豊田高専の西澤さんの貴重な蓄積と分析を前便で紹介しました。
では、多読とTOEICの関係については結論が出ようとしているのか?
いや、いや、ことばのことはそうは問屋が卸さない・・・
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豊田高専の例は日本でおそらくもっともサンプル数の多い「多読とTOEIC」研究
でしょう。
そこで、豊田高専の例を大きくはずれる二つの方向について書いておきましょう。
まだまだわからないことは山のようにある・・・
というより、どこが山なのか、谷なのか、おおざっぱな地形さえわかっていない
状況です。
わかっているのは、多読とTOEICの関係の幅の広さだけです。
たとえば、一方には、豊田高専の例よりもはるかにたくさん読んでいるのに
TOEICの点数にあまり影響しない例があります。
そしてその反対の極に、豊田高専の例よりもはるかに少ししか読んでいないのに、
TOEICの点数におおきく影響した場合があります。
前者についてはさまざまな掲示板でや英語学習ブログの報告を見てください。
すべてを見たわけではもちろんありませんが、
いくつか見た例から結論を急ぐとすれば
(もちろん急がなくていいのですよ、まだ結論は出ていないのです。
ただ、相矛盾した二つの方向の、可能な結論の一方として
「結論」を出してしまうと)
多読はTOEICにほとんど影響を与えない・・・
(というよりも、多読する時間で直接的なドーピングをいっぱいやった方が、
点数は上がるかもしれない、という意味では「多読はTOEICの邪魔」になる!)
これについてはみなさんがそれぞれに探索してください。
以下には、それとは反対の極にある「結論」を書きます。
たとえばよくこのブログに登場する H くんです。(Yくんもいますが、
Yくんについてはまたいつか、ということで、きょうは H くんの場合だけ。)
H くんは非常に少ない量の多読で非常に大きく点数が変化した例です。
きのう「だれでも多読サークル」のあとで何人かの多読仲間と夕飯を食べに行って、
そこで判明したことを交えて、事実だけを・・・
* H くんのセンター試験の点数は100点ちょっと。
* 多読を酒井クラスで都合3年2ヶ月やった。
* 多読クラス開始1年後(1年生の1月)に受けたTOEICの点数は 320点
* その後2年2ヶ月後のTOEICの点数は 640点
(2年2ヶ月の間に半年のブランクがあります。)
* その間読んだ本は1冊1000語を越えない絵本ばかり。
* 冊数はおそらく300冊から400冊。(Hくんは記録をちゃんと取っていない!)
* 読了語数は推定ですが、1冊平均500語とすると、15万語か20万語くらい
* 「さかいさんの言う通り、日本語にしない、がんばらない、というのをやっただけ」
だと本人は言っています。
なお、わたしは授業では語数のことも、レベルのことも、冊数のことも
ほとんど言いません。記録用紙は配りますが、タイトルと読了日はかならず
書いてもらいますが、それ以外は好きにさせています。
そのため、電通大の学生は100万語という数字を聞いたことがありません。
きのうも社会人の多読仲間から「100万語を越えた人がたくさんいる」と聞いて、
H くんは 「そんなに読むんですか?」と目を丸くしていました。
ここから暫定的に得られる結論は、きのう中華料理店で丸いテーブルを囲んで
出た結論ですが、
「質が関係しているのでは?」
ということです。
困ったものです、多読にとって・・・
せっかく「どう読んでいるか」「正しく読めているか」なんて考えなくていいから
(つまり 質 はいいから)
量を読みましょう! と言ってきたのに、質が関係あるとしたら、
いろいろ考え直さなきゃいけないことが出てきます。
(この場合の 質 は 「正しく読む」「精読」 の 質 ではありません!
むしろ 「多読的質」 とでもいうか、「をさなごのやうに」楽しむという意味の
質 に近いかもしれません。「えどもん」さんがそういう方向で H くんに質問を
していましたが、わたしはまだわからないと思っています。
ただ、H くんが最初のうちの授業で非常に「わがままな」読者に見えていたことは
たしかです。けれどもそれがどの程度「をさなごのやうに」と関係あるのか、
それはあまり関係なさそうな気もします。)
たとえばきのうの中華料理店でも出た 2年2ヶ月で300冊か400冊という、
ゆっくりペースがよかったのでは? なんていう観点も、実に興味ありますね。
このブログで言うと、「中断=停滞=熟成」というやつですね。
ま、しかしこの先はあしたの Y くんの話と一緒に、考えましょう。
それにしても、1000語以下の絵本ばかり300冊か400冊読んでTOEICの
点数が320点も上がるなら、こんなうまい話はありません。
西澤さんの蓄積では 100万語で50点の上昇ということでした。
その比率をそのまま H くんに当てはめると、
H くんの 15万語(あるいは20万語)は400万語から500万語に相当する?!?!
そんなに大きな量の違いを呼ぶ質の違いなんてあるものでしょうか?
それとも、わたしはなにか大きなことを見落としているのでしょうか?
H くんの読み方について、来年3月まで、いろいろ聞き出します。
それに H くんはわたしが受験料を出して、この秋に3度目のTOEIC受験をします。
その結果はどうなるのか? 楽しみですね!
といっても、人間の頭の中がそう簡単にわかるとは思えない・・・
やっぱり 「わからん!」ということになるかもしれません。
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