4/7(日)オンライン日本語多読授業入門講座 報告

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今回のオンライン日本語多読授業入門講座は、参加者5名。青森、東京、名古屋、兵庫県、香港からの参加でした。
多読概論を正会員の纐纈(はなぶさ)さんが、子どもへの多読支援の報告を準会員の高橋温子さんが話しました。

最初に、纐纈さんから「多読の定義と背景」の説明があり、続いて多読は個人読書であること、精読との違いなどについて詳しく語られました。

大学での実践の様子や学生がどのように多読していったかについても表や動画で詳しく見せてもらいました。
最後に、読書しているときに頭の中で起こっている「絵を描く」体験を字のない絵本でみなさんに少し味わってもらいました。多読が目指している読書の世界がちょぴり実感できたのではないかと思います。

後半は、スミス大学で教えるかたわら、子どもの日本語学習支援にも携わっている高橋さんから、多読を取り入れた補習校での実践報告がありました。

多読は、豊富なインプットが可能で、教師不足にも対応でき、また生徒のペースで学習できるなど補習校の抱えている課題への答となっているとのことでした。高橋さんによると、週1回の多読でも効果があるそうです。毎週通えない子どもも多いそうですが、みな数ヶ月すると徐々に本が読めるようになっていくそうです。今回の参加者の中には、日本人学校や子どもの日本語学習支援に携わる方もいらっしゃったので、参考になったのではないでしょうか。「小3の壁」という言葉に大きくうなずいていらっしゃる姿が印象的でした。

質問タイムには、以下のような質問が出ました。

Q:オンラインでの多読への留意点は?
A:オンラインでもみんなで最初にいっしょに読むなど場を温めてから始めるのがいいのではないか。(その他、オンラインでの多読のやり方の例を挙げました)

Q:小学校高学年でも読みたくない、読んでと言われる。どうしたらよいか。
A:
読みきかせでかまわない。続けてみてほしい。そのうち、自分で読むようになると思う。

Q:学習者がなぜ本を読む授業をするのかわからなくなる。どうしたらよいか。
A:
日本語の「筋肉」を育てるのが多読。本を通して日本文化にも触れられる。もちろん、読むのが速くなるなどの効果もある等、ことある毎に学習者に伝えていってほしい。

Q:日本語が全くゼロの子どもの場合、文字を覚えてから多読をスタートした方がよいか
A:
文字を覚える前から「読みきかせ」をしていってほしい。言語は、最初は「音」が基本。そこから文字に結びついてくるのではないか。

みなさん、熱心に質問され、口々に「勉強になった」と言ってくださいました。
「主体的で楽しい」多読の精神が伝わったとしたらうれしいです。

以下は事後アンケートからの抜粋です。

  • 学習者主体の学習こそ学びにつながる・自信につながるという最も大切なことが、多読で実現できると理解できました。
  • 「チャレンジしない」「読み聞かせからでいい」、また挿絵の効果や「場の力」など、全てが目から鱗のことばかりで、大変勉強になりました。「大学生」と「児童生徒」という、二つの異なる現場での実践報告を聞くことができたのもとても参考になりました。(中略)また髙橋先生の、多読をすることで「国語の教科書が理解できないという負の経験が解消される」という言葉がとても胸に響きました。子どもたちが「わかる、おもしろい」という経験を少しずつでも積み重ねていけるよう、支援していきたいと思いました。
  • (前略)ただ単に日本語力をのばすことが目的ではなく、ストーリーを読んで感動したり読書のすばらしさを知ってもらうことがゴールというはなぶさ先生のお話に多読の大切な目的を気づかされました。

みなさんのこれからの多読実践について、いつか報告をいただけたらうれしいです。

(粟野 記)