内容語と機能語 続きの続き(だったとおもー)

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YYYさんは中学2年生です。多読ではたいていの人より経験が深いでしょう。「NEO」さんのメールでも多読と学校英語の折り合いが話題になりましたが、YYYさんも中学校の英語の奇妙さには閉校している様子。そのYYYさんが英検2級を受けました・・・
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このところたしか二度ほど「内容語と機能語」という話題で書きました。機能語はいわゆる基本語でしょうか。そして内容語は受験などに必要な高度な語でしょうかね。
奥歯に物の挟まったような物言いは、もちろんわたしは基本とか、高度とかいうラベルに信頼を置いていないからですが、そういう言葉を使った方が話に入りやすい場合はあります。そこで、ついでに「ラテン系の言葉」と「ゲルマン系の言葉」という言い方も投げ込んでしまいましょうか。
英語と日本語はよく似たところがあって、それはどちらも大陸の端からすこし離れたところにあって、大陸文明の影響を受けて言葉がまぜこぜになっているところです。
日本語はおそらく「大和言葉」と呼んでよさそうな地元の言葉に、大陸から「中国語」が重なりました。
対する英語は(日本語よりも複雑ですが)「ゲルマン系」(北ヨーロッパ系といってもいいです。フランスの上)の土台に、大陸から「ラテン系」の言葉が重なりました。
その結果日本語は音読みと訓読みが入り乱れて込み入った言葉になっています。英語もそっくりです。
違うところは日本では明治になって欧米の言葉が大量に入ってきて、「さよなら英文法!」に書いたように明治以前と以後では断絶に近いほど様相が変わってしまいました。現代の若者には15年くらい前、つまり明治初期や江戸末期以前の日本文学はとても読めないでしょう。
英語にはそうした劇的な変化は最近はありませんでした。そこで、現代の小説が楽しめれば、200年以上前のJane Austenの小説などもさしたる苦労なく読めます。つまり、日本語の大和言葉にあたる土台がいまもしっかり残っているわけですね。
話を本筋に戻します。
おおざっぱな言い方ですが、英語のゲルマン系の言葉は主に1音節で、短くて、毎日非常によく使われます。runとか、skyとか、eatとか、houseとか、cowといった言葉ですね。
ラテン系の言葉は2音節以上のむずかしい言葉で、−ion や −ment なんていう終わり方の語はほとんどすべてフランスを通じて英語に入ってきたラテン系の「外来語」です。
機能語はほとんどゲルマン系の短い言葉(in on at is be) ですが、内容語はゲルマン系の言葉(run sky time などなど)とラテン系の言葉(return constitution view などなど)がまざっています。
で、本筋の本筋・・・
YYYさんは英検2級受験準備のために、「2008年版 英検2級全問題集」というのをやりました。その34ページに Protecting Canada’s Forests という短文があります。以下に、YYYさんがわからなかった語を並べます。ほとんどがラテン系の言葉です。
variety
communities
native
extremely
resources
citizens
divided
preserve
precious
resources
framework
environmental
organizations
governments
energy
rather
certain
preserve
certain
based
habitats
rarely
ecological
preserved
absorbing
carbon
dioxide
producing
value
environmental
combining
conservation
economic
全部で463語の文章の中で、長くて重要?なラテン系の言葉33語を知らなかったことになります。
これを見たある高校の英語の先生Sさんは、「これだけ知らなかったら、2級受けるのを止めさせますね」と言いました。
常識的にはそうでしょう。全34行に34個以上も(YYYさんはわからない語にラインマーカーで印をつけたのですが、同じ語でつけていない場合もある・・・)わからない語があって、それでも2級に合格してしまう・・・ これも多読の不思議、つまりこれまでの「英語ができる、できない」という枠をはみ出した好例といえるでしょうね。
最後に一言、ご注意を!
ここまで読むとなんだか整然とした論証のように読めるかもしれませんが、とんでもありません。肝心要の「わからない」という語をYYYさんがどう理解して印をつけたのか、それはわたしの想像を超えます。
みなさんはおそらく「訳語がすぐに思い浮かばない」という意味で「わからない」を解釈したのではありませんか? YYYさんは多読で英語を獲得してきたので、そんな風に解釈していないかもしれません。
というわけで、これは多読は今までの常識を破る「可能性がある」という例だと思ってください。こんな例がいくつもいくつも集まってくると、すこしずつはっきりしたことがいえるようになりますが、いまのところは、「へー、おもしろいことがあるもんだ!」くらいに受け止めてくださいな。
では!