2月22日(土)日本語支援者養成講座@岐阜県坂祝町 報告!

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2月22日、岐阜県坂祝町にて、文化庁委託事業「生活者としての外国人のための日本語教育事業」の一環、「日本語多読の手法を学ぶ」講座の講師を務めました。呼んでくださったのは、坂祝町と可児市国際交流協会。可児市国際交流協会では、数年前から坂祝町に日本語教室を立ち上げるべく努力されてきたそうです。来年度から多読クラスを始める予定で、本講座はその前のボランティアさんたちとの勉強会というわけです。

22日当日は、雨模様。ボランティアさんの参加がどれくらいになるか心配でしたが、15人ほど集まってくださいました。中には1年前、可児市国際交流協会で行った研修に参加された方のお顔もちらほら。ご自身が在住外国人というブラジルやフィリピン出身の方も数名いらっしゃいました(いつも思うのですが、そこが外国人定住地域の支援のすばらしいところです)。

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前半約1時間は、多読の説明。楽しく本の世界に浸ることで、言葉や知識が吸収できるやり方だということをお話ししました。
読み方や支援者の役目の話のあとは、動画で実際の多読の授業の様子や学習者のインタビューを見ていただきました。

概論が終わったところで、グループごとに話し合う時間をたっぷりとりました。
まずは、ここまでの話を聞いて、多読がいいと思った点、反対に、疑問や難しいと思った点を書き出してもらいました。
みなさん、しばらくペンを一生懸命走らせていました。多読について肯定的な意見はでるかな、それとも否定されるのかな?・・・見守る私は内心ドキドキ。
さて、たくさん書き出してもらった後は、それを元に意見交換をしてもらいました。

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みなさん熱心に話し合っています。
さて、肯定的な点、疑問点双方について話し合いがある程度できたところで、「島」ごとに発表してもらいました。
ホワイトボードに書き出したのが、これです。

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みなさん、多読の「肝」をちゃんと掴んでくださったようです。
「本を通して、日本の文化に触れられるし、話が広がる」「教わるのではなくて、好きな本を自分で選んで、自分で文法や知らない言葉の意味に気づく」などが次々挙がりました。

その半面、不安な点には、「読みたくない人はどうしたらいいか」「入門者に多読を理解させるのが難しいのでは?」「本の用意が大変」など、定番のコメントが色々・・・。「忍耐が必要」「継続する時間の確保」というのは、多読をきちんと理解しているからこそ出てきた意見ですね。
「母語を持っていない人に多読はできるのか」というユニークなコメントもありました。
これは、母語が発達途中で来日して、母語も日本語も中途半端になってしまっている子どもがいるという観点からの質問。日々現場でそんな子供たちに接している支援者のみなさんの苦労が忍ばれます。

全体にコメントし、質疑応答をした後は、昼食休憩です。
参加者のみなさんとブラジル料理のお弁当をいただき、午後は、「多読実践」!!
多読に参加してくれる学習者を待ちました。
結局、4人来てくださったのですが、圧倒的に支援者のほうが多いという状況だったので、いっしょに多読をしましょう!ということに。

多読にどんな本が向いているか、図書の紹介、私たち多言語多読のウェブサイトの紹介などの後、レベル別の多読図書、絵本といろいろな種類の本をテーブルに置いて、支援者も学習者への支援をしつつ、いっしょに多読をしてもらいました。支援者には、どんな本が多読用に使えるのか知ってもらう大切な目的もあります。

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次々に本を選んで席に着きます。
「まず、多読の説明と読み方のルールを学習者の方に説明してください!」
という私の指示に、4つのルールを思い出しながら、一生懸命伝える支援者さん。
「えーっと、ルールの1は・・・2は・・・(中略)・・・あ、順番、間違えちゃった!」
「順番は、違ってもいいですよ~(笑)」

お子さん連れの学習者の隣に座った支援者の方は早速、お子さんのお相手を買って出てくれます。

「つきっきりで、すべての言葉を説明するのではなく、質問には適度に答えて、本から広がる話はいっしょに楽しんで・・・、でも一人で本に向き合う時間を作ってあげてください」ーーこのゆる~く寄り添う『多読』の”案配”をみなさん、なんとなくつかんでくださるでしょうか。
(実は、昨年の可児市の研修講座では日本語は全くゼロの入門者が多く参加されたので、ボランティアさんの支援の”案配”が難しかったのですが、今回は、全くのゼロビギナーはいらっしゃらなかったので「ひとりで読む」ができました)

しばらくは、静かな読書タイム・・・。

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だれが支援者でだれが学習者かわかりませんね。一堂で本を読む機会というのも珍しいことだと思います。みなさん、思い思いに本を読んでいる光景はなかなか素敵でした!

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しばらくすると、学習者の質問にゆるく答えたり、いっしょにおしゃべりを楽しんだりする光景も。
なかには、自ら外国出身の支援者さんが、レベル別読みもの『日本の食卓』(よむよむ文庫/アスク出版)を手に日本人支援者さんと食文化談義に花を咲かせたり。
(食べ物の話はいつでも盛り上がります!)

さて、約1時間読んでもらった後は、みんなでブックトークをしました。

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支援者の方は、絵本での発見や面白さ、レベル別読みもので読んだ小説などの話をされていました。学習者が選んだのは、絵本「くだもの」、レベル別読みものの「日本の行事」「南の島のタクシー」(にほんご多読ブックス/大修館書店)でした。

最後に学習者の方に感想を聞きました。
特に、実はベビーシッターとして呼ばれてきたのですが、急遽、多読に参加することになったブラジルの方が、
「今日は、参加して、本を読んだり、みなさんとお話ができて本当に楽しかった!」
と紅潮した顔で話されていたのが印象的でした。

さて、来年度、坂祝町で多読クラスは始まるでしょうか・・・。
この楽しそうな多読の雰囲気で、本を通じて日本語、日本文化の理解や興味が深まることを祈っています。

以下は、当日のアンケートからの抜粋です。

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★今日の講座はどうでしたか。

・多読についてよく理解できた。
・多読について効果や方法を詳しく学べてよかった。
・とても興味がある内容でした。今後に取り入れたいです(日本語学習指導)。自分も英語多読に挑戦したいなと思いました。
・今日以前は、資料の本が難しい段階の人が対象の場合には、新しい段階に強制的に押し上げようと思っていました。でも少しずつ自分で進むのを見ていたい。
・多読のいいところや難しいところが理解できた。多読実践は一人一人の感想があり、多様性を感じた。
・多読、これは日本人にも大切と思いました。
・ビデオで、多読の会に、10回未満の方でも教えられなくても自分で読めるようになるというのを見て、感激しました。

★あなたの課題解決へとつなげられるヒントはありましたか。

・理解しているか覚えたか、つい確認したくなるけど、一方に教えこむのではなく、相手のペースで知りたい意欲を引き出してあげることが大切で、その方法として、絵本・物語などの本をうまく取り入れていくのは、よい方法だと思いまし た。
・次に多読をやる時には心構えが出来ました。 読み聞かせも用いていきたいです。
・外国の方が何が分からないか少し分かった。
・今の仕事の組織は問題で、本を紹介したいけど、どう受け取ってくれるか分かりません。
・教室に本の数が少ないことがネックでしたが、 携帯でチャレンジしてみようと思います。

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以上

(粟野)