きのう世田谷の二子玉川で多読講演会+ワークショップをやったとき、
例によってORTによく出てくる cross を探してもらって、
日本語を通して理解することは無茶だという話をしました。
ついでに「angry ≠ 怒る」という例を出したのですが、さっそくその晩
女検視官シリーズの最新刊にぴったりの例が出てきました。
「angry=怒る」じゃなかったの? という方は続きをどうぞ・・・
講演会+ワークショップでわたしが説明したのは
angry は「激怒」に近く、いまにもつかみかからんばかりの怒り方ですよ、ということでした。
読んでいたのは Patricia Cornwell さんの Chaos という推理物で、
この場面は主人公のScarpettaがハーバード大学近くの路上で
車の中の人物と険悪な状況になって警察に通報され、警察官の
Pete Marino から詰問されます。そこで「あれが angry と誤解された
のかも」と釈明します。
“Maybe that’s what someone saw and misinterpreted it as him being angry.”
では誤解の元となった行為はどんなものだったかというと、
“Bryce opened his window so we could talk and that was it.”
知り合いが「車を止めて窓を開けた」だけのことだったのですが、
Marino lets me know that next I became abusive and physically violent,”
尋問している警察官によると、それを見た通行人は警察に主人公が
「怒鳴り始めて暴力を振るいだした」と通報したというわけです。
まさに angry そのものですね。つまりこのくらい怒っていないと
angry は使えないとも言えます。
一方日本では「怒っている= angry 」と教えられるわけで、
これは困ったものです。日本語で普通に「わたしあの人には怒ってるの」と
言ったとすると、まさか「つかみかかろうとしている」なんてということは
ないですよね。普通に「怒っている」くらいのときに angry を使うと
とても険悪な、不満が積もり積もっていつ爆発してもおかしくないような
状況に思われてしまう・・・
いわゆる「定番」の訳語というのが悪さをするのです。
「さようなら=Goodbye」とか、「angry=怒る」とか、
「water=水」、「head=頭」、「I=わたし、you=あなた」・・・
一対一対応の「英単語=訳語」はすべて unlearn しましょう。
そのためにはゼロから、頭をまっさらにして、文字のない絵本から
ことばと場面を吸収しましょう! それしかない。それがいちばん速い。
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