第12回「多読支援セミナー」報告 その④ 参加者の声

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8月6日に第12回多読支援セミナーを開催しました。報告第4弾は、セミナー後に記入していただいたアンケートより抜粋して参加者の声をご紹介します。
今後も、みなさんといっしょにこの支援セミナーをつくり、より良い支援について、そして、多読の未来について考えていければと思います。

※午前の全体会のアンケートについては、報告その①をご覧ください。

日本語分科会

(J1)実践報告~外国ルーツの児童生徒

──外国人集住地域の中学校、高校で多読活動、および多読本を使った活動事例について報告を聞きました。

  • とても示唆に富む内容でした。ロケットを作ったり、冊子を作ったり、細部まで子供たちのために工夫されていてすごいな、と思いました。
  • 学校で実践する場合には、授業時間や時間割の制約を受けますが、急がばまわれで、ことばと、ことばを使って考える力をじっくりとつけていくのに「多読」はうってつけだと思います。(中略)すきま時間を使ったり、昼休みや放課後を開放して行うなど工夫できることも、今回のご発表で改めて思いました。(中略)お話の力は偉大です。「読む」というよりも、聞いたり、見たり、読んだりしながら感じることがだいじなのだろうと思います。
  • 地域ボランティア教室で、高校受験を控えた子どもに多読が役に立つかどうか、よく質問されます。(中略)今回の先生方の実践報告をきいて、できることがたくさんあると感じました。大変参考になりました。
  • 母語と日本語の本をどちらも用意することや、その他のたくさんの読書に心を向かわせるしかけづくりに本当に「好きになって欲しい!」という愛を感じました。いろいろなアイディアをどんどん実践に移していくところもすごかったですし、希望して多読クラスに来たわけではない生徒たちに対するアプローチが実を結んで最後にちゃんと読書が好きになり、読書が生活に入り込んだということ…感動しました。
  • 松本さんも和田さんも教えている生徒の外国籍の割合にびっくりしました。あらすじを書くというのは、読めていないと省略ができないので、指導は大変なことだろうと思いました。シールを作ったり、ロケットを動かして量を読む励みにするなどの工夫も印象深く聞きました。和田さんの滞日歴が長くても、自分では困っていないと言っていても、実は日本語指導を必要としている生徒がいる、という話が印象的でした。
  • 実情から課題、その解決策の事例と、充実した内容で、とても勉強になりました。多読をしていたら“外国由来のこどもたちに伝えていきたい”と誰もが思うと思いますが、それが簡単ではないことを実感しました。というより、その難しさが具体的に描けるようになりました。発表されていた地域では、外国由来の児童の割合が多いので、対策をとる具体的な方向に進んでいるけれど、本当は、1人でもいたら対策しなければならないですよね。じゃないと国益を損なう。。。
  • とても詳しい実践報告をしてくださって大変勉強になりました。文科省や東京外国語大学や大阪大学のDLAに関係している先生方が多読をつかった実践をご研究されて成果を得られていることがわかり、今後も日本語指導には多読を多く取り入れたいと思いました。
  • 実際の教育現場での実践はとても興味深かった。日本語指導を必要とする生徒が45%や70%という学校が既にあること、関東もゆっくりそれに近付いていくのだろうということが想像出来たし、学校教育の年代では、大人とは異なり、多読に向けられる多くの仕組みが必要だとわかった。「多読」自体が楽しみであった一方で、「多読」を道具として「読み」「書き」へのつなげようとする実践が増えてきたという、「多読」の変化を感じた。
  • どちらのご発表も興味深かったです。「多読」の実践が活かされているのは保見中学校の試みのように思いました。読書量を競う(モチベーションを挙げる)のは、多読の「多」を考えるワークショップの視点からは、やや外れるように思います。頑張る子もいれば、やる気を損なう子もいるのではないでしょうか。
  • NHKの番組「ただいまと言える場所~豊田市保見団地」を見て気になっていたので、保見中学校の松本先生のお話、大変タイムリーで興味深くお聞きしました。ワールド図書館のような「母語の本も日本語の本も手に取れる」環境作り、「外国につながる子ども」にとって、とても大切だと思いました。ただ、正直なところ、「しっかり読んであらすじを書く」のは、私が子どもだったらちょっと嫌かも(読むのが億劫になるかも)とも思いました。東濃高校・和田先生、発表のあとのお話にあった「演劇で表現する」という活動に大変興味があります。紙芝居を日本語教育に取り入れている礪波由里子(となみゆりこ)さんのお話に通ずるものを感じました(雑誌「子どもと文化」2023 7/8月号に詳しいです)。

