多読は愛そして多読は待つこと

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「Tsubasa」さんがご自分の児童英語教室の体験を寄せてくれました。
「多読は愛」という意見がつい最近もありましたね。
(志学塾関連でパラオさんが書いていた)
Tsubasaさんの体験談も「なるほど多読は愛だなあ」と照れずに言える報告です。
そして愛は時間をかけて育つ・・・ 読む人もじっくり時間をかけて・・・
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Tsubasaさんの最初の投稿は > > ではじまっています。
> > のないのはわたしの返信内容です。どちらもほぼそのまま。
一部生徒さんの書いた部分を数行程度書き換えました。
じっくり読んで、6年の長さと、そのあいだ待ったTsubasaさんの「愛」を感じてくださると、わたしもうれしい!

Tsubasaさん、よかったね!
さかい@tadoku.orgです。
Tsubasa さんは書きました:
> > 皆様こんにちわ。
> > Tsubasaと申します。
> > 横浜で小さな教室を開いております。
> > 本日は、最近あったとてもうれしいことを報告させていただきたくて
> > 投稿いたしました。
6年も待つこともあるんだね!
おー・・・
多読支援は待つこと、なんて、気楽に言ってきましたが、
ぼくも6年も待ったことはないです。
だつぼーです・・・!
> > こちらでは中学生は3年生の自分の娘とそのお友達のSちゃんのみです。
> > 今回はそのSちゃんについての報告です。
> >
> >
> > 彼女とは私が英語サークルとして活動を始めた6年ほど前からの
> > お付き合いです。二人が4年生くらいからORTを中心に多読を取り入れて
> > 来ました。
> >
> > Sちゃんはレッスン自体はとても楽しんでくれて英語も好きだと
> > 言ってくれていました。、でも、どうにも”文字”が苦手でした。
> > 普段日本語の本もほとんど読むことがなく
> > 漫画さえ読まないという子だったこともあって
> > 英語の絵本にもなかなか興味を示してはくれませんでした。
> > ORTでさえ”読んでいて眠くなる??”という感じでした。
> > (娘は”ORTを読んでいて、いったいどうやったら
> > 眠くなれるんだ?!”とよく言っておりました。。。)
> >
> >
> > あれやこれや簡単で楽しそうな絵本を読み聞かせ。
> > 紹介。貸し出し。精読。。。。様々な試みをしてきましたが
> > どれもこれも反応薄!でした。。。
> > まだろくに読めない幼稚園児や低学年の子供は競うように本を
> > 借りていく中にあって、6年生でとりあえず4級をとる力があっても
> > 彼女が家で本を読んでくることは
> > ほとんどありませんでした。
よくまあ待てましたね。
そして、よくまあ通ったもんだ、Sさんも!
> > 中学に入ると部活で疲れて無理。。。と言う理由で
> > 定期試験の前に何度か勉強に来るのみに
> > なってしまいました。
> > それでも1年生のうちはそれまでの蓄積もあって
> > 大して勉強せずとも良い点をとれていたようですが
> > 2年生になって授業も急に難しくなり不安を感じて来たこと、
> > 部活にもなれ体力がついてきたこともあり
> > ”またレッスンしてください”と
> > 戻ってきてくれました。
これがまずうれしいではないですか・・・
TsubasaさんとSさんの信頼関係ですね。
> > 文法も単語もあやふやになってきていて、
> > 彼女が“学校英語”の遅れを取り戻すにはちょっと
> > 努力が必要でしたが、元々“英語が”好き”ではあったため
> > 与えた課題はもくもくこなして行き、力もついて
> > 行きました。本当はそんな詰め込みの学校英語用のお勉強は
> > させたくなかったのですが、なにせ本を読まない。
> > レッスン中多少多読の時間をとって絵本をおいていても
> > 今一やる気なし。。。集中力なし。。。では
> > ほかに方法がなかったのです。
> > 多読はなんとか読んで15分。。。の日々でした。
> >
> >
> > ところが中2の秋、それでもなんとか英検3級に合格すると彼女は突然
> > こう言い出しました。
> >
> > ”先生、私、多読します!うちでも読んで来ます!”
> >
> >
> >
> > いったいなぜいきなり。。。?!と思いました。
> >
> >
> > 思い当たるのは娘の存在です。
> > 細々とは言え、ずっと多読を続けていた彼女に
> > Sちゃんが一生懸命勉強でがんばっても
> > 英語の成績で追いつくことはありませんでした。、
> > Sちゃんが3級を受かったときには娘は準2級に合格しました。
> > 問題集などにはSちゃんにくらべ非常に不真面目で、
> > レッスン中も、学校の宿題や最低限の課題を終えると
