6/2 (日)オンライン日本語多読授業入門講座 報告

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6月2日日曜日、参加者4名を迎えて、日本語多読入門講座が開催されました。国内で支援に関わっている方のほか、アメリカやアジア在住の学習者を対象にしている方もいらっしゃいました。様々な場所や機関で支援に関わっているみなさんに会えるのは、オンラインならではのメリットです。すでに多読を取り入れている方もいて、読みものの正しい使い方を知りたい、自分のやり方に不安を感じたので確認したい、といった希望が寄せられました。今回は、司会を理事長の粟野、理論を正会員の纐纈(はなぶさ)、実践を正会員の大越が担当しました。
 まず、纐纈が、多読の定義やNPOで推奨している活動の進め方、ルールなどについて説明しました。多読はインプットを増やすアプローチであり、一斉授業と異なる個別活動であることを強調したつもりです。

そのあと、多読で使われるGRや一般書の特徴、具体的な教室内活動や教師の役割などについて紹介しました。辞書をひかずに読み進める多読では、絵の中にヒントを探し出すことが重要になります。絵の持つ役割を理解するために、最後に文字のない絵本を全体で読む体験もしてみました。

後半は、大越が日本の大学と地域日本語教室での実践についてお話ししました。大学で取り入れたきっかけは、非漢字圏からの学習者の増加に伴い、従来の読解授業の運営が難しくなったことだったそうです。多読を必修授業にするまでの経緯や、テスト対策を目的とする読解授業との関連がくわしく紹介されました。

多読授業は、自律学習、協働学習が念頭に置かれています。さらにブックトークやプロジェクト発表を組み込むことにより、多量のインプットをアウトプットにつながっていることが理解できたのではないでしょうか。

休憩後は、疑問点やコメントを出していただきました。「オンライン多読の進め方」「輪読のやり方」「海外での多読プログラム立ち上げ時にすべきことは?」などの質問がありました。オンライン多読ではブックトークなどの全体活動に目が向きがちですが、個人読みの時間を十分に確保することがやはり重要です。輪読については、授業のwarm-upとして、一人ずつ音読をして場づくりの一助にするケースがあるとのことでした。また、本の購入が難しい場合には、数が増えてきたオンラインの無料読みものを印刷して使っている所が多い、という話もありました。

以下事後アンケートからの抜粋です。

・ブックトークを取り入れたいと思う。
・多読の時間は、多忙な学生にとってリラックスできる時間でよいことの確証がとれた。このリラックスが、ことばからのイメージや創造力向上、ひいては言葉の運用力につながるのだろうと思った。
・日本語学校に勤務していたが、留学生は教科書や参考書以外に、日本語の本にふれる機会はほとんどないように思う。学生に教えない自律学習だからこそ学生の実になる時間を提供できるのだと思った。
・通常一対一の個人教授に終始していたのが、複数の生徒の方たちと多読をとおして、横のつながりをもたせ、会話や共同作業など、新たな展開につなげていけそうで、とてもたのしみです。

早速、「読みもの作成入門講座」へも申し込むとおっしゃっている方もいましたし、定期的な勉強会のご希望もいただいています。今回の入門講座限りではなく、継続的にNPOの催しに参加していただけるとうれしいです。
(正会員 纐纈)