10月24日(日)オンライン「読みもの作成入門講座」報告!

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第6回オンライン「読みもの作成入門講座」を開催しました。
今回はフランス、ハンガリー、オーストラリア、アメリカ、メキシコなど海外から参加してくださった10名を含め14名の方々が受講されました。なんと、何人かは真夜中のご参加です! 中学校・高校、大学、日本語学校、日本語補習校などで授業をしている方、個人で教えている方、出版社の方など、さまざまな立場からのご参加でした。

多読用読みものについて

はじめに多言語多読理事長の粟野から、多読用読みものについて説明がありました。
多読用読みものにはどのようなものがあるか、現状何冊ぐらいの読みものがあるか、読みものをどのように考えて作っているか、題材はどういうふうに選んでいるかなどを解説しました。レベル分けや語彙表については、「にほんごたどく特設サイト」の資料を紹介。そして、写真や挿絵の著作権についても話しました。
現在、NPO多言語多読では、多読用読みものは、サイト上の無料の読みものを含めて約210話を作成してきています。

読みものづくりのポイントとは?

次に、理事の松田が、「にほんごたどく特設サイト」の「日本語の多読向け読みものを作ろう」のページを見せながら、多読用読みものを作るときの注意点を解説しました。
まず、学習者に手にとってもらうために「書き出しの工夫」が必要なこと、「文法や語彙の制限の中での表現のコツ」、「簡約(リライト)の場合、分かりやすくするために文を前後で入れ替えたり、大幅にカットしたりする」「登場人物の名前や小道具も場合によってはわかりやすいものに変える必要がある」など具体例をあげて話しました。

実践その1

いよいよ実践です。まず、「無料よみもの」の「カラスと水さし」を粟野の説明で見ていただき、「レベル0」の絵と文の入り具合、展開の仕方を確認してもらいました。
「レベル0」のリライトに挑戦してもらいます。題材はイソップの「アリとキリギリス」か「よくばりな犬」で、2グループずつに分かれました。
50分ほどで作業終了。できあがったところまでの作品を発表。
「よくばりな犬」では、筋書きの検討を丁寧にしたグループ。場面設定、文、イラストで一応完成させたグループ。このグループに対して「書き出しの工夫がもう少し必要」などの意見が出ました。「アリキリギリス」では、どちらのグループもおもしろい話となっていましたが、1つのグループに「夏から冬までの季節感を出した方がよい」との意見が出ました。

実践その2

次に、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をリライトする作業です。事前に原作を読んできてもらっていました。
新たに4つのグループに分かれ、まずレベルを何にするか話し合っていただきました。1つのグループがレベル4で、3つのグループがレベル3でリライトをしました。
40分ほどで作業終了。
時間が少し短かったようですが、各グループともよく話し合ってリライトをしていたようです。最初に極楽と地獄の説明を入れたグループが2つ。芥川らしさを出す工夫をしようとしたグループ、「実況中継」っぽさを生かして読者に語りかけるようにしようというアイディアが出たグル-プ、話をわかりやすくするために前後を入れ替えたり不必要なところをカットしたりしたグループなど、それぞれが工夫を凝らしていました。

《アンケートより抜粋》
・文章を省略したり、必要なところに説明する文を挿入するなど、リライトのプロセスが分かり大変勉強になりました。グループで作業したことで、さまざまな発想が出てきたことが面白く感じました。
・教えるよりも難しいと思いました。
・難しいことは承知していましたが文字、語彙、文法のレベル別のチェックもさることながら、どこまで原文を生かすか、絵と文の棲み分けや分担が大切だと感じました。文章では書かれていない文の奥にあるものをどれだけ伝えられるかもとても重要なんだと感じました。
・イメージしていた通り難しい作業だと感じましたが、実際にスタッフの先生方に指導をしていただいたり、他の方とアイディアを出し合ったりしていく中で多くの気づきがありました。ワークショップの時間は足りなかったですが、初級と中級をどちらも体験しないと得られない感覚があったように思います。
・読みもの作りをするときのコツ、テクニック、オリジナルのどこを活かすか、入れておいたほうがいい説明など、アドバイスをもらいながら、進めることができたのがよかったです。そして、実際にやるときは、誰かと一緒に!と思いました。
・今まで気が付かなかった難しさに気が付くことができました。作品の味を残しながらレベルに合わせる作業が難しいですね。でもやりがいのある作業だと思います。
・読み手の日本語の力を考えて、文章を作ったり、言葉を選んだりすることは思っていたよりも難しかったです。数人でのリライトの活動はとても楽しく、自分の思いつかなかった言い回しをグループのどなたかが言ってくれたりして、ハッとさせられる場面も多くありました。

以上

いつものように駆け足の作業でしたが、みなさんの参考になったとしたらうれしいです。とにかくやってみなくてはわからない、経験から学ぶしかないという方針で、2ヶ月に一度、「読みもの作成入門講座」を開いています。みなさんの意見を聞いて、やり方も改善していきますので、ご興味のある方、ぜひご参加ください。次回は来年の1月30日開催です。

(正会員・田中記)