多読的受験報告 「そふぃ」さんの場合 4

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すでに何度か「多読的受験対策」は非常に単純になると書きました。

すなわち「多読・多聴と過去問」です・・・

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最初にわたしが多読的受験対策を手伝ったのは甥のSくんでした。
そのときは多読と過去問以外に、「速読英単語」でボキャビル、
Grammar in Use で文法問題向けの対策という三本立てだったのですが、
Sくんにあとで聞くと、「速読英単語」も Grammar in Use も結局やめてしまった
とのことでした。

そうすると、その後の受験支援では「直接の単語増強」や「文法問題ドーピング」を
あまり強く言うことはできず、そうやって5年くらいかけて少しずつ単純になっていきました。

で、(現時点の)結論は「多読・多聴(シャドーイング含む)」「過去問」だけに・・・

4章 過去問を解く

本を読むだけでは入試に対応できない。偶然いい点数をとることはあるかもしれないが、入試で求められるのは毎回確実に合格に必要な点数をとることである。やはりそのためには志望校に合った演習が不可欠となる。4章では多読に加えて必要な演習の仕方について書いていく。

 

 

志望校の過去問を解く

9月に入ったら週に1年分、過去問を解いていこう。教学社から 〇〇大の英語25ヵ年 が出版されていない大学は、5~7年分を入手するのが精一杯だろう。塾や予備校に通っている人はもっと古い問題を見つけたらコピーしておくのがよい。受験する大学の数にもよるが、第一志望校は少なくとも10年分を解きたい。

かならず10年分かどうか、それはさまざまな要素で変わってくると思います。
たとえば5年前からすっかり出題傾向が変わった、なんていう大学の場合は、
どう変わったかを確かめてから6年前以前をやるかどうか考えます。
京大の場合は主題傾向がかなり一定しているほうなので、
そふぃさんはずいぶんたくさん過去問をやりました。
週に1年分ずつ解いてきて、わたしがそれを批評しました。

ちなみにぼくは模試と後期試験の問題も合わせれば30年分ぐらいは解いた。しかし、これは京都特有の出題形式による。和訳ではある程度の技術が要求されるからだ。

 

とはいっても、 をさなごのやうに を読んだ時、ヤラれた、と思った。なんてったってこの子の方がぼくより上手く日本語に直せている!本当に負けたって気がした。こんなに多読のチカラはすごいのか、と肌で感じた。こうなると技術ってなに?という気になるが・・・。閑話休題。

 

センター試験の英語で高得点を狙う人はその対策もしなければならない。期間は12月からセンター試験当日までがよい。不安な人や医学部受験生は11月の中旬から始めてもよいだろう。そしてセンター試験後は、また志望校の過去問を解き進める。

 おっと、わたしはセンター試験の対策については何もそふぃさんと相談しません
でしたね。

ぼくが受けた京都大学総合人間学部は、センターは地歴のみが得点となり他の科目で7割程度取っておけば足切りにはならなかった。なので、世界史B以外はセンター対策をしていない。得点は164/200(09年) 154/200(10年) (いずれも筆記のみ)だった。センター試験についてもいろいろ書きたいことはあるが、今回は2次試験と同様に対策が必要であることだけを書いておく。

受験する大学によってセンター試験対策も変わってきそうですが、
そふぃさんの場合をぜひ報告してください!

で、大事な個別試験の過去問について・・・

過去問はどう解くか

初めのうちは辞書を使いたいだけ使い、時間もかけたいだけかける。その上で自分の出来る限りの答案を作る。ただし、かかった時間は大問毎にメモしておく。

これはわたしのSくん以来のやり方で、少しも変わっていませんね。
要するに、最初は辞書と時間は必要なだけ使って解いてみる。
数ヶ月するうちに、次第に辞書も時間も使わなくなる、というわけで、
いままでどの人も(10人くらい?)そういう変化をたどりました。

そして出来上がった答案を信頼できる人に見てもらおう。そこでアドバイスをもらい、家に帰って復習する。この時分からなかった単語は全て辞書で調べよう。読解の時に調べた単語と、復習の時に調べた単語に印を付けておく。ぼくは前者を○、後者を△で印を付けていた。これが直前期(1~2月)にもう一度復習した時にとても役立つのである。ここでは印を付けて辞書に書いてあることを全体的に読むだけにして、単語帳などは作らない方がよい。ぼくは英和辞典を使った。

 

