第10回「多読支援セミナー」報告 その②

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多読支援セミナーの報告第二弾は、8月1日(日)の午前中に行われた日英の支援者合同のワークショップについて。

C.「教えない」を考えるワークショップ

参加:83名/報告:片山智子(正会員)

今回のワークショップでは、多読支援の原則のひとつである「教えない」ということについて参加者全員で考えました。進行は、NPO多言語多読正会員の作田奈苗さんです。

まず、参加者全員の理解の地ならしとして、NPO多言語多読副理事長の繁村一義さんから、多読と多読支援についてのお話がありました。多読・TADOKUは、言葉に慣れ親しむための方法であること。多読3原則(1.辞書は引かない、2.分からないところは飛ばす、3.つまらなくなったらやめて、次の素材にうつる)は、言葉に慣れ親しむためのヒントとして示されたもので、これによって学習者は目標言語にたくさん触れ、楽しく多読を続けることができるのだということ。そして、多読支援3原則(1.教えない、2.押し付けない、3.評価・テストしない)は、言葉に慣れるための場を作るため、楽しく続けるきっかけを作るためのものであるというお話でした。

では、多読支援3原則の「教えない」とはどういうことでしょうというところから、ワークショップが始まりました。

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まず、話し合いの起爆剤として5つのケースを書いた資料が配布され、各自で読む時間が10分間与えられました。資料には「学生にオンラインニュースを自由に読ませて、教えない授業を実践した教員」「レベルに合っていなくても『ハリーポッター』が読みたいという学生がいて、どうしたらいいか悩んだ教員」「昔話のわからない言葉にモヤモヤしていた学習者と教員の対応」など、多読授業でよく見られる事例が、教員や学習者の立場から具体的に示されていました。

その後、4,5名のグループに分かれ、気になったケースについて、感じたこと考えたことを自由に語り合いました。ケースを読んだ後だったので、初対面同士でもスムースに意見を出すことができ、自分の経験などを交えながら和やかに且つ熱い話し合いが進められたようです。

じっくり40分かけて話し合った後は、アウトプットの活動です。同じメンバーで再び集り、「教えないとは●●をして、○○をしないこと」の●●と○○に入る言葉を考える作業を行いました。

最後は、共有の時間です。「観察をして、放置をしない」「寄り添って、無理強いをしない」「好きなものを探す手伝いをして、そうぞう(想像・創造)する世界を邪魔しない」「横にいて、上にいない」等、各グループの言葉を画面に写して見ながら、その言葉を選んだ経過やそれぞれの思いについて説明を聞きました。

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今回のワークショップは、「教えない」のひとことに込められたさまざまな意味を考える機会となりました。支援者の数だけ支援の姿がある、それでも支援者が大切に思っていることには共通点がある、ということを認識する場となったように思います。

各グループの回答:多読支援で「教えない」とは、●●をして、○○をしないこと
グループ ●●をして、 ○○をしないこと
1 しっかり観察 放置
2 学習者の観察 口出し
3 1人1人の自主性を伸ばすように見守り 制限をせず、枠にはめない
4 学生の興味に共感して、やりたいことは止めない
個人の読みを支援して多読のための多読を強要しない
説明をしない
読みたいことを止めない
読み(文字?)にこだわらない
5 見守りながら対話をして 否定
6 ①よく準備、②よく観察、③伴走 ①押し付け、②準備、③先導
7 横にいて 上にいない
8 好きなものを探す手伝いをして そうぞうの世界の邪魔をしない
9 多読への動機づけ(⇔自発的な促しをする)(読む人との信頼関係をつくる、相手をよく知る) 強制・評価
10 見守り/励まし/応援 無理強い/押しつけ/学習意欲をそぐこと
11 ほめてはげます、モデルを示す、環境づくり 数値化しない、学習者を否定しない
12 より楽しい経験への案内・ガイド・手引き 強制・規制・統制・決めつけ・押し付け
13 観察をして/ほどほどにして/場を作って/手助けをして/生まれてきた好奇心を大切にして/いっしょに楽しんで 口出しはしない/やりすぎない・こだわりすぎない/でしゃばりすぎない・コントロールしない/放置をしない/かわしすぎない/無理をさせない
14 一緒に楽しんで 無理強いをしない
15 本や素材、環境を準備して、 強制しない
16 学習者自身に興味を持ち、信頼関係を築き ものさしを持たない
17 学習者に寄り添うこと 放置や支援者のやり方や考えを押し付け

***

報告その③に続く。

(事務局)