> > (これがまた、Sちゃんに比べると終わるのが早いのです。
> > 正確さは別として。。。)
> > ”もういやだ???。”と言って
> > 問題集をやりつづけるSちゃんの横でのうのうと本を読んでいました。
> >
> >
> >
> > さすがにどう考えてもこれは理不尽だと思ったのでしょう。
> >
> >
> > ”今までもずっと一緒にやってきたのに。。。。なんで??”
> > と、ある日ぼそっと聞いてきました。
> >
> > ”やっぱりね??、本読むとね?、違うんだよ。。。”
> > と答えたと思います。
6年も一緒にやってきた娘さんとSさんをTsubasaさんは
一度も「比べた」ことがなかったのでしょうね。
だから信頼が続いた。
> > 多読の効果やすばらしさには折を触れて話していたのですが
> > いつも“ふ~ん”で終わっていた彼女。が、どうやらその時は
> > 自分なりに“納得”してしまったようなんです。
> >
> > 彼女の”私、多読します!”宣言はそんな会話があって程なくの頃だったと
> > 思います。
> >
> >
> >
> >
> > そしてまた、その頃細ぼぞながらもレッスン中読んでもらっていた
> > ”Foundation Reading Library”がだんだん楽に読めるようになり、
> > “これはなんだか面白い。。と言ってくれるようになりました。。
> > あちらのお姉さんお兄さんの世界をちょっとのぞけるこのシリーズが
> > 大人の階段を昇り始めた彼女にはぐっとくるものがあったようです。
> > ”ORTはいまいちなんだ。。。
> > かわいいのとか冒険とかよりFRLはおもしろいの”と言って
> > ”眠くならずに”読み進めることができるようになりました。
> > 15分しかもたなかった多読時間がだんだん延び、現在は
> > リスニングの時間も合わせ45分をレッスン中にとっています。
> > 家でも読んでくるようになりました。
> > 2年生終了までに全巻制覇。
> >
> >
> > 文法をかなりやった上で本を読むようになったからでしょうか、
> > “学校英語の成績”にはいい影響が出ました。
> > 2年の最後で通知表にに”5”がつくとよほどうれしかったのか、
> > 娘のところに”5だよ!5!”と、飛びついてきたそうです。
わー! うれしそうな様子が目に浮かびます・・・
> > そしてまたこの春、ラッキーなことに
> > 中学校の選択授業に”本を読む”というものが入りました。
> > 自分で好きなものを持ってきていいそうです。
> > 彼女達二人は喜んでこの授業を選択しました。
> > そして彼女は
> > ”先生、本、貸して??、どれがいいかな??”と相談してきてくれました。
> >
> > (この授業、読むのはいいけど、解らない単語を書き出せと言うのが
> > 問題。。。。しかたないので、読み通した後
> > 時間終了10分前に、気になった単語だけ書き出しなさいと指示してます)
> >
> >
> > お勧めしたのは” Corgi Pups “のシリーズから
> > Jaqueline  Wilsonの  ”The Monster Story-Telling”です。
> > ”FRLはみんな読んじゃった。。。。”
> > ”みんなの手前、あんまり絵本っぽいのは読みたくない”
> > という彼女のリクエストに答えたくて薦めてみました。
> >
> > PERなどGRの簡単なものでもと思いましたが、今一の反応。
> > ” Corgi Pups“ならペーパーバックで、
> > 子供向けとはあれ、ちょっとかっこよく見えるし、
> > Jaqueline  Wilsonはいつか是非読んでみてほしいと思っていた
> > 作家です。挿絵もあのNick Sharrattのおしゃれなもの。
> > 彼女も”いいかも”と言って借りていってくれました。
> >
> >
> >
> >
> > そして次の週
> > ”先生、1時間で読んじゃった!おもしろかった!”と言ってきてくれたのです。
> > ”他には何がある??”と言うことで、そのシリーズをいくつか続けたあと、
> > ” Cam Jansenはどう?かわいい推理ものだよ。”と勧めると
> > 次の週
> > ”読めた!先生、結構いける!”と、これまた好反応。
> >
> >
> > じゃあ、こんなのは?と、次は逆にかなり絵本らしきものを読ませてみました。
> > とってもシュールな”Black Lagoon”のシリーズ。
> > これにはまた相当受けてくれ、
> > ”おもしろいね?、もっといろいろ読んでみたい!”と、言ってくれたのです。
なんというか、支援者冥利に尽きる展開!
こういうことがあるんですね、しみじみです・・・
> > ”先日、彼女が自分のぶログに
> > ”英語の本はおもしろいですよ”と
> > 書いてくれました。”
katakuriさんのいうように、うれしい言葉だ!