最初にさかい先生は、回数を重ねていくうちに自然と辞書を引く回数は減り、時間は短縮されていく、と言った。この時はさかい先生を信じていたので、本当にそうなるのか?などと悩んだりはしなかった。その分絵本をたくさん読み、過去問をじっくり解いた。自分ができることを着実にこなしていった。

 

初めの数回は制限時間120分の京都の問題に3時間半から4時間かかった。しかも辞書を引きたいだけ引いたのにもかかわらず、出来はイマイチだった。この時辞書はこんなにも役に立たないのかと思った。というよりも、たとえ部分和訳であっても、文章全体で筆者が何を言いたいのかが分からなければ上手く訳すことができないことを学んだ。

 ↑ こういうことをよく一人で学んだものだと思います。(わたしは言った覚えはない)
そふぃさんはこれまでわたしが手伝った受験生の中ではとくに「自分を振り返り、
考える」人でしたね。そこでこれからの受験生の多読支援をお願いしたわけです。

甥のSくんも頼めばやってくれそうですが、Sくんは自分のやったことをどういう風に
伝えたらいいか、戸惑うのではないかな? 最初から多読中心だったので、
学校英語だけで受験に臨んだ人がどういう風に困難を感じるのか、想像できない
のではないかと思います。(それを最近のことばで「天然」というのですか?)

では、どうすれば文章全体で筆者が何を言いたいのかを掴めるようになるのか。第一に細部に囚われないことが大切。

 

この単語が分からない、どうしよ~。

この文の意味がイマイチ理解できない。もう一度前の文から読み直そう。

 

自分は多読三原則がしっかり身に付いているからこんな事はする気にもならない、と思っていても実際に問題を解くとやってしまう。意識的な注意が必要だろう。ここで重要なのが 分からない所をとばす という多読で身に付けたチカラだ。一文一文で何を言っているのかを探るのではなく、パラグラフごとや1つの文章全体で何が言いたいのかを理解しようとした方がいい。これについては5章で多読の真髄を見せる。

 次回の記事を楽しみにしてください!

第二にやさしい言葉に注目する。これはぼくの経験だが、筆者の主張は案外簡単な語であることが多い。これを逃さず やさしいことばをたっぷり吸収すること 連載第二回 多読的精読篇 (再々掲) のように深く理解しよう。言うまでもなく、これはピンク~黄色レベルの本をたくさん読んで初めてできるのである。

↑ 1章でそふぃさんが強調していた点です。 

第三に志望校の出題傾向を知る。過去問を10年ぐらいやれば大体の傾向は掴める。これが掴めれば、自分が次にすることは自ずと見えてくるだろう。

 

 

入試問題の話題を知る

毎年6月頃に旺文社から 20△△年 全国大学入試問題正解 英語(国公立大編) が出版されている(私立大編もある)。前年の入試問題を集めたものであり、ここから近年の大学入試で話題となっていることを知ることができる。

 

さかい先生にこの本を買って、解答の全訳を読むことをすすめられた。英文の話題を知るだけなら英語で実際に読むより日本語で読んだ方が早いからだ。しかし、ぼくの場合はあまり効果がなかった。というのも、新聞は毎日読んでいたし、前年に本をたくさん読んだので(受験英語に限っては)知識にあまり不足は感じなかったからだ。しかも全訳の文章は読みづらい。学校英語式の訳になっているためだ。ただ、知識に不足を感じる人や受験英語で話題となることがイマイチつかめていない人は、一度試してみるのもよいだろう。

この「最新の入試問題の全訳だけを読む」というのは、意外に思う人もいるでしょうね。
けれども、

  大学の英語の先生がどんなことに関心を持ち、

  そういう話題はどんな論理の組み立てで論じられ、

  そういう話題にはどんな語や表現がよく使われるか、

それは間違いなくしっかり知っておいた方がいいことだと思われます。
たくさん読んでそうした話題の論説文になれるには日本語で読むのが早い!

また、ひとわたり最近の入試長文問題を日本語で読んだあとは、今度は
おなじ文章を英語で読むことを勧めました。単語集で「語彙増強」を計るよりも
(意味と構造のある文章を読むので)、頭に残りやすいはず、というわけです。

でも、そふぃさんはそうした話題にはすでに知識があったらしく、
しかも「全訳の日本語がひどい」と感じたそうで、わたしのドーピング作戦は
あまり意味はなかったようです。

さて、夜が遅くなりました。
あしたは大田桜台高校で山形から来る人たち、あちこちから来る人たちと
長く楽しい時間が予定されているので、ここまでにします。

次回、第5章をお楽しみに!