大学の多読クラスには1冊も本を読んでいない人がいます。
以前にも登場した M くんです。
M くんに英語歴を書いてもらってあったので、あらためてご紹介します。
「村のビデオ屋さん」が建つので、ちょうどよい機会と、再度・・・
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かなりの長文ですが、多読的鑑賞そのもので大学受験もなんとかなったという
「生の声」として、じっくりお読みください。
圧巻は終わり近くです。
なんと試験10日前に多読的鑑賞(とは本人は思っていないでしょうが)から
多読に一気に変えて、うまく行ってしまったこと!
映画と英語
学籍番号:???????
氏名:M
これからを主に映画を通して自分が英語を習得した経緯や方法を記します。
始めに私の今までの英語の学習状況は、小学校6年の後期から半年間塾で英語を習い、中学時代は真面目に授業を受けてきました。しかし、高校に入るとreadingの授業は2年生になってから聞かなくなり、文法の授業は3年間聞くだけで頭にさほど入ってない状態でした。
また、私は昔からよくテレビで映画を観ていて、高校1年生の時からDVDをレンタルしてたくさん観るようになりました。その頃はまだ日本語吹き替えで観ていましたが、高校2年の初めに英語音声・日本語字幕で観るようになり、2年生の夏ごろには映画のサウンドトラックの影響でアメリカのHip-Hopを聴くようになりました。(2005年200本)
高校3年生の途中から夜眠れないときはベッドの中でその日の出来事を英語で振り返り、頭の中で日記をつけるようなことをしていました。これは毎日やろうとせず、眠れない時に行っていました。長文の場合もあれば箇条書きのような場合もあり、わからない単語や忘れた文法があっても放置して次の日それを覚えていたら調べる、を繰り返していました。浪人中もよくやっていましたが、今では眠たくなるまで何かをしているのであまりやっていません。
高校3年の同じ頃からHip-Hopを歌えるようにと、歌詞を見ながら聴き日本語訳と照らし合わせて自然に単語を覚えたりもしました。(2006年100本)
高校卒業後、ハリウッドスターが契約しているエージェント会社に英語で「○○のファンです。サインください。」のような手紙を送ったりもしました。結局サインは来なかったが、英語での手紙の書き方や映画の用語などの知識が増えたのでよかったです。また、日本とアメリカでは映画のタイトルが違う時もあるので単語の意味を調べたりして語彙力も少し増えました。この頃からアメリカ英語とイギリス英語の違いを感じるようになりました。
浪人中には映画を観ていると徐々に単語や短いフレーズが聞こえてくるようになり、少しだけ英語の音声にも意識するようになりました。その年の8月末にHip-Hopを聴いていると今までは理解しようとすると英語で聞いて頭の中で翻訳していたのに、自然と英語を英語のままで理解できるようになりました。これを用いて頭の中で訳しながら考えていたリスニングを英語のままでやろうとしましたが、その事に意識をおきすぎて逆に上手くいかなかったので[英語のまま]というやり方はしばらく放置することにしました。しかし、振り返ってみれば、その頃から映画を観ていても聞き取れる量が少しずつ増えてきたような気がします。(2007年150本)
浪人して人生2度目のセンター試験を10日前にして英語が120点しか取れていなかったので最後の手段として今まで放棄していた[英語のまま理解]というやり方を用いて予想問題を解いてみると、これまで最後の長文を解く時間(15分ほど)が足りなかったのが20分ほど余るようになり150~160点取れてしまいました。始めは日本語を介入させないことに気を取られがちでしたが、すぐ自然にできるようになり、無駄な行程を省き、英語⇔日本語の翻訳途中でのミスも消えるので正答率も上がりました。ただ、文法の勉強をあまりしなかったのでセンター試験本番は160点弱でした。
・今まで
英語の本文を読む→頭の中で日本語に訳す→内容を日本語で考える→答えの選択肢を英語で読む→日本語に訳す→正しいものを選ぶ
・英語のまま
英語で読んで理解→選択肢を英語で理解→正しいものを選ぶ
大学入学後は以前のように英語を自分で勉強することもなくなったうえ、英語の授業は1週間で2つの計3時間だけなので単語力の低下が進み文法も忘れてしまいました。また、この頃からHip-HopよりもR&Bを聴くようになりました。映画は今まで以上に英語に気を遣うようになり、気になったセリフや文などは英語字幕に変えてその部分を観なおしたりもします。DVDで好きな作品を英語音声・字幕で観たりもしますが、映画を楽しむことの方が優先なので未見の作品を英語のみで観ることはありません。(2008年250本)
今年の春休みにLAへ旅行に行って、英語音声のみの”Friday the 13th”の新作リメイクを映画館で観ると、ジャンルがホラーなのでアメリカ人にしか分からないであろうジョーク以外はほぼ全部理解できました。また、書くときも話すときも直接英語で考えているから時間がかからず、話しかけても伝えたいことは口に出てくるし相手の言っている事も大体は理解できました。中には分かりやすいように単語を選んでゆっくり話してくれた人もいたと思いますが旅行するだけなら英語力は問題ないことが実感できました。実際、中学校レベルの文法に大学入試で覚えたであろう単語力があれば知識としては十分だと思います。
このように全ては映画が好きというところから始まっているので興味のある人には苦労せず身につくので効果的かもしれません。ちなみに鑑賞作品数の7割は映画館・DVDなどの英語音声、3割はTVでの吹き替え放送で、複数回観た作品も本数に含んでいます。
うごいでしょう? 「カナダのお母さん」だけではないわけです。M くん、ありがとう!
授業が終わったので、わたしは M くんがLAで買ってきた(「ロス」ではないところが
かっこいい!)Mad Men というドラマを見ようとしています。
代わりにわたしはノース・ウェスタン大学の先生がすすめてくれた The Wire という
ドラマを彼に貸します。さあて、M くんとわたしと、どっちが楽しめるか?
ところで、M くんは2年間にわたって、わたしの多読クラスでも映画を見続けました。
わたしとしては映像と音声で獲得した英語が読むことにどう反映しているかを
知りたくて、昨年の秋と、先々週と、二度 M くんに本を渡して読んでみて、と
言いました。
M くんは2回ともすぐに寝ました・・・
そして先週、今学期最後の授業があったのですが、なんと M くんは映画の
スクリプトを持ってきて、90分間読んでいました。
これはわたし個人としては感動的な光景でした。
つまり、M くんは、わたしがなぜ本を読んでみて、と言ったのか、察したのでしょう。
それで、普通の本では眠ってしまったので、なんとか眠らずに読めそうな脚本を
持ってきて、それを読もうとしたのです。
いつかM くんが普通の本を普通に読めるようになるといいと願っています。
これからの人生には「読む」ことが大事な場面も出てくるでしょうから・・・
そして、読んで頭の中でさまざまな映像が浮かんで、「本のほうがおもしろい
場合もあるなあ」と思ってくれることを祈っています。
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