学校英語を洗い流す

学校英語を洗い流す Now stopping at Tokyo に反響続々!

ありがとうございました! たくさんの反響をいただきました。みなさん、こういう話題がお好きですね! (蘊蓄オフに来ていただきたいものだ。)

ただ、わたしが「うまく説明できない」と書いたことが誤解を生んだようで、説明を試みた人も少なくなかった--というのは、わたしは「うまく説明できない」のではなく、実際には「説明などできない」と書くべきだったのです。わたしであれ、だれであれ・・・

(説明できるようなら「文法」とか「辞書」にも今よりも意味があることになります。そうではない!
いつか書きますが、言葉の一部を取り出して「説明」することは不可能なのではないかと予想しています。
stop という言葉を取り出して、その意味を考えることは結局行き詰まります。)

わたしが持ち出した疑問は 駅で停車している電車の中の表示が Now stopping at Tokyo
となっていることに奇妙な感じは持ちませんか? というきわめて場面を限定したものでした。
これを stop の意味は? 使い方は? ~ing の意義は? 日本語の「~している」とどう
違う? という風に一般化すると、「正解」は雲散霧消します。

stop の意味自体に興味を持った人と同じくらい、「では電車の表示はどうあるべきだったか?」
について考えてくれた人がいました。また動画でバスの中の Stopping at の表示を見つけて
くださった人もいました!

http://www.youtube.com/watch?v=7D6PmuBA77k

こちらは場面と言葉が結びついているので、雲散霧消しないはずですが、
それでもこの動画のコメントを見ると、「これじゃあ、エンジン故障中に見える」という意見もあって、
たちまち一般化問題に足をすくわれそう。Now stopping at Tokyo の表示は事故か何かあった
ようだと感じた人がいましたが、まさにそのようにも取れる。言葉の問題はむずかしい・・・どこから
捉えていいのかわからない!

Now staying at Tokyo ではどうだろうという意見がありました、複数の人から。
stop はstay の役割をすることもあるので、ありえないではないと思いますが、
停まっている期間が長くないと(長いと感じられる状況でないと)無理があるかな?

おっと、たちまち答のない蘊蓄ネタに引き込まれそうになりました。
さて、わたしが呈したきわめて具体的な疑問--

「駅で停車している電車の中の表示が Now stopping at Tokyo となっていることに奇妙な感じは持ちませんか?」

に答えてくださって、「感じます。多読歴は・・・です」と反響をくださった人が何人かいます。
その人たちのいちばん少ない量は450万語のようです。

これからもこういう話題を提供します。それに反響を寄せてくださると、
学校英語の一対一対応が多読で修正(?)されるのかどうか、
されるとしたらどのくらいの量が必要なのか、という疑問に答が出るかもしれません。

最後に、一つだけ反響を紹介します。
(全部は紹介しきれませんが、みなさん、ありがとう。大切に資料として保存します!)

酒井先生、こんにちは。はじめてメール致します、Mariと申します。
今回の記事非常に興味深く読ませて頂きました。

Stopping at・・・をどう捉えるかですね。
確かに変だなあとは思います。電車がだんだんと速度を落としてもう少しで止まる!て感じですかねえ。完了としてhas stoppedがいいのかなあとも思いますが、文法がとっても苦手なので正直自信がないです。学生時代英語がとても苦手だったのでわかるのですが、固有名詞や代名詞以外で主語といったら動名詞だったのです、私には。
とりあえずingつけとけ、と。日本語は主語を省略することが多い言葉ですし、目に落ち着くのは(?)Stoppingなのかも知れないですね~。
これって学校教育のせいでもあると思いますが日本語の特質のせいもあるのではないでしょうか?

上手く説明できたでしょうか・・・出来てないですよね。すみません。

has stopped は状況には合っていると思いますね。でも表示としてはどうかな?
アナウンスなら has stopped でよさそうです。Now stopping at Tokyo. に
奇妙な感じを持ったことといい、has stopped を思いつくあたり、さすが900万語!
ということでしょうか?
(いや、そんなに簡単にはまだ言えない! 自戒、自戒・・・)

Mariさん、今までの英語歴を教えてくださいな。お待ちしています!

こんな拙い英語力ですが、多読はかれこれ8年現在900万語です。
でも多読のお陰でボキャ対策は一切せず去年英検準1級に合格しました♪
8年前に『快読100万語』と出会ったお陰です。
本当に先生の仰るとおり訳語はなかなか消えないですね。The Economistの皮肉たっぷりな文体が好きで購読しているのですが(自分にとって)難しい単語はたぶん訳語で覚えてると思われます・・・。
私の場合は文法力が現在でも非常に怪しくSpeakingが壊滅的なため現在文法対策について頭を悩ませているところです。

これからも記事を楽しみにしております。

Mari

メールをありがとうございました! stop のような「基本的な語」の訳語が消えているのは
すばらしいと思います。これからわたしが書くほかの「基本的な語」の訳語についても、
消えているかどうか知りたいと思います。感想をください。楽しみにします!

