すべては多読仲間との交流から・・・ 先行詞なんて関係ない!

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いま学研から出す本の原稿を書いているところだということは何度も書きました。
その中でつくづく多読も Tadoku もみんなで作っていることを確認する毎日です。

そうした事例の一つです。最近動きの出てきた翻訳について話し合っているうちに・・・

バナナさんの翻訳については何度か記事にしました。
また、ほかにも10年以上の多読仲間から翻訳を(半ば)仕事にする人が出てきました。

(そういう人たちが「多読を通じた翻訳ってこんなものかと思われると多読に迷惑が
かかる」といって、どんな翻訳をしているか秘密にしたがります。そういう心配は
いらないと思いますが(もしあったとしたらわたしが議論を引き受ける!)、
気持ちは尊重したいので、これまでのところバナナさん以外は匿名です。)

翻訳をしているうちの一人が先月のはじめに上京して、
もう一人別の翻訳を始めた人とわたしと三人で、
上京した人の翻訳上の相談を受けました。

ま、相談というよりも翻訳談義みたいになって、実におもしろかったのですが、
(そしてその人の翻訳が初めてなのに十分出版に値する水準なので、
びっくりしたのですが)その相談の中である質問が出て、
それにわたしはその場の思いつきでとても変わった答えを出したわけで、
そのやりとりが非常にわたしにとって刺激的だったので、
「すべては多読仲間との交流から」生まれるという実例として記事にしておくことにしました。

質問: 「この which の先行詞はなんでしょう?」
答え: 「スピードの問題です」

これではなんのことだかわかりませんね。
わたしは続けて、関係代名詞(この場合は which)は補足説明に使うのだから、
説明が足りないという意識が消えないうちに先を読めば、
関係代名詞で始まる部分が説明していることはすっきりわかるはず、
という意味のことを言いました。

先行詞などという文法用語があるばかりに、
後ろから先行詞を探しにさかのぼるという馬鹿な話は日本のほとんどの文法書が
勧めている方法です。実際、わたしもそういう馬鹿の一人でした。そんな必要はないですね。
頭から読んでいって、わからなくても、頭の中に「あ、これ説明が足りてないな」と思いながら、
その重いが消えないうちに先を読めば、自然に説明がついていて、納得できるものなのです。
精読的多読の一つの側面ですね。(ほかの側面は「ことばの氷山」の海面下)

(むずかしい説明になりましたが、ご容赦。
これはほとんど自分のためだけのメモですね。
せいぜい「先行詞」という用語を知っている人にしか役に立たない。
知らなければそもそもこの「問題」は出現しない!)

で、上京してきた古い多読仲間は、意外な答えにびっくりしたと思いますが、
きのう次のようなメールが届きました。

文の意味をつかめない時ですが、前は品詞分解までいかなくても(やったこともあるけど)
小さく、小さく単語単位で見てしまって、ますますわからなくなっていたのが
先生に言われた通り、スピードを意識して、前の段落くらいから数ページだーーっと読むようにしたら
さらっと意味が分かったりするようになりました。
この助言は、かなり効きました。。。(はて、わたしタドキストではなかったのか)
さっぱり分からない本や文単位の細かい理解にも有効ということで。
関係代名詞の先行詞(と書くしかないので)も、何を悩んでいたのか、それしかないじゃん、と。。。
(三つ続いたり、節のなかにさらに関係代名詞が入ってきていたり、並列だったりという
見分け方も、いや、いちいち見分けなくても書いてある通りだね。。。という感じ)

うれしいですね!
こんなにすっきり、わたしの説明した範囲を超えて納得してくれて・・・

分からないときにはできるだけ細分化して、部分ごとに細かく見ていって、
時には品詞分解などしながら理解に至るというのがこれまでのやり方でした。
「スピードが大事」というのは文法分析とは縁もゆかりもないやり方ですが、
このメールにあるように、「分からない部分」に注目しないでその少し前から
快適なスピードで流し読みすると、ごくごく自然に「ほどけていく」ものなのです。

翻訳していてどうしていいか分からなくなることはよくあります。
そうすると、これまでの「精読」では分からない部分に注意を集中します。
これは間違いです。実はその「部分」よりもっと前から著者の真意を取り違え始めていて、
意味が少しずつぼけてきて、ついに何にも分からなくなったのが、その「部分」なのですね。
だから、もっと前に戻って、ここまでは分かっていたというところからもう一度
快適なスピードで読み始めると、するするとほどける(ことがある)わけです。

ああ、いろいろ刺激されて、たくさん書きたいことが出てきますが、
メモとしてはここまで! I さん、ありがとう!!

追伸
I さんともう一人の翻訳者は、その後もメールをやりとりして、翻訳に関わるさまざまな
悩みを共有しているようです。翻訳もやっぱり仲間か?!

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