3/2(土)第29回メキシコ日本語教育シンポジウムへの参加報告

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3月2日の朝(メキシコ時間では1日の夕方)、第29回メキシコ日本語教育シンポジウム(メキシコ日本語教師会主催)に招かれ、オンラインで参加し、多読講演とワークショップをしました。(シンポジウムはハイブリッド開催)
メキシコではすでにNPOの会員の方が多読を取り入れてくださっています(6/24(土)勉強会「多読体験しよう!」@メキシコ日本語教師会南部支部 報告)。オンライン日本語多読クラブにもメキシコから参加があるし(なんと教師会の会長さんも!)、「無料の読みもの」のレビューもメキシコの読者からたくさんいただいているので、なにかと身近に感じていました。

現地では夕方の開催ということで、会場から自宅に戻ってオンラインで参加した方が多く、全部で70名ほどの参加がありました。
最初に、みなさんに多読についてご存じかどうか質問をしてみました。少数ながら初めての方もいらっしゃいました。でも、多読という言葉やある程度知っている方がメキシコにもたくさんいらっしゃることには感慨深いものがあります。
さて、講演部分では、いつもお話ししているように、私の多読との出会いから、楽しさを優先にする多読の意義、多読素材について、支援者の役割などについて話し、実際の授業の様子などを動画で見ていただきました。

その後、会場に集められた多読用図書や、オンライン参加者はオンラインで読める「無料の読みもの」などをひとりで読む読書タイムを設けました。20分ほどの時間でしたが、画面の中から会場を眺めると、みなさん、かなり熱心に本に集中されていました。その後、ブックトークの時間も。オンラインの方は、ブレイクアウトルームが10以上でき、いくつかはみなさんのお話も傍聴することができました。やはり、教師の立場で本を読んだ方が多かったように思います。実際に本を自分で読んでみて、多読授業がイメージできたらいいなと思っています。

グループが多かったので、読後の感想のシェアができなかったのが残念でした。
その後の質疑応答からいくつか紹介します。

Q 読む時間と回数(頻度)について
A 日本語学校や大学では週に1回、60分とか90分などのまとまった時間がとれますが、理想的にいかない場合、たとえ10分でも本に浸る時間があったらいい。ただし、10分たまに読むだけでは何にもならない。やはり日本語に浸る「総量」を考えなくては。学校で10分なら、本の貸し出しをして、家で読んでもらうなど総量確保の工夫が必要。

Q 母語でも本を読まない学生でも読むか。
A 日本語の勉強をしているのだから、読めたらうれしいと思う。短いものなら読む可能性はある。もし、活字が苦手なら日本語の動画を視聴するのでもいい。

Q 日本の文化の知識がないと難しい本もあるのでは?
A 興味があれば読むし、興味がなければ読む必要はない。学習者は意外なものに興味があり、教師が思いもよらないものに知識があったりするので、先入観で決めないこと。

Q 学校で読書クラブをやってみたが、だんだん人数が減ってしまった。どうしたらよいか。
A 辞めた学生になぜ来なくなったか聞いてみたらどうか。本が足りないなら、オンライン上の読みものを印刷するとか、ブックトークをして、他の学生と感想をシェアしてみたらどうか。

ここで終了。あっという間の2時間でした。

事後のアンケートもいただきましたので、以下に抜粋します。

● 多読の存在を知っていて、学生にも紹介したことがあったが、もっと本格的に取り入れたいと思っ
た。勤務先の学校には現在クラブのようなものはないが、読書クラブなど毎週開催できるものを
作ってみる価値はあると感じた。
● Definitivamente me pareció de las más innovadoras y significativas de este simposio. Termino el simposio pensando en como podríamos aplicarlo en nuestra escuela, adaptándolo un poco a las necesidades del mercado actual Aprender el como se usa, fue bueno
(このシンポジウムの発表の中で、間違いなく、最も革新的で重要な講演の一つであると感じました。現在の市場のニーズに少し合わせて、どのように学校に適用できるかを考えながらシンポジウムを終えました。使い方を学べて良かったです。)
● FJやAMIJのオンラインコースで多読の講習を受けたことはあったんですが、実際に多読の本を手に取って読めたのは、とても貴重な体験でした。あんなにたくさんあってバリエーションもレベルも多いから同じくらい揃えられれば学校で活動として役立てたいです。
(FJは、国際交流基金メキシコ日本文化センター、AMIJはメキシコ日本語教師会)
● Muchos hacemos clases que giran alrededor de la lectura o incluso utilizamos el sitio Web de Tadoku, sin embargo, ahora que conozco a detalle cómo hacer una clase con este método creo que puedo aprovechar mucho más el recurso de lectura. Me encantaría iniciar un club o círculo de lectura en línea con alumnos de todas partes del mundo con el fin de compartir elinterés y gusto de la lectura. (読書を中心とした授業を行ったり、多読Web サイトを利用したり多くの者がしていますが、この方法で授業を行う方法を詳しく知ったので、読書リソースをもっと活用できると思います。読書の面白さや楽しさを分かち合うために、世界中の学生たちとオンライン読書クラブやサークルを立ち上げたいと思っています
。)
● 実際に多読をしたことがあったが、先生のやり方、目的を理解することができ、自分でも本を読んで、それを他の人に話すという一貫の流れを経験することができた。
● 多読体験がおもしろかったです。読後のコメントシェアが楽しいものだと知りました。
● Quiero aplicar en mi clase el uso de tadoku, es algo nuevo para mi (多読の使用を授業に応用したい。私にとって新しいことです。)
● El tema fue muy interesante, muy útil y se agradece los recursos proporcionados. En cuanto a
la duración, tal vez ojalá se hubiera podido dividir en un poquito menos de tiempo de explicación y más tiempo para la conversación luego de la lectura independiente. (このテーマは非常に興味深く、非常に役に立ちました。リソースが提供されたことに感謝しています。長さに関しては、もう少し説明の時間を減らして、各自読書の後の会話の時間を増やすと良かったかも知れません。)

これをきっかけに、学習者主体で読む、楽しい多読の時間が、メキシコの教育機関にも広がるよう祈っています。

(記・粟野)