけではないけれど、
1時間ちかくずっと鑑賞していられたというのは
お気に入りの人物が笑ったり困ったりののしりあったりすると
もう目が離せなくなってしまったからだと思います。
危険な目に合うと自分もドキドキしていたみたいです。
(ちなみに、これら国民的ドラマを酒井先生は
知らない可能性がかなり高いと推測します・笑)

それにしても2歳の頃に、藤田まことの威力が分かる?!
わたしたちは世界について、歴史について、人間について、とんでもない
理解力や吸収力を持っているのでしょうね。
まだだれもどれほど広く深く高いのか、知らないのでしょうけれど。

私も昨年の秋から思うところあって多観を始め
12月にメリッサさんとお会いしてからは
ますます字幕なし中心になりました。

連続ドラマなら、登場人物になじんできて
その人の癖とか習慣とか性格がわかってくると
その回のストーリーが大した話でなくても
キャラクターの魅力で楽しめます。

あの世界的な、近頃また現代に現れた探偵さんも
頭脳明晰だけどコカイン中毒だったりするキャラ、
口ぐせ、決め台詞、あの挿絵の造形(帽子、コート、パイプ)
がストーリー以上に人々をひきつけるものだから人気者なのでしょう。

機関車トーマスだって汽車なのに
それぞれの性格や癖がはっきりしているのを
子どもたちはちゃんと見分けています。

そういえば、魅力的なキャラクターのいないヒット作はないような?

今回、先生のブログで
受講生のBさんのDesperate Housewives のメモと
パピイさんのコメントを興味深く拝見しました。
私もこのドラマにはまったことがあるので
なおさら、なるほどと思ったのかもしれません。
10%しかわからない、というのは話されている英語のことでしょうが
このドラマを最初から見ていれば
登場人物設定と展開が、たぶん英語が全くわからない方でも
わかると思います。
それぞれがどうなっていくのか、次々新しい人も出てくるので
興味が尽きることもないし
わからない部分があっても、どうなっていくのか楽しめるはずです。

それと、このキャラクターへの思い入れ、共感、というのと
例のGRの弊害の話は実は関係があると思っていますので
そのうちお話ししますね。

場面と展開と表情と声音(言っていることの「理解度」ではないです)について
パピイさんと同じ感想と言っていいのでしょうね。

さらに長くなってしまいそうですので
劇薬?多観についてもまた次回に。
私、20年以上前は何も考えず平気でやっていました。
知らない土地の映画館に入って知らない言葉の映画を見るのが楽しかったです。
香港で広東語の映画を見るとか。

ひとつヒントになりそうなのは、NPOにもあるピングーです。

次回を 非 常 に 楽しみにしています!

それから、段階別読み物(GR)の弊害についても、ぜひ意見を聞かせてください。
わたしは実は1年半くらい前からその話題についてブログに下書きを貯めています。
それで、実はまもなくそれを記事として公開しようと考えていたのです。
ご意見を楽しみにしています!

追記
字幕なし多観のよさと、GRの弊害は同じコインの裏表だと、わたしは考えています。
その意味でも、この人の次回の報告は楽しみです。

字幕なし多観について パピイさんから!

古い仲間です。パピイさんから・・・

酒井さん、ご無沙汰いたしております。

9日のブログ、「字幕なし多観! 4週間(ごく短い)報告」を読んで
気になることがありましたので、メールします。

「驚くのはBさんの感想では「10%もわからない」と言っていること!本当に
10%しか分かっていないとすると、それでも楽しめるということは驚きですね。」
と書かれていますが、これを読んだ多くの人は違う感想を持つだろうと想像します。

それは、「これだけ英語がペラペラな人でも、10%しか理解できないのか?
多観というのは、たいへん難しいものだなと」

英語ペラペラという表現は嫌いなのですが、世間的にはよく使われるので
あえて使いましたが、Book Talkメモからの想像です。

つまり、酒井さんの意図と正反対の理解をされる危惧を抱きました。

たしかにそうでした。 Book talk のメモで見るとおり、Bさんはかなり英語の
できる人です。

その人が「10%しか分からない」と言えば、たくさんの人がわたしにはできそうも
ないと、字幕なしから遠ざかってしまうかもしれませんね。講座ではこんな風に
書くことを話すことがつながっています、という例としてメモを紹介しましたが、
短慮でした。一つの記事で二つのメッセージを送ろうとしたことが間違いですね。

そこで、ほぼ毎週多観をしている私の「10%の理解」についての考察ですが、
会話を自信をもって理解できたと感じられるのは、10%くらいなのかも
知れませんが、登場人物の表情、また身振り手振りや、背景などから
ストーリーのかなりの部分は間違いなく理解されているものと想像します。

でなければ、ドラマにはまらないだろうし、
Why did Mary commit suicide?
Why did her husband kill Martha Hoover?
What is the pharmacist going to do?
I can’t resist my curiosity.
というコメントも出ないでしょう。

多観は絵本読書に似ていて、画面や効果音などから得る情報が大変多いのです。

11日の「ぼーっと眺めるところから始めましょう」というコメントは、
大変良いと思いますが、その前で躓く人がいないことを祈ります。

(なんというか・・・ 古い仲間の意見は何とも言えずありがたいです。
わたしが言うのは変かもしれませんが、なんだか気持ちがゆったりとしてきます。
阿吽の呼吸を心得ているとでも言うのか? 知己といいますか・・・ )

で、「ほぼ毎週多観している」パピイさんの10%以外の部分のこと、
実にその通りですね。「登場人物の表情、また身振りや手振り、背景」から
物語を理解しているのですね。そこから楽しみが生まれるのでしょう。

「でなければ、ドラマにはまらないだろう」というところもその通りです。
主観的にはセリフの10%しか分からないと思っても、Bさんは
場面と登場人物の表情でDesperate Housewives の世界と物語に浸り
きっているのですね。

ぜひみなさん、 book talk のメモの部分は、「こんなにできる人でも
10%しかわからないのか!」ではなく、「10%しかわからなくても
こんなに深く物語に入り込めるんだ!」という例と受け取ってください。

そうそう、劇薬シャドーインングがあるのなら、劇薬多観もあって良いのでは。
知らない言語の映画かドラマを見て、どれだけ楽しめるかを試してみては?
(フォーラムにも書きましたが、私は意図せずに経験しています)

おまけ:多観をしていて悲しい事
エンディングで、エピローグを字幕で説明されることがあるのですが、
読み切る前に消えることが多々あります。初見なので、気づくのが
遅いという理由もありますけど>言い訳ですね

☆パピイ

劇薬多観! これもぜひみなさんに試してほしいな!

実は以前 The Red Violin という映画のYouTube版を紹介したことがありました。
あれはまさに「劇薬多観」を目指したものでした。

https://www.youtube.com/watch?v=pBQurTMveac

ニスのために赤く見えるバイオリンの数奇な運命を描いていて、
上のリンク先は画面がきれい! 各国を巡って、時代を亘って、
使われることばもいくつもあって・・・ このYouTubeの映像を見て
字幕なしが当たり前になったという人もいます。
「分からないことに耐える、慣れる」ためには恰好の出発点かも知れません。
でも2時間は長すぎるかな? その場合は何度も見た映画やドラマや
アニメもよい出発点ですね。

(字幕がないとほんとに画面を隅々まで見られる!)

パピイさん、ありがとう! そのうちパピイさんの字幕なしおすすめも
知らせてください! みなさん、Happy viewing!