セルビア、ベオグラード大学で多読授業を実践している先生より報告が届きました!
(サイトのトップページの写真の中で、本を手ににこやかな笑顔を向けてくれているこの方たちがベオグラード大学の学生さんです)
海外での多読授業は、本がない、時間がとれない、場所がない・・・難しいことが山ほどあります。それでも、もう4年も課外で(!)続いている「多読の時間」、すごいです。
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★ベオグラード大学多読報告1
①ベオグラード大学では今、多読がどんな形で定着しているか
ベオグラード大学日本語科では、毎週1回2時間の間、多読の時間を設けています。場所はベオグラード市立図書館の一室を借りて行っています。 扱っている書籍は、「よむよむ文庫シリーズ」をはじめ、雑誌、小説、エッセイ、絵本、漫画、パンフレットなど、さまざまな種類の読み物、約100冊ほどです。これは、歴代教師が個人的に収集したり、在留邦人の方からいただいたりしたものがほとんどですが、去年度は、本学を訪問した大学のみなさまが、ダンボールひと箱分に及ぶ大量の書籍を届けてくださいました。毎週、これらの蔵書の中から、学生が興味のありそうなものを20冊ほどピックアップし、図書館に運んでいます。(学生が閲覧できるような蔵書ファイルを作り、毎週何か持ってきてほしい本のリクエストがあれば事前に言ってもらうというシステムを来年度から実行しようかと考え中です。)
参加者は毎週約10名ほどです。主にベオグラード大学日本語科の学生ですが、近隣の民間語学学校の日本語の学生や教師の方も数名参加しています。
また、2014年度の新しい活動としては、今年度から新しく開いた「ぺらぺら日本語カフェ(会話クラブ)」との特別合同企画が挙げられます。NPO法人のスタディツアーの一環として日本人学生がセルビアを訪問した際に、その日本人の学生も交え、みんなで日本の読み物を通して日本人と交流するという企画を行いました。 雑誌を日本人学生と一緒に見ながら自由におしゃべりをしたりして、ふだんとはまた違ったにぎやかな雰囲気の読書でした。
②どんな成果があがっているのか
日本語で書かれた読み物が手に入りにくいセルビアにおいて、多読の時間は大変貴重となっています。 「辞書を引かない」「メモをしない」「つまらない、むずかしいと思ったものはやめて、おもしろいと思うものを読む」「とにかく楽しんで読む」という方針を大事にしています。ここから、わからない言葉にぶつかった時に、絵や写真、前後文脈から推測して、「”自分の力で”日本語がわかった!読めた!」という喜びを得られることも大きな成果であると思います。 また、「辞書を引いてはいけない」という制約を設けてはいますが、友達に聞くのは良しとしています。そこから、新しくコミュニケーションが生まれ、学生同士の日本語の理解が深まっています。
★ベオグラード大学多読報告2(多読を実践している先生へのインタビューより)
Q. どんな学生が来るようになったか
・2013年秋は外部からの学生は来るが、内部はあまり来なかった。
会話クラブ設立の動きもあったためと思われる。冬ぐらいから、2年生が5~6人来るようになった。3年生も3人ぐらい。
・春学期(2014年2月~)からはメンバーが増えた。
会話クラブの参加者を読書へ誘った。その結果、多読時間参加者が増えた上に定着した。3年生のうち数名は定着した。しかし、前と同じく試験前は来ないことが多かった。
1年生も来るようになったが、多読時間の間に1年生の授業があるため、30分で多読を終え、授業に向かった。多読参加者の最高は12~3人だった。
1年生でレベル1が終わるぐらいのペースで読んでいる
・学生は本の内容を重視しているが、一度読んだものを再度読む動きはあまり見られない。
Q. これまで行ったプロモーションは?
・会話クラブでの呼びかけ
・外部の専門学校の先生が学生?を連れてきた。
Q. 成果(観察から)
・漢字の授業との関連で、授業で学んだ漢字が雑誌にたくさん使われていることを見つけて喜んでいた。本の中ではことばや表現が自然に使われているので、授業への意欲につながっているか。その逆もしかり。
多読で読んだ本の中の漢字が授業で扱われると喜ぶ 。
・日本の本を読みたがる学生は1年生の段階から本を読みたがっている。
・参加者は多読時間を楽しみにしている。自分の読めるものが必ず用意されており、その本にアクセスできるということがよい。用意された本を取り合って読んでいる。
・易しいものから読み進め、これも読めた、あれも読めた、と感じており、それではもう少し難しいものを、というように日本語の本を読む場所として良いものになっている。
Q. これからのベオグラードの多読とは
・もっと充実させたいが、多読の充実のさせ方がわからない
・来年は本を増やす(JF助成金でふりがなつきの絵本購入:小さい時に読んだもの)
「きんぎょが逃げた」
「ねずみくんのチョッキ」シリーズ3冊
「ずーっとずっとだいすきだよ」
「おじいさんのかさ」
「千と千尋の神隠し(マンガ版)」
「大きな木」
「考えるかえるくん」
「100万回生きたねこ」
谷川俊太郎『生きる』
「多読授業入門」
・読んで感動しそうなもの、内容があるものを充実させたい。
Q. その他
・学生は子ども扱いされたくない
・ベオグラードbookfairの最終日に大使館の担当の方から本を寄贈してもらえるとのこと
・読書が好きではない学生にも来てもらえる環境を:写真が多いもの
・プロモーションの必要性(日本文化デーのようなもの?)
・しゃべることは必ずしも悪いこととは限らないが、今はしゃべらないように言っている
1年生が2人で読むのは自然に起こる。
・1年生は情意フィルターが低い。聞きあったり教え合ったり、自由にしている。自由に話すことも良いのでは
・来年は場所を変えられるようにしたい。
現在は本棚と本棚の間の狭いスペースで多読を行っている。
自由に話せるところ、静かに読めるところのすみ分けができる場所を提供できるよう上司に相談予定
学校だったらもっとよいかも:アクセスの近さ、本を運ぶという観点から
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先生方の努力には本当に頭が下がります。レポート、ありがとうございました!
(粟野)