絵と音が大事
文:酒井 邦秀
これまでの英語学習は文字中心でした。けれどもことばは文字ではありません。基本的には音です。ただ音だけというわけでもありません。ことばには生まれてくる背景があります。多読・Tadoku ではことばを背景といっしょに吸収するために「絵」や「音」をとても大事にします。
文字でしか外国語に触れてこなかった
日本では大昔から、文字を通してしか外国語に接することができませんでした。実際の場面で外国語を使う機会はなかったので、ことばに込められた気持ちや考えを黒い活字から一つ一つ考え込んで解釈するしかありませんでした。「英文和訳」という暗号解読そのものの作業が必要だったのはそういうことだと考えられます。けれどもそうした「考え込む理解」は母語のときの「自然な理解」とはまったく違いました。外国語を母語のように理解するにはほど遠いものだったのです。
「自然な理解」
――ことばとそれを使う場面に大量に触れる
ことばを使うときには、言いたいことがあって、伝える相手がいて、家庭や職場やインターネットという場面があって、それぞれが暮らしてきた物語を引きずって、そのすべてを囲む世界という環境があります。母語の場合は、ひとつのことばを聞くなり読むなりしただけで、それらすべての察しがつきます。
たとえば「一郎、宿題は?」という文字を読めば、言った人、言われた相手、口調、場面が頭に浮かぶだけでなく、二人の間の物語も二人を囲む世界も頭の中に再現できるでしょう。実際の生活の中でことばとそれを使う場面に大量に触れているからです。それが母語による読書を可能にしています。
外国語を母語のように!
――「絵」と「音」の役割
そこで Tadoku は、絵本や朗読音源、映像作品のように、文字だけでなく絵や映像、音によって、ことばを発する人、受け取る人、その両者を囲む場面がまるごと再現されている素材を大事にします。ことばを背景ごと生きたまま体に取り入れることで、日本にいて、まるで母語のように外国語を身につけることを目指すのです。なお、そうして吸収したことばは、話したり書いたりするときにもすぐに役立ってくれるはずです。
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