7月5日(日)オンライン「日本語多読授業入門講座」報告

LINEで送る
Pocket

7月5日、梅雨の大雨の日、オンライン版の「日本語多読授業入門講座」の2回目が行われました。今回、時間は夕方4時からでした。せっかくオンラインで距離に関係なく参加できるのですから、ヨーロッパの先生方が参加できるようにと、この時間設定にしました。

期待通り、スペイン、ベルギー、オランダ、ドイツ、セルビアと、ヨーロッパの日本語教師のみなさんが集まってくださいました。また、ニューヨーク、ニュージーランド、韓国からもご参加いただき、総勢9名となりました。

IMG_2655のコピー

講師は、正会員の高橋亘と片山智子、司会は粟野真紀子です。

まずは、高橋が「多読とは」と題して多読の概要について話しました。

いい授業とは教師にとってなのか学習者にとってなのか、日常生活の中で読むとはどういうことか、という問いかけから始まり、学習者が主体で、学習者が楽しんで読むことが大事であるという、多読の本質へと話が進みました。
続いて日本語多読の4つのルールと支援者の役割について説明がありました。支援者の役割は、読み間違いを正したり、テストをしたりすることではなく、読むことが楽しくなるような雰囲気作りであるとのことでした。

IMG_2657

また、現在の状況に合わせて、オンラインの多読の状況について、授業のやり方や教材についての紹介がありました。

この後、5分の休憩時間をはさんで、片山から実際の多読授業の実践の報告がありました。

多読授業で学生は何を経験しているか」をテーマとして、導入期から実際に大学の授業で行っている活動を具体的に説明しました。

大切にしているのは、読むとはどういうことなのかと学習者に考えてもらうことです。文法と語彙がわかったら読んだと言えるのか、という問いかけのもとに、絵を読むことで「読む」ということについて考える活動を紹介し、参加者のみなさんに実際に絵本の絵をじっくり「読んで」もらいました。
他には、コメントシート、ブックトーク、読み聞かせなどについての紹介がありました。オンラインの授業では、ZOOMのブレイクアウトルームを活用した個人指導やブックトークの活動例もありました。

IMG_2660

多読授業で学生は何を経験しているか?」
答えは、「自信を得てモチベーションが高まること」「日本語で感動すること」そして、「気がついたら○○ができるようになる」という副次効果だそうです。

講師からのお話はここまでです。ここからは質問コーナー。次のような質問が次々に出ました。

  • 課外活動で多読をやる秘訣は?
  • テーマごとの本の紹介の具体的な方法は?
  • 継承語の学習者の多読は?
  • 音読か、黙読か?

オンラインの日本語多読授業入門はリライト体験がない分、いつもの多読授業入門より短時間で終わります。でも、それだけにギュッと詰まった充実した時間になりました。質問もたくさん出て、みなさんの熱心さが伝わってきました。

以下は事後アンケートからの抜粋です。


【感想・ご意見など】

・多読の基本的なこと(4つのルールなど)から、実践例までお話があったので、理解を深めることができました。オンラインのサイトをいくつも画面共有で見せていただいたので、助かりました。

・多読授業の流れやレベル設定が知れてよかったです。課外授業でしようと思っていたので、そのヒントも得られました。

・「多読とは」ということ、具体的な実践例の両方について伺えたこと、また、参加者の先生方の活動(継承語教育等)について伺えたことがとても良かったです。

・オンライン多読のアイデアやサイトを教えてもらえたこと
・たくさんの本がWEB上であることを知った。多読クラスの状況を一部知ることができた。
・「読める」とはどういうことなのか、学習者ひとりひとりと向き合える活動としての多読の良さを知るスタートができました。ありがとうございました。

【今後どのような勉強会を望むか】

・コロナの影響で、今後しばらくはオンラインでの多読活動が活発になるかと思いますので、オンラインでの多読の方法(特に学習者コミュニティの形成)について、今後も情報を共有していただけますと大変ありがたいです。

・文芸作品のリライトや多読本を自分で書いてみたいと思っているので、そのための勉強会があれば参加したいです。
・中上級レベルの実践例についてお話をうかがいたいです。
・実際に、参加者の方がそれぞれの(英語で皆さんができれば)第二言語で5分くらい多読本を読んでみる(多読の体験)などしてみたら、いいかなと思います。

・多読+多聴についても学びたいです。

・今日意見が出ていましたが、継承後教育との関連で多読について知りたいという話はよく聞きます。ぜひ、取り上げていただけたらと思います。
・今回はコースの一環としての実践例だったが、他の事例(質問にもあった課外活動での例)での実践報告もあると参加させていただきたいです。

「多読」は、1回限り、短時間では伝えきれないほどの多面性があり、奥が深いです。
8月8,9日の多読支援セミナーにもよかったらまたご参加くださいとお話しして解散しました。

(作田)