英語民間試験導入とその延期について・・・ 伊藤和夫の亡霊

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表題のことで朝日新聞がこのところ英語教育/英語学習に関する
記事を連日掲載しています。どれも一知半解、背筋もなければ
軸足もない、取るに足らない記事ばかりですが、多読・Tadokuとの
ちがいを浮き彫りにするために、引用する価値はあると思います。

きょうは故伊藤和夫が言っていた
「ゆっくり読んで分からないものを速く読んで分かるはずがない」
という迷言が堂々と使われていたので、そこについて一言・・・

伊藤和夫を初めとする英語の先生たちの一知半解ぶりについては
ちくま学芸文庫に入っている本の中でくわしく書きました。
伊藤和夫という人は受験英語の神様と呼ばれましたが、
いま実際に教えている人たちの中にもかなり信者がいるようです。

その「神様」の迷言の一つがさきほどの
「ゆっくり読んで分からないものを速く読んで分かるはずがない」
です。

一方わたしは大学の先生になる前から(つまり50年くらい前から)
「さっと読んで分からないものをいくら時間かけても分かるはずはない」
と言っていました。50年前は大学院生でしたが、回りの院生も
英語には苦労していました。おそらくわたしのこの意見は
なんのことかさっぱり分からなかったことでしょう。

おそらく普通は伊藤和夫の言い方の方がまともに聞こえることでしょう。
わたしの意見は「さっと」はわからないし、「いくら時間をかけても」
理解しにくいかもしれません。

そこで、わたしが日本語を読んで「分からない」文章にぶち当たった時、
どうするか考えてみましょう。

ゆっくり時間をかけて、文法分析をするでしょうか? しませんね。
わたしの場合は、少し前からもう一度同じ個所を読み直します。
その時とくにゆっくり読むわけではなく、さっと読み直すだけです。
それで分からなければ、飛ばします!

英語の場合に違わなければならない理由はあるでしょうか?
英語は文法がしっかりしているから? 嘘です。
地球上に文法がしっかりした自然言語なんてひとつもありません。
逆に、読書に英語と日本語の違いはあるでしょうか? ないですね。

いくらでも長くなりそうなので、一つだけ実用的な助言を!
英語であれ、日本語であれ、文章を読んでいて分からなくなるのは
おそらくその少し前から徐々に作者の意図を見失い始めて、
ついにすっかり分からなくなったとこで、「分からない」ことに
気がつくのだと思われます。

したがって、英語でも日本語でも、試験で分からない個所が出てきたら、
そこから遡って、分かっていたと確信のあるところから読み直しましょう。
もちろん「さっと」読む必要があります。内容自体が理解を超えるもので
なければ、こんな風に少し戻って「アイロンをかけ直す」と、
さらっと何を言っているか分かります。

決して、文法分析などを始めてはいけません。
受験というといつも繰り返すことですが、
頭を信じちゃいけません。多読・Tadokuで体に溜めた量を信頼しましょう。
理屈は捨てて、勘で答を出しましょう!

これも多読・Tadokuの非常識なところですが、
「常識」に囚われた英語の先生たちがどれほど英語がわかっていないか--
それはぜひちくま学芸文庫のわたしの書いた本を「さらっと」読んでください。