第11回「多読支援セミナー」報告 その①

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8月6日、7日の2日間にわたり、第11回多読支援セミナーを開催しました。今年は「多読において『わかる』とは?」をテーマに、89名(日本語61名、英語28名。国外からは17名)のお申し込みがありました。報告第一弾は、日英合同で行われた全体会の様子をお伝えします。

(A)オンライン日本語多読クラブに参加しよう!

報告:katobushi(事務局)

世界の日本語学習者が参加する「日本語多読クラブ」の公開(!)というなんとも大胆な試みでセミナーの幕が開きました。一昨年より隔週で開催しているこのクラブには、これまで約30カ国から延べ300人以上の日本語学習者が参加しています。この日は、アジア、ヨーロッパ、オセアニアなどから52名の日本語学習者が集まり、そこに日本語・英語多読の支援者49名が加わり、総勢107名で行いました。

多読の考え方の説明のあと、やさしい読みもの(広島・宮島に行きましょうお茶をいれましょう!)を画面に映していっしょに読み、多読的な読み方が伝わったところで、初心者・経験者・支援者の3つの部屋に分かれて、それぞれに「無料の読みもの」などのサイトから自由に読んでもらいました。その後、学習者・支援者を含む4、5人のグループに分かれ、読んだ本について語り合いました。

学習者の皆さんの終始楽しげな様子が印象的で、進行の片山智子さん(正会員、東京大学)が読み聞かせをしていると、学習者がいっしょに声を出して読み始める場面も。読み聞かせ中の問いかけにも、元気に答える姿が見られました。支援者の皆さんからは、実際の支援の様子が参考になった、超初級の学習者とのやりとりに戸惑った、などの声が聞かれました。例年のセミナーとは一味違う、貴重な体験となったのではないでしょうか。

(B)「わからないところは飛ばす」を考えるワークショップ

報告:榊 桂子(正会員)

今回は、多読三原則の1つである「わからないところは飛ばす」について考えるワークショップを行いました。
作田奈苗さん(正会員、津田塾大学)の進行で始まり、趣旨説明の後、山岸典子さん(正会員、香蘭女学校)から、改めて「多読」についての‘おさらい’がありました。
「多読は、言葉や文章の理解をブロックのように一つずつ積み上げていく学習ではない。それでは表面の意味しか捉えていないので、とても不安定なタワーができるだけ。そうではなくて、多読はジグゾーパズル。わかるところをつなげて楽しく読んでいるうちにだんだん全体が見えてくる。いろいろな物語の場面や登場人物の気持ちと一体になったダイナミックな言葉の意味が自分の中にたまって、組み合わさって見えてくる、そんなイメージ」
このジグゾーパズルの喩えは、わかりやすく、なるほどと思われた方が多かったのではないでしょうか。
続いて、榊(正会員)が、多読三原則及び日本語多読でのもう一つのルール「やさしいレベルから読む」を足した四つの指針について説明をしました。

いよいよここからワークショップです。
最初のブレイクアウトルームでは、セミナー申込時の事前アンケートの回答をもとに「飛ばす」についての考えや経験を語り合いました。その後、読めない字が混ざった文章を配り、みんなで「飛ばす体験」をしました。2度目のブレイクアウトルームは、それをもとに再度意見交換を行いました。最後に各グループで「飛ばす」意義をまとめてもらい、それを全体で共有しました。
体験を交え、丁寧に意見交換をすることで、「わからないところは飛ばして読む多読」について、ともに探求していく時間となりました。

飛ばすを体験する文章
各グループの話し合いのまとめ
※多読では「わからないところは飛ばす」なぜなら… の形でまとめてもらいました。

(C)マンガで多読:「Langaku」の紹介と多読的な使い方

報告:小川 和子(理事)

読む人を夢中にさせるマンガは、強力な多読素材です。はじめに山岸さんが「マンガは最高の素材!!、その理由に、①読書嫌いでも読みたくなる、②場面と結びついて言葉がスッと入ってくる、③言語/文化の違いを発見する、という3点を挙げられました。続いて、株式会社Mantraの山中武さんから、今年6月にリリースされたアプリ「Langaku」の開発の経緯と特徴、使い方の紹介がありました。「Langaku」はマンガに特化した機械学習(AI)技術を活用し、誰もが知っている人気マンガで英語の多読学習を実現するアプリ(今のところiPhoneのみに対応)です。「ワンピース」「アオハライド」など集英社の人気32作品を3巻まで無料で読むことができます。マンガのコマの一部を日本語表示にすることができるところが大きな特徴で、「英語率」を調整しながら多読できるようになっています。他にも音声読み上げ、スマホでも読みやすい拡大機能、読書記録や多読的な読み方のアドバイスなど、多読に特化した機能が充実しています。英訳された紙のマンガは高価ですが、このアプリの活用でマンガ多読が身近になりそうです。
参加者の反応もよく、「すでに使っている」「Androidでも早く使えるようにしてもらいたい」「海外で使えるとうれしい」など意見、コメントがいろいろ出ました。

Langaku

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報告その②へ続く

(事務局 katobushi)