ところで、スピーキングに文法を持ち込むと「英作文スピーキング」になることが多いと思われます。
もし一時的な「めちゃくちゃ、混乱、間違いだらけ」の話し方を自分に許せるなら
「多読的スピーキング」をお勧めします。でもこれについてはこのブログで徐々に・・・

学校英語を洗い流す 成田空港から

ミュンヘンの友だちの家に泊まりに行きます。新宿から「成田エクスプレス」という電車に乗りました。

すると東京駅で停車中にこんな掲示が出ました。  Now stopping at Tokyo   さて、これは英語としてはおかしいのですが、なぜおかしいのかわかるでしょうか?  学校英語が頭に残っていると、すぐにピンと来ないかも?!  それが学校英語、一対一対応訳のしつこさですね。  どう変かは、帰ってからゆっくり書きます。それまで、いろいろ考えておいてください!  メール大歓迎です。帰ってから読むことになりますが。

20120515 劇薬シャドーイングについて -- 多読的スピーキングにつながる?

(2012年5月25日にいただいたメールからです。
ほかにもたくさん下書きがあって、遅れ馳せながら少しずつ
公開していく予定です。)

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これは今までになかった報告です。

* 外国に留学中に劇薬シャドーイングをしてみた
* しかも劇薬シャドーイングをした人と、それをすぐそばで見ていた人、

両方の感想です。

まずは観察していた人の報告です。

[娘の]劇薬シャドーイングの素材は、
映画ジェラシックパークⅠ/メンインブラックⅠⅡです。
全部で3時間ほどだそうです。

[娘が]英語圏の方々 — 教授や大学関係者が主ですが — と、話をする場に度々居合わせています。

以前は、
1.まず話をする前に時間を取りまして話を頭の中で纏めてました。なので、直前は話し掛けられませんでした。
2.話し始めましても、途中何度も話を纏め直して 話しをし直していました。
3.ろれつが回らず、また話を纏め直す時もつっかえたりしてました。
4.一度では話し忘れが有り、再度話す必要が有ったりしました。

劇薬シャドーイング後は、
1.事前に話を纏めずにその場で瞬間的に話を纏められます。
2.話の途中で話を纏め直す事も全く有りません 。
3.すーっと一気に滑らかに 全くつっかえる事無く、シャープに話し終える事が出来ます。
4.二度手間も無くなりました。

効果は歴然です。短期間で別人の様に替わりました。

すごいでしょう?

ただ、幸いわたしはこの「娘」さんとも常に連絡を取っているので、
Skypeでさっそく「本人」の感想を尋ねました。

Skypeのチャットなので、要点だけ報告すると・・・

本人としては、実感がない

という素っ気ない感想。
でも、多読による変化は往々にして「自覚できない」ということがあるので、
ま、もっと研究資料が集まるのを待ちましょうか。

お二人に、ありがとう!

始まったと思ったらいきなり ところで・・・ 学校英語を洗い流す/多読のパラドックス

近く出版の運びとなるはずの学研の本の打ち合わせで、

by the way = ところで

という一対一対応に話が及んで、みんなで大笑い。つまり・・・

学校では「by the way = ところで」と習うので、英語で話をするときに
「ところで」を by the way と英訳してしまいます。
それが実はおかしい場合があることは、例によってわたし自身、
痛烈な「失敗」をしてはじめて分かったのでした。

だれだったか忘れましたが、ある英語母語話者がわたしに

「なんで日本人は by the way と言ってから話が戻ってこないのか?」

一瞬何のことか分からなくて、でもすぐに分かって、自分の誤解に愕然としたのでした。

by the way はそういえば 話の本筋にちょっと離れた話題を持ち込んで、
でもそれはとても軽い話で、すぐに元の本筋に戻ることが基本らしい・・・

(ま、例によって「基本」だから、そうじゃないこともあるでしょうね。
あらゆる例を確かめたわけではないです。実際、「ところで」の意味で
いつも使っているけれど、文句を言われたことはないという人がいます。
もっとも、「文句を言ってもいい」関係になっていないと文句は言って
くれないことがあります。これはいつか「ネイティブ・チェック」について
別に書きましょう。覚えていれば・・・!)

一方、「ところで」は話題を変える場面で使いますね。
もし by the way =ところで なら、by the way と言って話題を変えていいけれど、
by the way = ちょっとだけ本筋から脇に外れるけどね という決まり文句だと
すると、「なぜ元に戻ってこないのか!」という不審、疑問、疑い(わざと話題を
かえようとしているのではないか?)と思われることになりかねませんね。

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・・・という話を今週の火曜日に学研との打ち合わせでしたところ、
木曜日にある人が by the way のあとで元に戻る例を見たそうです。
それは Star Trek の中だったそうですが、いずれDVDが出たら確かめますね。
そしてどんな場面か紹介します。

そのある人は 「アンテナが立つとどんどん引っかかってくる」と言いました。
そうなんです。辞書を引くと、その語にすぐに出くわす、という経験のある人は
多いでしょう。それが多読のすごいところですね。大量の英語に触れるので、
気にし始めた表現にはすぐに出会うことになる・・・

それにしてもだれが by the way =ところで にしたんでしょうね?
そして、それが少なくとも60年くらい修正されなかったのはなぜでしょうね。
わたしの見るところ、それが 学校英語のしつこさですね。
早い時期に覚えたずれにはなかなか気がつかない・・・