約7年前に多読を提案して以来、さまざまな疑問が投げかけられました・・・
辞書も文法も使わずにペーパーバックが読めるようになるのか?
読むだけで話せるようになるのか?
入学試験に合格するのか?
・・・
中でも多かったのは最初の質問でした。そしてそれに対するわたしの答えは「洋書売り場を見ていてください」というものでした。
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つまるところ、人間に人間のことはわかりません。わからないというのは言い過ぎだというなら、言い換えて、人間が人間のことを理屈で理解することはきわめてむずかしいとわたしは考えます。
話が飛びますが、したがって多読の効果も理屈で納得させるのはまず無理でしょう。
(世の中の多読反対論も理屈ではなく、煎じ詰めれば「いままでになかった」
やり方なので、なじめないのでしょう。)
理屈で納得させるのがむずかしいので、わたしは多読を提案した最初のころから、疫学的証明を考えていました。つまり、疫学で利用する統計的な手法しか、人間のやることが人間に及ぼす効果を推測する手立てはないと思うのです。人間のやることにはたくさんの要素が影響していて、どれが(多読が)どの程度「英語力」の向上に寄与するかは、知りようがない!
(これがわたしが試験を信じない一つの理由です。もう一つの大きな理由は
「英語力」がどんなものかわかっていないのに、それを試験ではかること
などできない、というものです。)
ところが疫学的な影響調査には何万何十万人という「サンプル」数と10年20年という期間が必要なようです。「緑茶のカテキンはガンを予防する効果があるか?」といった疑問に疫学的に答えを出す場合などがそうですね。膨大な数の人たちを何年間も追跡調査して、「ガンにかかるかどうか」と「食習慣」の関連性を調べる・・・
多読の効果を見るには何千何万人という人を何年間か追いかけて、「多読と海外経験の相関を見る」といったことを調べる必要があるでしょう。(わたしは4年前にそれをめざして文部科学省の特別な予算を請求してみごとに断られました。)
でも、わたしは多読の疫学的な影響調査の簡易版を考えていました。それが「新宿紀伊国屋南口店の多読用図書売り場を観察する」というものです。
見取り図で説明できるとおもしろいのですが、これはメモなので、
いつかのことにします。ま、とりあえず同店7階洋書売り場を思い出してください。
SSSの掲示板がはじまり、わたしの書いた「快読100万語 ペーパーバックへの道」が出版された直後の多読用図書売り場はカウンターから直線距離にして約15メートルくらい離れたところに、棚板の数で、3段分ほどでした。
それがそれから1年半後くらいだったと思いますが、カウンターからなんと5メートルくらいのところに、棚の数にして3段分くらいが並んだのです! そのあたりはTOEICや英検やTOEFLの対策本が文字通り「幅」をきかせていました。いい場所に移ったのは、多読用図書の人気が出てきたからで、それは多読が実際に効果があると考える人がそれぞれのお財布で証明してくれたと考えたのです。ささやかな疫学的な影響調査結果だと解釈しました。
わたしは胸躍る思いで見ていましたが、その半年後、多読用図書はカウンターから遠いところ、現在はmangaが並べてあるあたり、つまりカウンターから10メートルくらいのところに格下げになりました・・・
でも、その後まもなくまたカウンターから5メートルくらいの、TOEICなどの対策本と並ぶ位置に戻り、現在は棚のかずも、9段分、プラスその前の平台3つにまで拡大しています。
多読の効果をTOEICや英検やTOEFLの点数で測ろうとする人には意外かもしれませんが、わたしは多読が着実に効果を上げている様子をこんな風にして「測って」います。
もちろん、日本各地で多読用図書を置く本屋さんが増えていることも重要な尺度でしょう。Googleで「多読」を検索すると、件数が出てきます。その増え方もよい尺度でしょうね。
みなさんも、ご自分の「英語力」だけでなく、外からの指標を発見してくれませんか。見つかったらぜひご一報を!
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