(J2)実践報告~大学、社会人

──大学、社会人対象の日本語クラスでの多読実践、支援について報告を聞きました。

  • 絵を読むことも大切と言うのは興味深かった。学習者自身が多読を自分に合わせて変えるということをしているというのは興味深い観察だった。多読の効果の裏づけのような研究がもっと進めば多読はもっと支持されるような気がする…。
  • 「絵を読む」のは似たようなことを会話の授業で行っているので、方法を変えて多読の授業でも実践したいです。社会人の学習者には美術作品を使用してもいいかもしれません。(中略)「多読」と「漢字・語彙学習」を分けて考えるというのは目から鱗が落ちる思いでした。
  • 「絵を読む」のやり方が大変参考になりました。ルールに納得してもらえば多読は成功したも同然? 自分も生徒が納得できない部分を分析する必要があると感じました。
  • 多読の脳の仕組みから発想をつなげて絵カードでの導入をやってみたという試みがすばらしかったです。論理的な流れがバッチリ実践にハマって本当に感動しました。本当に「読ませよう読ませよう」じゃないんだな、と思ったし、読書とは「文字」や「絵」の向こう側の世界を読むことなんだな、そこを信じて教師はそこへ導くべきなのだ、と実感できたお話しでした。
  • 「絵を読む」桂さんがおっしゃっていたように、絵を読むことの大事さ、多読の意味を学生に毎回説明するのだけど、本当に分かってもらっているのかなという疑問を私も持ち続けています。写真カードを使ったワーク、とても興味深いです。私もやってみたいです。(中略)「自己調整学習プロセスの分析」似たようなことが多くの学生の中で起こっていることを感じてきてはいますが、こうやって言語化してまとめてくださるとなるほどなあと納得できてよかったです。
  • 桂さんの試み=写真カードを使って、内面を引き出す。というのは、おもしろいと思いました。八木さんも小林さんも学習者が主体になって変わっていくという話で面白かったです。
  • 小林さんの発表 様々な国で自主的な多読の活動が行われてきているのがすごい!と思いました。NPOに、海外での多読活動をしているグループの紹介ページがあると便利だなと思いました。帰国したら多読をしたい、母語の多読の読み物も必要だと思う学生もいます。
  • 桂先生の「絵をよく見ようと言わずに、体験として実感してもらう」というのが印象に残りました。特に成人学習者の場合、「絵もよく見てくださいね」と言っても、なかなか見ない、あるいは絵まで楽しめない学習者もいると思うので、「言うのではなく、体験してもらう」というのは効果的ではないかと思いました。
  • 録画視聴しました。東京学芸大・桂先生のお話、大変参考になりました。《カードを使った対話》自分でカード選び、見て、話す活動→「絵をよく見よう」とは言わない、体験として実感してもらう→レベル0,1につなげる、これを早速真似してやってみようと思います。お話を聞いていて、楽しそう!とワクワクしました。
  • Ippo Ippo Japanese の小林先生のお話は、自身が主催するボランティア教室について考えさせられました。学校というような決められたスペースも強制力もない環境で、どうしたら人を集められるのか、個人の持ち出しではなく無理なく続けるには何が必要か、たくさんのヒントをいただきました。(主催する側にも仲間が必要なこと。多読以外にも、楽しそうな活動をプラスすることなど)

(J3)小グループに分かれての語り合い

──申込時のアンケートを参考にいくつかのトピックに分かれて語り合いました。

  • ちょこっと多読について実践の様子を聞きました。やはり場の力が大きいと思います。今の私の現場では、始まる前に本を選ぶ人は少ないですが、来たらすぐ本を選ぶような場もあるのですね。そういう場が作り出せればよいな、、と思いました。
  • 社会人学習者にとって多読本が幼稚だという質問に対して、こちらから内容を選別したものを提示するというお答えをいただいて、なるほどと思いました。ただ、今後、絵の少ない初級向けの本や、シックで落ち着いた感じのイラスト(白黒のエッチングのようなイメージ)の本、イラストではなく写真を使用した本を作っていく必要も感じています。
  • 「多読、その先」に参加させていただきました。(中略)学齢相応の日本語力と、実際の日本語力のギャップをどう埋めていくかという話題は、私が常に直面している課題であり、その部分について悩みを共有することができたことがありがたかったです。
  • ここでのおしゃべりはいつも楽しい。ほとんどお知恵を拝借するだけで終わってしまって、もうしわけありません。
  • 「多読の魅力をどう伝えるか」でご紹介いただいた「ちょこっと多読」に魅力を感じました。通常の授業を10分を余らせて(これが自分にとって一番難しい事ですが)多読をやってみる。これを実践してみたいと思います。

英語分科会

(E1)キーノート:多読支援って?

