札幌のAちゃんのこと・・・ (まえがきを書き換えました)

Pocket

多読している人の顔が輝くのを目撃することがよくあります。
教室であれ、インターネット上であれ、こんなに rewarding な瞬間はありません。

学生の顔が輝く瞬間は多読クラスをはじめて、はじめて経験したことで、
わたしのそれまでの授業ではそういう「劇的な瞬間」は見たことがありませんでした。

札幌のある英語教室から、生徒が輝く瞬間の報告が届きました・・・

***********************************

札幌のNKです。
 
いつも当スクールの『多読Club』のお悩みに素早くお答えいただきありがとうございます。
帯広での講演会以来酒井先生を身近に感じることができ一人で指導を続けている今とても心強いです。

この3月うかがった帯広の講演会で、NKさんは札幌から参加してくださいました。
(「Chikako」さん、みなさん、ありがとー!)

今回は3月の講演会後のお食事会でお話しさせていただいた「Aちゃんのこと」を改めてお伝えしたくメールしました。
その時お伝えしていない4月からの様子も合わせての報告です。
お時間のあるときにでも読んでいただけたら嬉しいです。

多読支援に「はまった」先生はすぐにわかります。
「こんな子がいたんですよ!」と報告してくれる先生の顔が輝くのです。
こどもの顔が輝く瞬間というのは強烈な麻薬のようなもので、
一度味わったら、ほかの授業の形はとてもやる気がしなくなります。
そういうこどもたちに「試験」なんかしたくなくなります。
どうしてもしなければならない場合は実は結構多くて、
そういうときは涙を呑んで、ということに・・・

私の所属するLittle Tree English Schoolには約80人の子供たちが英語を習いに来ています。
多読の指導は2008年1月から始めたのですが、何しろすべてが手探り状態で、はたして継続していけるのか確信が持てず、最初は書店にある無料の多読手帳を配り、スクールにある本をかき集めてスタートしました。
始めたきっかけも「樽にお水を貯めるため」というよりは、一回50分のレッスンの中でReadingに割く時間がほとんど取れなかったため、このクラブで補おうという気持の方が強かったと思います。
 
当スクールの『多読Club』は今のところ小学4年生以上の希望者だけがクラブ活動のように参加できるシステムなのですが、その第一回目からいつも私のそばにいてくれたのが現在中学一年生のAちゃんでした。

多読授業をはじめるコツは、とにかく「先生自身がやさしい絵本をたくさん読むこと、
そして、ささやかにはじめること」です。NKさんの教室ではその点、ささやかな、
よいスタートを切ったようですね。

Aちゃんは数年間会話のクラスをとっていたのですが、なにしろ口数が少なく感情をあまり外に出さないので、担当する先生たちは「Aちゃんはレッスンを楽しんでいるのだろうか?これまで習ってきて何ができるようになっているんだろうか?」と頭を抱えていました。
そこでみんなに紛れて自分の得意な部分から英語力を伸ばしていける「BBカードクラス」に変更したら良いのでは?ということになり、小5の’08秋からはBBカードのクラスに変更することにしたのでした。

児童英語教室にはさまざまな「流派」があるようですが、
その中では BBカード を使ったやり方はどうも多読と相性がよいようですね。
BBカードをはじめた難波さんとも何度かお会いしていますが、
「多読が広がって、わたしが「いい加減に」と言ってきたことがやっとみなさん
 わかってくれるようになった」と喜んでくださいました。

しかし、楽しそうにしているとはいえ、元気で反応の良い子がどんどん答えてしまう雰囲気の中にAちゃんは完全に紛れてしまい、おまけに読み書きの力の差が顕著に表れる高学年になると、そちらの方も苦手な子のグループの方に入ってしまう、ということが発覚したのでした。
 
一方でAちゃんは、BBカードよりも先に私と一緒に多読を始めていて、今回添付させていただいたポスターを見ていただくとわかるように’08年度の「100万語多読キャンペーン」に応募した10名のうちの一人でもあったのです。私の中でその時はこれがのちに大きな実を結ぶことになる、という実感がなく、もう一人同じようなタイプのTちゃんと合わせて、「普段おとなしい子も内に秘めた熱いものを持っていて目標を確実に達成できるんだ!『多読』を一緒に始めていなければ私も本人達もそれに気付かなかったかもしれない。多読万歳!」と思い、この喜びを親御さん達にお伝えし、頑張った本人たちを心から褒めてあげたのでした。

…と、ここまでが3月に先生にお伝えした内容かと思います。
「英会話の世界で普段目立たない生徒たちが多読を始めて輝くことができる!」これは私にとって大きな発見であり感動でもありました。

NKさんにお知らせしておこう!

岩波書店から出ている「ムギと王さま」というエリノア・ファージョンの短編集に、
「サン・フェアリー・アン」というお話があります。
このお話もこどもの顔が輝く瞬間を描いています。ぜひ読んでみてください!

現在多読Clubは3年目に突入しました。Aちゃんも今年度は100冊の目標を10万語に切り替えてみるそうです(彼女は現在冊数、語数共にとっくに私を超えています。指導者として情けない!けど嬉しい。私も今年は10万語が目標です(笑)。
今では購入する本もAちゃんに相談しています。部長さんといってもよいほどクラブの中でAちゃんの存在は大きいです。

そして時は4月となり、Aちゃんも中学一年生になりました。
レッスンで話す内容にも変化が出てきて学校英語やテストの話にもなります。
ある日「これが中学1年で習う英語だよ!ちょっとみんなでやってみようか?」と、英検5級の問題を渡しみんなで問題をシャドーイングすることにしにました。
すると…読んでいるのです!大きな声でAちゃんが!
もちろん「もう中学生になったんだし成長したのだ」と言ってしまえばそれまでですが、私は完全に『多読』のおかげだと思っています。読める!読んでみたい!という自信がついたんだと思います。
物静かな雰囲気は昔のままですが、笑顔で抑揚をつけて英文を読んでいるAちゃんはまぶしかったです。
確実にAちゃんの中の何かが変わったんですね。しかもクラスの中でAちゃんだけが全問正解でした!急に理解度もアップした、そんな印象を受けました。
リスニングはもちろんのこと、これからライティングやスピーキングでも彼女自身の中から英語があふれ出てくる日が来るのは決して遠くない気がします。

なんとも言えませんね。
いつかどうしても、Aちゃんに会いたいです。 

長くなってしまってすいません。わかりにくいところもあったかと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。
これからも指導者として決して焦らず、Aちゃんを始めとする多読Clubのメンバーを見守りながら一緒に歩んでいこうと思います。
 
これからも先生のお時間のあるときに、私の新しい発見や多読多聴に関する質問を聞いてください。
そうぞ宜しくお願いいたします。
 
Little Tree English School 
NK

P.S.シャドーイングってまだ自分の勉強法が見つかっていない中学1年生のテスト対策にもピッタリですね。

あ、そうかもしれません!
わたしはいままで中学生高校生の定期試験対策には試験範囲の10回音読を
進めてきましたが、シャドーイングでもいいかもしれませんね!

NKさん、ありがとうございました。
これからもどんな小さな発見でも、どんな大きな質問でも、お寄せください。
楽しみにしています・・・

こどもたちと一緒に、Happy reading and listening!