第12回「多読支援セミナー」報告 その③ 英語分科会

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8月6日に第12回多読支援セミナーを開催しました。報告第3弾は、英語分科会の様子をお伝えします。

(E1)キーノート

多読支援って? 〜ファンでいる、推しがあるって楽しい!
──繁村 一義(NPO多言語多読 副理事長)

報告:繁村

多読の支援者の役割や思いを、サッカーのサポーターになぞらえて考えてみました。サポーター=支援者は指導者ではないのですから、多読をしようとしている方がうまく進められる雰囲気や環境を作ることが、もっとも重要で、それだけでもいいのではないかと思えます。当然、支援者が多読をしている人にプレッシャーを与えるなんてもってのほかで、多読を楽しめるよう応援をしたり共感したり相談にのったりすることこそ大切で、特に何も教えることはしなくても良いはずです。支援は楽しいのです。

ただサッカーのサポーターとは異なり、多読支援者には、多読実践者が必ずしも進んで行ってはいないとか必要性などを感じていないということもあります。ですから多読の支援には難しい点も出てくるかもしれませんが、でも多読がうまく進むと、多読をしている人だけでなく、支援者も嬉しく楽しいという支援の喜びを思い出すことで乗り切っていきたいですね。

(E2・3)素材紹介・みんなでブックトーク

報告:荻野

今年は、リトルトゥリーイングリッシュスクールの菱谷尚美さん(NPO多言語多読会員)が、最新のブックトークでのエピソードを交え、支援の現場で小〜中学生に人気のある絵本を紹介してくださいました。多読Clubでは毎回本を読んだ後にブックトークをされるそうなのですが、やはりOxford Reading Treeが一番人気で、毎回必ず一冊は選ばれるとのことでした。気に入った同じ本を何度も紹介する生徒さんや、本のあらすじとは全然関係ない話題で盛り上がる、というお話に、共感された方がたくさんいらっしゃると思います。

その後、今回は「支援者として」ではなく、全員が「実践者の気持ちになって」自分が読んで楽しかった本をシェアしようという目的で、ブレイクアウトルームに分かれてブックトークを行いました。各部屋とても盛り上がったようです。

紹介された本(アンケートより):

(E4)実践報告

本との出会いのきっかけづくり~中学生との実践から
──山岸 典子(香蘭女学校講師/元新宿区立四谷図書館司書/NPO多言語多読)

報告:Tsubasa

私立中学で多読支援をされていて、NPO多言語多読の支援者講座も担当されている山岸典子さんから中学の授業での実践報告がありました。

まず、文字なし絵本から物語を想像する力や思考力を育くんでいく多読授業の導入の様子が紹介されました。次に、ブックトークや自由な読書時間など、生徒主体の多読授業のお話がありました。また、生徒さんたち自らが本を読みたいという気持ちを引き出すアプローチとして、クラス全体に向けた本の紹介や、一人一人の好みに合った本の紹介の仕方が紹介されました。

「Tadokuは読書であり、支援者のすべきことは子供たちが素敵な本に出会うきっかけを作ること」という言葉と、生徒さん達の本への様々な反応を楽しそうに語る山岸さんのご様子がとても印象的でした。

卒業生が支援する英語多読講座〜たくさんの仲間とのTADOKU体験を伝えたい
──宮城 恵弥子(NPO多言語多読 英語多読講座担当)

報告:小川

NPO多言語多読の英語多読講座で支援を担当している宮城恵弥子さんは、日本語多読経由で多読を知り、ご自身も同講座の受講生でした。講座卒業生の仲間と「たどくらぶ」でブックトークや海外ドラマなどの語り合いを楽しみながら、多読を実践してきました。英語は専門外で、英語が第一言語の国に行ったこともないけれど、仲間と一緒だから講座担当も始めることができたそうです。

多読実践者が支援する意義として、1.「多読やってよかった!」という実感を伝えられる、2.自分の多読体験からの共感(迷い、焦りも含めた自分の多読体験から、長い目で支援できる、本人の気づきを待てる)、3.仲間の多読体験も共有(100人いれば100人の多読があって、人それぞれ違う)、を挙げられました。

「支援者は、さまざまな形で仲間と一緒に多読を楽しもう!」という宮城さんのメッセージからは、「教える」「指導する」のではなく、感動を共有し、お互いに自分が持つ力を引き出す仲間の存在の大きさを実感して、その経験を支援に生かされていることが伝わってきました。

(E5)小グループに分かれての語り合い

4つのグループに分かれ、各グループ4〜6人で実践報告の感想や日々の支援で感じていることについて自由に語り合いました。

グループ①

報告:繁村

4名の小グループで、支援者としての悩みや疑問を披露しあい、共感しあう感じで進みました。本の揃え方、多読する人への本の勧め方(あるいはほのめかし方)、なかなか乗り気になってくれない人への接し方、多読している方の伸びの気づき方・気づかせ方、聞き読みや音読に対する考えなどなど、正解のない、でも支援者間ではあるあるな話題が次々とでてきました。支援する相手が学生・児童中心か社会人中心かで多少かみ合わない時もあったかもしれません。ただ支援者だけでなく多読する人としての視点もあり続けたせいか、ばらばらにならず、あっという間の悩ましくも楽しい時間でした。

グループ②

報告:荻野

最初に自己紹介をした後、お互いに近況報告をしたり、悩みを相談し合ったりしました。これから多読の普及活動をしたいという方のお話や、逆に最近自分の周りで多読の広がりを感じているという嬉しいお話もありました。多読支援を始めたばかりという方からのお悩みでは、絵本の集め方や、電子書籍と紙媒体の違いについてなどのご質問がありました。オンラインのサブスク制のサービスが増えたことで、多読を支援の現場に取り入れやすくなっているのはとてもいいことだと思いました。今回は4人と少人数のグループだったのでとても話しやすかったですし、個人教室の方、図書館多読の方、日本語多読にも携わっている方など、所属や対象年齢もバラバラで新しい発見もあり、とても有意義な時間になりました。

グループ③

報告:Tsubasa

高校で多読支援をされている先生、児童英語で多読支援を取り入れている先生方が集まっての意見交換になりました。生徒さん達への多読支援を楽しみつつ、適切な場面でアドバイスができるようにとご自身も多読を楽しまれるご様子や、生徒さん達と共に本を楽しみつつ本の内容から飛躍して様々なことに興味を広げていく楽しいレッスンの様子、絵本から、絵を描くことも上手になった生徒さんの素敵な例などが報告されました。また、酒井先生(NPO多言語多読 前理事長)から「何を持って読めたとするか。それは1冊終わった後に子供たちが自ら次の本に手を伸ばす時です」という言葉を頂きました。様々な現場での多読支援の喜びや悩みを共に語り、正解のない答えを探っていく有意義な時間となりました。

グループ③

報告:山岸

さまざまな経験を持つ支援者が集まり、日常の悩みや、大人と子どものちがい、多読のあり方等について話しました。特に印象的だったのは、受け身で読む(やらされてやる)のと、自分から好きな物を選んで読むのとは全然違う、学校(講座)を卒業した後も自分でどんどん選んで読む力につながっていくような支援ができればいいね、という話、しばらく多読から離れてもその人の中で言葉が「熟成」されていくという話、支援者の存在が透明になるくらい、実践者主体で多読が進んでいるのはすばらしいことだ、という話です。様々な支援者がざっくばらんに話すことで、日々の不安や疑問の解消にもつながった時間でした。

* * *

報告④に続く。

(事務局)