──多読の支援者の役割や思いを、サッカーのサポーターになぞらえて確認しました。

  • 教えるわけではなく、支援をするという姿勢について、よくわかりました。
  • サッカーのサポーターの例えが面白かったです。支援者とは、自分が思っているより遠くから見守る存在であり、同時に、もっと積極的に寄り添う存在でもあるべきなんだと感じました。
  • 実践者にプレッシャーを与えてはならない。これは、多読支援者としては、当たり前なのですが、教員の立場になると、ついついプレッシャーを与えがちになってしまう。これは常に肝に銘じなければ!と思います。また、実践者が必ずしも対象言語を身につけたいと思っているわけではないこともある(というかそのように見えることもある?)というお話も興味深かったです。色々な実践の場があり、実践者の目的、希望、実践者自身も気づいていないようなことにも目を向けて、一緒に歩んでいけるような支援者に近づいていければと思いました!

(E2)素材紹介

──実際の現場で小中学生に人気の本について、子どもたちの様子とともに紹介を聞きました。

  • ブックトークが面白くて、どの本も読みたくなりました。また、子どもたちの様子の話がとても参考になりました。子どもたちからこんな言葉を聞けるようになりたいと思いました。
  • このように素材を紹介していただくのも、面白いなと思いました。
  • 子どもたちの楽しそうな顔が浮かんでくるようなお話で、いつまでも聞いていたい感じでした。

(E3)みんなでブックトーク

──小グループに分かれて「実践者として」お互いに本を紹介しあいました。

  • 楽しそうに聞いてくださったので、緊張せずに思いの丈をお話し出来て嬉しかったです。
  • 話すのも、聞くのも、楽しかったです。紹介された本が全部ほしくなりました。
  • 支援者も一人の多読ファンに戻りリラックスして語り合う雰囲気がよかったです。

(E4)実践報告

──学校や社会人向けの講座での支援の報告を聞きました。

山岸さんの中学での実践報告について:

  • 学校で、こんな多読ができたら幸せだなと思った。
  • 夏休み前のおすすめ本のリスト制作など、丁寧な授業の準備に感心しました。
  • 「好きな一冊」と出会えるきっかけづくりのためのいろいろな工夫についてもとても勉強になりました。
  • テーマ別に本を分けておいて生徒に興味のあるテーマに関する本を選ばせるというアイデアがあり、面白いと思いました。(中略)「おすすめのラブストーリー」のようにカテゴリーを作って生徒に本を薦めるとか、それぞれの生徒の興味に合わせておすすめの本を紹介する、などもいいアイデアだと思いました。口頭ではちょこっと薦めることがありますが、書いてあげることまでやっていませんでした。
  • 多読と成績が伴う学校の授業を結びつけることがどこまで可能なのか。。。そこに果敢に挑んでいる先生(支援者)たちの報告が聞けた貴重な時間でした。最終的に自分でたどり着いた結論は、これからも自分が多読を楽しむことを忘れずに続けていこう!です。

宮城さんの多読講座の実践報告について:

  • 宮城さんのお話しを伺って、心から多読仲間が欲しいと思いました。ブックトークをしたいです。
  • 多読講座ってどんなものかしらと思っていたので様子が垣間見えてとても面白かったです。
  • 特に宮城さんの受講生から講座支援者に、というお話が印象的でした。多読は先生から教えてもらうものではないので、多読の先輩が伝えていくのが一番いい方法だと思っています。1人では自信がなかったけれど、仲間と一緒にそれぞれの強みを合わせて、というのは素晴らしいと思います。
  • 主体的に取り組んでいる社会人向けの講座だと、学習者支援者ともに、心から楽しんでいる様子が伺えました。

(E5)小グループに分かれての語り合い

──実践報告を聞いた感想や日々の支援で感じている課題等について自由におしゃべりしました。

  • 観察をして、好みを知って、適切なタイミングで適切な声かけをする。そのためにストックを増やす。待つことが大事。次の本を読みたいと思ったら読めたということ。本の絵やストーリーから背景情報などを学ぶと楽しい。
  • 「ちょこっと多読」どうすれば、楽しい空間が創れるかな、、と考えています。感想だけではなく、ブックトークなど他の引き出しも作ろうと思いました。
  • 様々な環境で多読指導をされている方々との語らいは、発見もあり楽しかったです。(中略)本を勧めるのは指導者ばかりでなくて良いと思う事もお話ししました。指導者だから、興味のない本も義務的に読まなくてはいけないなんて事はなく、その分野に強い人に頼ったり、自分で探す楽しみを味わってもらっても。時間を要したとしても、それはそれで良い。
  • 授業の中で多読支援をしていると、もっとしっかり授業をしなくては、と思ってしまいますが、生徒が自分で好きな本を選んで興味を持ってどんどん読んでくれるのなら大丈夫ということを伺い、少し安心しました、ありがとうございました。大人は(こどもと違って)どういう本がいいかケアしていくとよい、というお話が出ましたが、高校生もケアが必要だと感じています。支援者がブックトークを楽しくできるようになりたいです。
  • 多読支援の難しさと楽しさを再確認できました。日頃なかなかお目にかかれない方のお話できて、また支援(というか私の場合普及?)を頑張っていこう!という気持ちになれました。

(事務局)