katakuriさんは、このやりとりのあったメーリング・リストの一員で、Tsubasaさんの報告に返信をくださいました。

> > ”英語の本はおもしろいですよ”
> >
> >
> > この一行を読んだとき、もう、なんというか、胸がいっぱいになってしまいました。
> > この一言を聞くために、私は今まで彼女と時間を共にしてきたんだ???って。。。
そう思いますよ。
よくまあ6年も待った・・・
ぼくも待ちます。
(大学生はたいてい4年でいなくなるのですが、
 大学院に行く連中は6年くらいになる)
> > 最近は昔読み聞かせしてあげたことがある絵本なんかもさりげなく
> > 机に出しておきます。すると、手を出してくれるようになりました。
> > (昔読んだことはあまり記憶していないようです。)また、そうしたものの中から
> > “ほんわり”系の物を読んでは“なんかいいね?”と言ってくれるようになりました。
> > この数ヶ月で、すごい進歩で、すごい変化です。
え? これ全部ここ数ヶ月ですか?
通知表が5になったのは3月?
> > 多読は、本当は、簡単なものから少しづつ読んで
> > 子供達のように自然に覚えて。。。がやっぱり理想だと思っています。
> > でも、誰しもがその道順を行ってくれるとは限りません。
> > それはこれまでの彼女を見てきてつくづく思っていたことです。
> > でも、だからと言ってそれで終わりではないと言うことも良く分かりました。
この最後の1行が重いです。
こども式の意味をもう一度考え直します。
> > その人が置かれた環境、性格、個人の能力発達の度合いで、みんなそれぞれ
> > 違うのは当たり前です。だから、多読の“能力”のみならず
> > “興味”が育つのも個人差があるのは当然のことなのでしょう。
> >
> >
> > 特に思春期でいろいろな事を感じ、考え、思考能力の発達も
> > 変化著しい時にはそれまで面白いと思えなかったものが面白く見えたり、
> > 感動できなかったものが感動できるようになったりすることがあるのかもしれません。
> > また、人間、”やろう!”と思ったときには同じものも
> > まったく違って見えたりすることがあるのかもしれません。
それはわかっていたつもりなんですが・・・
> > Sちゃんには時間がかかりました。
> > 彼女から“本は楽しい”を聞くまでに6年かかりました。
> > 結構単語や文法を詰め込んでしまいました。
> > 学校で5をとったって、英語の力にはあんまり関係ない。
> > むしろそれが邪魔になることもある。
> > それは十分承知しています。
> >
> >
> > でも、それでもいいですよね、酒井先生?!
そりゃ、いいですよ。
Tsubasaさんは、ぼくなんか足元にも及ばないほど立派に
支援なさったのだ。ぼくに「いいですよね」なんて、
いらないですよ。
> > だって、“英語好き!”って言ってもらえてて(体育の次ですが。。。)、
> > 先日私が“試験前だから今日は多読はやめにして
> > 問題集だけでドーピングにしとこっか??“と言ったら
> > 二人に“ぎろっ”にらまれ
> > “読む気満々で来たのに?!”って言ってもらえる
> > ようになったんですから!!!
> >
> >
> > “よしっ”っとしてもらえますよね???
> > これからいろいろ、たくさん読んでいってもらえるなら、
> > もう、順番なんてなんでもいいですよね?!
順番なんて、どーでもいいです・・・
試験直前に「読む気満々で」来るなんて、まったく多読冥利(?)に
尽きます。「よしっ!」ですよ!!
> > と、いうわけで、Sちゃんは
> > やっと一歩踏み出せました。
> > これからはこれをどう続けていってもらえるかですね。
> > 私自身もあれこれ知恵を絞り、本を読み、集め
> > 彼女達にはさりげなくアドバイスできるよう勤めて行きたいと
> > 思っております。そのためにも今後とも皆様と共に、
> > より良い支援研究の道を歩ませいただきたいと
> > 心から願っております。
まだね、多読ははじまったばかりです。
いまでも毎週のように新しい発見が報告されています。
ぼくは最初に多読支援をはじめたけれど、とっくの昔に
みなさんに教えてもらう方に回っています。
(Kiccoさんの児童英語勉強会ではたしか3回目の集まりから
 ぼくは聞き役に回りました。)
> > 独りよがりの長???い報告を載せてしまい、申し訳ありませんでした。
> > でも、“一個人とはいえ、6年分の感激が詰まっている”と思ってご容赦いただけましたら
> > 大変ありがたいです。
6年分ですからね、いくら長くてもいいですよ。
実際ぼくはこの報告を何度でも読み返すと思います。
(ブログに載せたいけれど、だめでしょうねえ・・・?)
> > 何かありましたら(できれば短く。。。)是非またご報告させていただきたいと思っています。
はい、もちろん!
どんなに長くても歓迎です!!
(これはSSSの掲示板の初期からみなさんに言い続けていることですが)
> > Happy Reading!
> > Tsubasa
はい、Tsubasaさんも、Sさんと、娘さんと、生徒のみなさんと、
Happy reading!!

読んでくださって、ありがとー!
一緒に、Happy reading!!