一つ前の記事 で「多読特別セミナー 多読的シャドーイング」のことを
お知らせしました。
原理的に意味のない「ディクテーション」にはまっていませんか?
と書いたところ、すぐさま「ある人」から直球の質問が・・・
ディクテーションはダメなんですか?! 生徒にやらせてました(><)
沢山の人をびっくりさせたでしょうね。
ディクテーションはいわば「音声学習の最高峰」みたいな地位にあって、
それを否定することはおそらく英和辞典や英文法を否定されるのと同じ
くらいの衝撃に違いありません。
ふふふ、だからこそ否定する意味がある・・・
(長くなるので何回かに分けます。)
まず最初にお断り
わたしは嫌というほどディクテーションをやりました。
学生にもやらせました。(学生のみなさん、ごめんなさい!)
ディクテーションの否定は他我を等しく痛めつけた末の判断なのです。
たとえば一橋大学で非常勤講師をしていたとき、
「ジェシカおばさんの事件簿」というミステリー・ドラマが放送されていて、
わたしはそれを毎週音声だけ録音して、コピーして学生に配って、
ディクテーションをやらせました。1年間ですよ! (たぶん40週くらい?)
もちろんわたし自身も毎週25分の全編を3時間くらいかけて書き取って、
それをコピーして学生に配って、1行1行学生と一緒に検討していきました。
25分全部はとても進まなかったのではないだろうか?
それほど丁寧に、時間をかけたのに、学年最初と最後で学生のリスニングに
変化があったとはまったく感じられませんでした。
だからその1年だけでやめました。
(「ディクテーションは無意味」という発言はこれまでにもあって、
たとえば https://tadoku.org/blog/sakai-note/2013/09/28/44 など。
けれども、これから何回か書く記事がいちばんくわしくなるはずです。)
ディクテーションが無意味なのは、なぜ?
無意味な理由は二つあります。
(実は一つですが、それはあとで・・・)
*音は落ちる
*音は変わる
どちらもわたしはえらそうに、こんなことも知らないのか、という
書き方に見えるかもしれませんが、実際はわたし自身の数々の失敗から
気がついたことです。
(わたしがほとんどの英語の先生と違うところは失敗数の多さ!
具体的な失敗談はシャドーイング・セミナーで!)
*音は落ちる
簡単な例を出すと、 “…”, said Dad. では said の d は声にしませんね。
何回聞こうが、どんなに音量を大きくしようが、聞こえません。
Dad の D と吸収されて、独立した音にならないのですから。
でもディクテーションでは、この d を必死で聞き取ろうとします。
これがディクテーションの矛盾です。
ディクテーションは「聞き取って書く」ことになっていますが、
実は聞こえないところを何度も聞いているのです。
それでも聞こえないので最終的にどうするかというと、
前後関係から意味や形を判断することになります。
結局、ディクテーションは音ではなく文法や語彙のチェックなのです。
何時間ディクテーションをやっても字幕なしで映画やドラマが
楽しめるようにならないのは当然のことなのです。
これを日本語に置き換えてみましょうか。
日本語でも音は落ちるわけで、「ありがとうございました」は
「ありあざました」、「ありゃっざした~」「ありゃっした」
「あやしたっ」になります。
それをわたしたちは全部「ありがとうございました」と言われていると
受け取ります。言っている方ももちろんそのつもり!
ディクテーションの正解は「ありゃっざした~」と聞こえたときに
「ありゃっざした~」と書くべきなのでしょうか? それとも
「ありがとうございました」と書くべきなのでしょうか?
「ありがとうございました」と書かないと正解にはならないでしょうね。
ディクテーションでは繰り返し聞くので多少は音になれるかも
知れませんが、シャドーイングにくらべたらその変化は微々たるもので、
かける時間を考えたら無意味と言っていいと考えます。
(シャドーイング・セミナーでは驚くべき短期間で英語独特の音を
獲得した元講座生に来てもらうので、実際にたしかめることができます。)
さて、次回はもう一つの点「声にしていても、音には大きな幅がある。」を
言い換えると「音は変わる」ということになります。
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思ったより大変でした、常識を覆すのは。
いろいろ工夫をしてみましたがうまくいかなくて、とどのつまり
すっきり書くしかない、と。
足りないところはみなさんからの質問で補うことにします。
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