8/24(日)「読みもの作成入門講座」報告

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参加者は7名。講師は、粟野、田中、川本でした。

大学で英語多読、日本語多読を取り入れている方、日本語学校でやさしい本を読む時間を設けている方、国際交流基金で近々「読みものを作ってみよう」というイベントの計画がある方、外国にルーツのある子どもたちが多く通う小学校の元教員、日本語学校を経て技能実習生支援を始めた方など様々な立場の方が集まりました。
始めに、私たちの考える多読について、またその「多読のための」読みものとはどんな特徴があり、現在何作品あるのかを説明しました。
次にサイトの無料読みもの、スタートレベル、イソップ「犬と肉」が完成するまでの過程をお見せしました。

その後、早速3グループに分かれて、作成の実践に移りました。
題材はイソップの「カラスとキツネ」です。レベルは0。用意されたグーグルスライドを使って、場面分けをし、テキストを考え、挿絵を当てはめていきます。
ひとつのグループは、「キツネが森にいます」とキツネに焦点を当てた始まりとし、使えない語彙、例えば「肉をくわえる」は使わずに避けて、キツネのつぶやき「あ、肉だ。食べたいな」にするなど、絵も表現も工夫して、完成。

ふたつのグループは、場面分けのイメージがつかめず、苦労したようです。最初の場面に「高い木の上にカラスが肉をくわえて止まっています」というテキストを提案したグループがありましたが、一文の情報は少なく、と講師からのアドバイスで、徐々に短い文章の感覚をつかんでいきました。

休憩をはさんで、リライトの際の注意点を話し、宮沢賢治「注文の多い料理店」をレベル3にリライトする実践に移りました。メンバーを入れ替え、やはり3グループに分かれての作業でした。
「紳士」「イギリス」などの語彙にこだわってなかなか先に進めなかったグループがある一方、「山奥」の様子はあたりが暗くなったという表現を使う?宮沢賢治らしいオノマトペをどうする?など悩みつつも比較的さらさらと進めたグループもありました。案内人がいなくなったり犬が突然死んでしまったりする場面に「不思議」という語彙がレベル3で使えることを発見して使ったグループもありました。
三者三様で、興味深かったです。

事後のアンケートより抜粋
・作家の特徴を活かしながら、読みやすくしていくことの難しさを感じました。作り方が少しわかりました。イラストも合うものを作ったり、選んだりして作っていきたいです。
・グループで色々な人の意見をとりいれながら読み物を作り上げていくということがとても新鮮で楽しかったです。日本語教師という職業柄、使用する語彙のレベルや、使用する文型等にとらわれてしまい、ストーリーの流れのどの部分をみせれば読む人に伝わるのかという視点が欠けているということにも気づきました。
・とても楽しかったです。今後続けていきたいなと思いました。話の設定の説明や情景描写が特に難しかったです。グループワークなので一人では出せない発想がでてとても勉強になりました。

毎回、原作らしさと読みやすさのせめぎ合いでみなさん悩まれますが、この悩みが作成の第一歩です。それを体験していただけたのでよかったと思います。
今後、作成と同時に多読の実践の経験も積んで、多読に適した読みもの作りをしてくださることを期待しています。
また、今後、どんなワークショップがあったらよいと思うかという質問に2人の方が「生成AIが作成した読み物の添削、編集」「生成AIを用いた作品作り」と挙げていらっしゃったのが印象的でした。読みものもいよいよAIを利用する時代になってきたようです。

(川本 記)