第11回「多読支援セミナー」報告 その② 日本語分科会

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8月6日、7日の2日間にわたり、第11回多読支援セミナーを開催しました。報告第二弾は、日本語分科会の様子をお伝えします。

(J1)読みもの作成について

報告:纐纈(はなぶさ)憲子(米ノートルダム大/NPO多言語多読)

日本語分科会前半のテーマは「読みもの作成」でした。まず、米国スミス大学の高橋温子さん(準会員)が「学習者主体で創る多読本プロジェクト」について話されました。
スミスでは、初級レベルの学生たちが、グループワークやピアフィードバックを行い、助け合いながら多読本を仕上げていきます。様々な「つながる」ことを考えながら活動を進めるというのが印象的でした。

次は、加藤みゆきさん(準会員)、渡辺 若菜さん、隈井 正三さん他のグループによる「大分発わくわく読みもの」作成のお話でした。
地域を題材にした多読読み物を作る際の、資料収集や校閲などの流れの説明がありました。実際に本作成に携わった2人の方のお話は、修正点や苦労したことなど、具体性に富んでいて興味深かったです。

最後は近藤麻衣子さん(国際交流基金バンコク日本文化センター、準会員)で、国際交流基金クアラルンプール日本文化センターでの教師研修で行った読み物作成の報告でした。リライト研修や多読観察の活動の後、オンラインで作品作りをしたそうです。現在ウェブサイトに計21作品が掲載されていて、国内外の学習者に読まれているとのことでした。

スミス大学の学生作品 JAPANESE TADOKU BOOKS BY STUDENTS
大分発わくわく読みものをつくる会の読みもの
日本語の先生が作った読み物ーマレーシアとブルネイの先生が作りましたー

(J2)実践報告

報告:片山智子(東京大学/NPO多言語多読)

後半は4名の方の多読普及活動、多読授業実践報告がありました。

最初の三浦多佳史さん(国際交流基金パリ日本文化会館、準会員)の発表は、「フランスでの多読活動-Festiponと出前多読サロン-」
まず、中高生の日本語学習者が参加したFestiponについて紹介があり、披露してくださった朗読コンテスト作品には、学習者の「日本語愛」が溢れているようで、思わず微笑んでしまいました。中学校へ出向いて多読を経験してもらう「出前多読」では、2か月で150名の学生が多読を体験したそうで、地道な多読の種蒔きをされているのだと感じました。

続く山口ひとみさん(タイ泰日工業大学、正会員)とディ二さん(インドネシア・リアウ大学)は、それぞれ「タイの大学における多読実践とこれから」「インドネシア・リアウ大学の多読授業実践報告」と題して話されました。山口さんの授業で学生が作った多読本のポップ、リアウ大学の非母語話者の先生方が作成している多読読み物のサイトなど、学習者に多読を楽しんでもらうための様々な工夫が紹介されました。

最後の「学習者主宰の課外活動『読書クラブ』ができるまで」では、ドイツの大学院生のアリヤネさんが、日本語学習者として多読と出会ったあと、大学で「多読クラブ」を立ち上げて精力的に活動している様子を話してくれました。

今回は全て海外での実践で、2名は非母語話者の方の報告でした。多読実践者が自ら支援者として活躍している様子も知ることができ、多読の世界が大きく広がっていることを実感させられる時間でした。

Festipon
UNRI TADOKU
Dokusho Bookclub

(J3)小グループに分かれての語り合い

最初に、この日の発表者に質問をする部屋を設けました。10分程度でしたが、参加者が、それぞれ興味を持った発表者の部屋へ行き、さらに質問をしたりディスカッションをしました。

次のブレイクアウトルームの話し合いは、いくつかのトピックについて語り合う部屋を設けました。トピックは「オンライン日本語多読クラブについて」「多聴多観について」「多読の素材について」「多読授業での学習者の動機付けについて」
トピックをきっかけに、話は日頃の多読支援の悩みなどにも及び、セミナーを締めくくる有意義な時間がもてたようです。

最後に、こぼれ話を一つ。
(J1)で高橋さんのスミス大学の学生作品についての発表があったとき、ある学生作品を読んだ西海岸の南カリフォルニア大学の学生さんが、そのストーリーに刺激されて作詞作曲をしてしまったという話がちらりと出ました。それは、ぜひ聞きたいとお願いし、公開を許可していただきました!
 作詞作曲をした学生さんは、生まれて初めての作詞作曲で、それがしかも日本語。「つながる」が制作のキーワードとのことでしたが、まさにこれは「つながった!」出来事でした。多読のこうした”化学反応”には、いつでもワクワクさせられますね。

▷SFチックなお話「ノック」と歌「ノック」はこちらから。

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報告その③へ続く

(事務局)