未だ見ぬ方より朋来る

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後世畏るべしというのはこういうことを言うのでしょうね。
数日前に大学1年生というSさんからメールが届きました・・・

間にわたしの感想を入れますが、それが邪魔な人は引用部分だけを読んでください。

突然のご連絡失礼致します。私、YYY大学1年の S と申します。

中学二年生から多読を5年間続けた結果、先日初受験したTOEICで935点を取ることが出来ました。(海外経験はゼロです)その感謝の気持ちをお伝えしたく、メールを送った次第です。

ありがとうございました。こうやってみなさんからメールをいただくことで(どんなメールでも!)、
わたしたちはもう一歩を踏み出すことができます。

私が英語の勉強を始めたのは小学5年生ですので、英語学習経験は9年です。とはいえ、小学生の間は近所の小さな英会話教室で週に30分プライベートレッスンを受けていただけなので、勉強というよりも外国(語)と触れ合う時間でした。本格的に「勉強」をし始めたのは中学入学後です。授業は所謂文法訳読法で、初めの一年は特に何の疑問も抱いていなかったのですが、次第にtheyを彼らと一対一対応で訳す奇妙さ、「彼女は彼女の母親と一緒に買い物に行った。」などの不自然な日本語に違和感を覚えていきました。徐々にそのモヤモヤは大きくなっていったのですが、確実に日本の英語教育がおかしいと確信する決定打となったのは”She was unhappy.”という何の変哲もない文章です。学校の先生はこの文章を「彼女は不幸だった。」と訳しました。しかし文脈上unhappyを不幸と訳すのは少し行き過ぎで、恐らく悲しかった、あたりが適切でした。先生の言う日本語訳を少しの疑問も抱かずに必死にノートに写すクラスメイト。その瞬間、このままの教育じゃダメだなと悟りました。こう思っているのは私だけじゃないはず。どこからかそんな自信が湧き、英語教育に関する本を地元の図書館で探しました。そして酒井先生の著書『さよなら英文法!多読が育てる英語力』『快読100万語!ペーパーバックへの道』『どうして英語が使えない?―「学校英語」につける薬』に出会い、感銘を受けました。まさに目から鱗です。(わざと先生の目に留まるように学校で読んだことも何度かあります。)よし、多読をしよう、と数日後には大型書店で洋書を購入しました。幸い、数年間英語に触れていたこともあり、中学入学当初から英語を英語のまま理解することが出来ていました。(なのでいちいち翻訳する学校教育を理解できませんでした。)もともと読書好きだったことも手伝って、どんどん多読にはまっていきました。

中学生で「they=彼ら」の奇妙さに気が付くというのはすごいですね!
わたしが気が付いたのは40過ぎだった!
先生の言う日本語訳を写すクラスメイトを見て絶望したというのもすごい。
この先どんな洞察が S さんを待っているのだろう!?

(わたしの本をわざと先生の目に留まるように読んだというところで、
わたしは何人かの教え子を思い出しました。 あの人 や、 あの人 は、
それで先生に睨まれたのでした。どうしてるかなあ、あの人たち・・・)

初めに読んだのはCharlie and the Chocolate Factoryです。ストーリーは完全に理解していたので思い切ってこの本から始めました。それから現在に至るまで何冊もの洋書を読了してきました。高校一年でLouran Conrad作LA candyシリーズを読破し、高校三年生の頃にはSophie Kinsella作品や学術書を難なく読めるようになりました。勿論。多読だけでなく学校の勉強や受験勉強もしましたが、長文問題や文法問題、整序問題が得意だったのは多読のお蔭だと信じています。

多読で身につく力は何でしょうか。個人差があるのは承知していますが、私の場合のお話しをします。私が一番身についたと思うのは「英語という言語そのものに対するセンス」です。この単語にはtoが来るな、ここはwhichが入るだろうな、と感覚的にわかるのです。このセンスは本当に役に立ちます。文法問題だけでなく、英作文を書く際に非常に助かります。そして欠かせないのは「英文に対する恐怖感がなくなること」でしょう。私は学科の特性上英文を読む機会が多いのですが、大して苦ではありません。今まで読んできた量に比べれば5、6ページは全く恐れるものではないのです。ですが、周りは英文に対する慣れがないのか苦労しているように見受けられます。多読を続けて良かったな、と思える瞬間です。また、多くの方が「多読はリーディング以外に効果が出るのか」を議論していらっしゃいますが、「ライティング」に関してはかなり大きな効果が期待できると思います。前述したように言語に対するセンスがあると英作文も和文英訳をせずに済みます。いちいちここでの「みる」はsee, watch, view, stareどれだろうと考えずにwatchだなと選べるのです。これは「英語で考える」という点にもつながります。感覚的に英語を捉えられるようになると、いちいち日本語を挟むのが煩わしくなります。私は英文を書く際には頭を英語モードに切り替えて一気に書きます、というかそうしないと上手い文章が書けません。長々と書きましたが。多読にはライティングにも効果があることをお伝えしたいです。

多読は「ことばそのものに対するセンス」を育てる、そして何より「恐怖感がなくなる」--どちらも
(私が見てきた)多読の核心だと思います。S さんの、素直にストレートに核心を衝く鋭さはこれからが
楽しみです。

現在に話を進めます。先日初めてTOEICを受験しました。受験理由は単に自分の実力を知りたかったからです。試験勉強は文法問題集一周、模擬問題を二回分解くだけの、世間と比べたら少ない量です。それでも935点を取ることが出来ました。英語の勉強を始めてから一歩も日本から出ていません。今までやってきたのは学校の課題、受験勉強、海外ドラマ・洋画・洋楽鑑賞そして多読のみです。一番効果があったのは多読であったと確信しております。将来の職業はまだはっきりと決めていませんが、大学では第二言語習得論を専攻し、多読教育の研究をしたいと思っています。もし中学二年生の時に酒井先生の本と出会っていなかったら。私の人生は確実に変わっていたでしょう。巡り合えた奇跡に感謝です。

長文、そして駄文で申し訳ありません。感謝の気持ちが伝われば幸いです。

駄文などではないです。それに、感謝はわたしの方です。
先へ進む励ましをもらいました。ありがとう。
そして Enjoy English! それからもちろん、なんであれ、Good luck with your 将来!

最後に、これからも時々様子を知らせてください。
それから東中野の事務所にもいつか来てください。楽しみにしています!

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