みなさん、注目! 物語の力、ここにあり!!

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「物語の力」をばしっと感じさせるお便りです。「由里子」さんが4歳のパピーくんの様子を知らせてくださいました。
これを読んで、小学校のころから試験が得意で、
いつもほとんど満点を取っていた自分が情けなくなりました・・・

酒井先生、こんばんは。
最近、もうすぐ4歳の息子の「日本語力」が驚くほど豊かになってきました。「日本語」が溢れてくるのは当たり前?かもしれないのですが、私は、先生の多読指導三原則(教えない、テストしない、押し付けない)だけは守って和書、洋書とも子どもとたくさん楽しんできました。生来言葉が遅く、お喋り上手でもなかった息子に、間違いなく、それのひとつの成果が現れたと思いました。
下の話をオフ会でしたところ、dr.patchさんが酒井先生にお話したら?と勧めて下さったので、ご報告させていただきます。
彼が小1程度の国語の問題をやったときの話です。

ここは多少疑問を感じないではありません。なんで「小1程度の国語の問題をやった」のでしょうね? まだ○U○O○に通っているのかな?

適切な述語を選択肢から選びなさい、という問題。
(以下ブログより抜粋)***
問題;
1. ねずみがあなに____
2. 本が____
3. ねこがいすの上で____
4. 五だいのくるまがいっせいに____      
選択肢は、「ある」・「かくれる」・「ねる」・「うごく」
(それぞれの述語を誘導させるべく挿絵があります)
正解は、
1. (ねずみがあなに)かくれる。
2. (本が)ある。
3. (ねこがいすの上で)ねる。
4. (五だいのくるまがいっせいに)はしる。

幼いころのわたしだったら、3秒で正解して、満点をもらって得意になっていたでしょうね。

ですが、パピーの答えは
1. (ねずみがあなに)はいって、びいるをのむ。
2. (本が)としょかんにいっぱいあるから、かりにいこう!ちゃんとかたずけてね。
3. (ねこがいすの上で)たって、きっちんのおかずをのぞく。
(パピーがいつもやっていること!)
4. (五だいのくるまがいっせいに)、じこにあう。けいさつがくる。
でした。解答欄からはみ出した字がプリント一面に躍りまくっています。

いいなあ! ここがね、ほんとにいい!! こういうことのために多読をすすめてきたんだ!っていいたくなる。

私はとても、×をつける気にはなれませんでした。
学校のテストなら、「選択肢を無視している上に余計なことを書いている」で×になるでしょう。かかった時間もすごかった。
でも、随分と言葉の豊かな子になったものだな、と少し感動したのです。
正解である例文の、
・本がある
だけでは、パピーにとっては、まったく文章になっていないのでしょう。
パピーの作った文章も完璧に正しい日本語ではありませんが、溢れ出てくる何かを感じました。

そうだと思うな。正解の「本がある」では、「まったく文章になっていない」のでしょうね。文とは「物語の一部でなければならない」とすると「本がある」という文は不自然だし、そこから物語が現れてこないのでしょうね。正しいかどうかはどうでもいいのです。「溢れ出してくる何か」があるところがすごい!その何かが物語だと思うのです。そのまま「それで?」とうながしたら、どんどんお話が出てきそうですよね。あ、そんなこと試しちゃダメですよ、由里子さん!(「物語」というのは多読の大事な要素だと思います。ブログの「多読」カテゴリーの「キリンがうちに来た日」に書いた「物語の力」のことです。いつかもっと詳しく書きます。)

特定の幼児教材をさせたわけではない。テレビから入ってくる情報量はきわめて少ない子。
唯一たくさんの絵本を読んできた、ただそれだけがこれだけ大きな影響を及ぼしたのだろうか、と私はびっくりしました。
さて、英語の絵本は、日本語の倍以上読んでいます。
溜め込んでいる英語があふれ出したら、こんな風に英語を書くことができるのかなあ・・・(略)
***
記事の全文は
http://blog.drecom.jp/oakenglish/archive/138
それから、彼の読書量は以下の記事に書いてあります。
http://blog.drecom.jp/oakenglish/archive/137
先生に出逢えたお陰で、私達家族はどれだけのものをいただけたのでしょう。感謝の気持ちでいっぱいです。

最後は面映ゆい気がして、削除を考えましたが、「面映ゆい」という感想を書くために残しておきます。
「物語の力」がどれほどの底力を持っているのか、はかりしれないという気がします。
(そして、試験が、学校が、どれほどこどもの力を殺いでしまうか・・・ 上の問題でさっと正解が書けるこどもなんて、こころはやせほそって、頭はがちがちな人間になるでしょうね。しあわせとか満ち足りた毎日とはほど遠い人生を送ることになる!)
由里子さん、ありがとう! メールフォームをすすめてくださったというdr-patchさん、ありがとー!! これは「物語の力」を実証する大事なできごとだと思うよ。
パピーくんの答えに×をつけなかったので、4歳のこどもに小1の国語の試験をやらせたことは帳消しになったと思います。けれども、試験は本当に気をつけないといけません。今回のすばらしい答えにしても、由里子さんは「パピー、すごいね!」と誉めてもいけないと思います。誉めるのではなく、共感するだけでいいのではないかな?「おもしろいねずみだねー」とかね。失礼、子育てまでいろいろ口出ししてしまった・・・