Phonicsには反対意見があります。wiki で検索してください。
wiki の内容をごく簡単に紹介すると、まずwhole language からの反対意見が
あります。whole language という考え方は、ことばを一つ一つの単語や文法に
分解するのではなく、ことばを全体として吸収しようというものです。
当然のことながら、単語を音素に分解して教えようという Phonics は
whole language の立場からは認められないというわけです。
一方で、アメリカ議会が移植して、教育省が関わって行った調査では
whole language と Phonics をはじめとするさまざまな教授法について
調査した結果、初期の読書力を高めるためには Phonics がいちばん有効と
結論を出しました。
わたしはそうした「調査」を簡単には信じません。
それは Paul Nation という人の 「使われている語の95%を知っていないと
本を読み通すことはできない。98%を知らないと楽しめない」(だったかな?)
という、先生たちに広く信じられている説をわたしが信じないのと同じです。
人間の実際の姿を描き出す調査なんていうものはアメリカ議会が委嘱しようと
教育省が関わろうと、できるはずがない。
(百歩譲って、Phonics はアメリカのこどもたちには有効だとしましょう。
けれども日本に持ってきて有効だということはありえません。
前回話題にしたように、日本人のこどもには Phonics の前提となる
音の土台がないのですから。)
わたしは調査や数字や試験や資格なんぞより、信頼できる人の「勘」を
はるかに信じます。
たとえば、先日Oxford Reading Tree の絵本シリーズを作ったRoderick Huntさんと
Alex Brychtaさんが来日した折に、Oxford University PressのKさんが
招待してくださって、Brychtaさんの奥様とKさんとわたしと5人で食事をしました。
その席で、ORTにはPhonicsのシリーズもあるのですが、
HuntさんもBrychtaさんもフォニックスには反対だと言っていました。
ところで、Phonics がうまくいく、あるいはうまくいくように見える場合は
たしかにあるのでしょう。たとえば識字障害のあるこどもには有効な
場合があるかもしれません。
また、児童英語教室などでは、こどもはきっと遊んでいるような気分で
フォニックスの練習を楽しむかもしれません。そうすれば楽しく英語の音に
触れることができることになって、英語に対する親しみ、楽しみ、吸収が
ともに高まるかも知れません。児童英語教室などではほかの遊びも入るので、
フォニックスの空回りが見えにくい可能性もありますね。
ここまで Phonics の具体例を出さずに話を進めてしまいました。
筋が見えにくくなるといけないと考えたからです。
そのためにフォニックスを知らない人にはわかりにくかったかな。
申し訳ないです。
補う意味を込めて最後に一つだけ書いておきます。
英語はラテン語系のことばとゲルマン語系のことばが積み重なって、
入り組んでいます。その様子はちょうど日本語に和語と漢語があって、
一つの漢字に 音読み と 訓読み という複雑な読み方が存在することに
似ていると思われます。
あまりこの話題に関係なく聞こえるかな? 要するに、英語と日本語は
どちらも 綴り(文字) とその 読み(音) の間に一対一対応がないところが
似ているというわけです。
またいつかもっと詳しく書く機会があるといいのですが、それはなかなか
期待しがたい。そこで、フォニックス歓迎ばかりでは危ういという意見が
あったということだけ覚えていてくださるとうれしい。フォニックスはいいそうだ!
というのですぐに飛びつくのは、特に日本ではやめた方がよいとわたしは
思います。