やさしいことばをたっぷり

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文:酒井 邦秀

多読・Tadokuでは、読むだけなく、聞くも、話すも、書くも、短くて基本的な「やさしいことば」から始めます―それが実は遠回りどころか、いちばんの近道だと思われます。そして、外国語を「たっぷり」吸収して、「たっぷり」使う―これはいちばんまっとうな道でもあると思われます。

やさしいことばほど大事!

「やさしいことば」は、言い換えれば「基本的なことば」です。使われる回数が多いので、使えば使うほど体に馴染んで、あなたの思うとおりに働いてくれます。使い勝手がいい上に、役に立つ場面もとてつもなく多い! Tadoku はそうした「やさしいことば」をとても大事にします。まったくの初心者にも、いわゆる上級者にも、「やさしいことば」を「絵や音といっしょに」、「たっぷり」吸収することを勧めます。その理由は大きく二つ―。

理由1ことばの土台を作る

ペーパーバックでも、むずかしげな学術論文でも、使われている総語数の60%から70%はこどもの絵本に出てくる語と同じです。どんな分野でも、have とか get とか in、out、on、home、this、that などという基本的な語が繰り返し使われています。やさしいことばは、大事なことばの土台になります。どれほどたくさん出会ってもこれで十分ということはないくらい大事です。

理由1頭のすすぎ洗い

やさしいことばを絵や映像とともにたくさん吸収すると、今まで辞書や学習本で習ってきたことが間違っていることがわかってきます。たとえば、on を「上に」と習ったのではありませんか?それは大きな間違いです。「it=それ」も、「I=わたし、you=あなた」も、「head=頭」も、まったく違うか、あるいは大きくずれています。絵本や映像作品でやさしいことばにたっぷり触れているうちに、そうした誤解は少しずつ洗い流されていきます。

Finders Keepers

Finders Keepers
by Will Lipkind and Mordvinoff Nicolas
HMH Books for Young Readers

“One had a spot on his head.”

「head≠頭」の例を紹介しましょう。Finders Keepers という2匹の犬の話を描いた絵本の冒頭に、一方は「head」に斑点があって、もう一方は tail に斑点がある、という描写があります。絵をよく見てください。head と聞いて「頭」に斑点があると思っていると……!? 「顔」に白い斑点が!

たっぷりって、どのくらい?

人間の体を樽に喩えると、Tadoku の考え方はあっさりわかります。
樽にことばを「たっぷり」注ぎ込むと、いつか縁までいっぱいになって、溢れます―それがことばが使えるようになるということだと考えます。

©さかい@NPO多言語多読

これまでの英語学習では、樽の底にせいぜい1センチくらいしか貯まりません。つまり量がまったく足りませんでした。(中高6年間の教科書本文の量を語数でくらべると、ペーパーバック数十ページ程度。せいぜい半日もあれば読み終わる程度の量に6年をかけるわけですね。)多読では少なくともその何十倍も吸収することを勧めています。では、どうやったら溢れるほど外国語を吸収できるのか?

やさしいものから

樽から溢れるほどたっぷり吸収するには、こども向けの絵本から始めます。最初は「文字のない」絵本です。「絵を読む」ことに慣れて、絵から物語を十分受け取ることができるようになったら、次は1ページに1語しかないような絵本、その次は1ページに2語、それから3語、そのうち4語……という具合に、少しずつ文字の多いものへ移っていきます。なお、絵本以外にも道はあります。とてもやさしいアニメや、何度も見た映画やドラマから始めることです。その場合は、最初から「字幕なし」で映像をたっぷり楽しんでください。

「絵を読む」「映像を楽しむ」ことの大切さについては ≫ 絵と音が大事 の記事を読んでください。

やさしいことばをたっぷり吸収すると……

こんなふうに、絵を見て、音を聞いて、やさしいことばをたっぷり吸収していくと、遅かれ早かれ「あれ、これ見たことある!」という語が増えていきます。一つ一つの語に色や匂いや雰囲気があること、それぞれの語がさまざまな気持ちや考えを訴えていることがわかってきます。

最初は変化がゆっくりすぎて遠回りに感じられるかもしれませんが、気づいた時には本でもドラマでも映画でも、好きなものを好きなように楽しんでいることでしょう。なかには樽が「溢れて」、話したり書いたりをはじめる人も出てくるはずです。

こういった変化は、このサイトのあちこちにある体験談からうかがい知ることができます。ぜひ実践者の生の声を聞いて気持ちを軽くして、やさしいものをたっぷり楽しんでください。最初の一歩は次の2つの記事で案内しています。

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