1月27日(日)可児市国際交流協会で日本語多読研修を行いました!

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岐阜県可児市国際交流協会とはもう長いお付き合いになります。
先月末、3年半ぶりに地域日本語支援者養成講座に呼んでいただき、多読の話をしました。(前回の様子はこちら

午前中は、学習支援ボランティアのみなさんに多読についてお話ししました。
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すでに多読支援を始めていらっしゃる方もいましたが、参加者約15人のうち半分ぐらいが「多読ははじめて」の方たちでした。しかし、最近、来日外国人が増えてきて、多読への関心はとても高まっているようです。

「楽しく」をモットーに日本語の本に誘導する多読、読む側には4つのルールがあり、支援者は、ひとりひとりをよく見て対応する、テストしない、教えないなどの鉄則があることをまず、お話しました。

次に実際に私たちが支援した在住日本語学習者が文字を覚えて読めるようになったり、話せるようになった様子を動画で見ていただきました。この動画にはみなさん、刺激を受けたようです。

その後は、多読用図書を見ていただきながら、隣の席の方と多読について意見交換する時間を設けました。みなさん熱心に語り合っていました。

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多読がいいと思った点を挙げていただくと、

・言葉が体に染みこんでいくところがよい。
・読む力、書く力につながる。
・絵をよく見るとことで読み進める手がかりになる。
・自分で気づく、自分でわかることができる。
・レベルが違う人も一緒にできる。
・実際にやってみて、感想を書く力がついた。読む速さも速くなった。
・スマホの時代に「本」というのがよい。

などが出てきました。
「自分で気づく、自分でわかることができる」に注目していただき、感激しました!
その後、今後は疑問点ーーー

・ひらがなが読めることが最低限必要。
・時間の確保。
・分からない言葉をすぐ調べてしまいそう。どうすれば?
・レベルアップのタイミングがむずかしい。
・読み飛ばしては、ますますわからなくなるのでは?
・本が嫌い、読みたくない生徒はどうしたらいい?
・絵本はひらがなばかりでかえって読みにくい。
・ちょっと説明すればすむことはしてもいいのではないか。

などが挙げられました。実際にすでに摂り入れられている方たちからは具体的な質問が出て、はじめての方にとっても多読の理解が深まったように思います。
お子さんの学習支援に多読を摂り入れた先生が、「9月から40冊も読んだ子がいて、とても自信になっているようです」と報告してくださいました。
主な質問にお答えしたところで、午前の部は修了。

午後は、実際に教室に来た学習者のみなさんに多読をしていただきました。
参加したのは、ボランティアさんの数とだいたい同数の15人。

パラパラと入室した学習者のみなさんに早速、ボランティアさんがついて、本を読みはじめました。

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どんどん読める学習者はときどき、ボランティアさんに質問しながら読み進めました。「となりのトトロ」やレベル3「注文の多い料理店」(レベル別日本語多読ライブラリー)を読んだ人もいました。レベル0「大豆」(同シリーズ)を手に取り、ひとつひとつ質問を始めた人もいました。ボランティアさんも「あまり口出ししてはいけないんだけど・・・」と迷いながらも説明をされていました。
読む側が知らない言葉にこだわらないということが徹底していないため、またノンフィクションにはむずかしい名詞が出てきてしまうため、「質問攻め」は、よく起こる現象です。そんな学習者も「お話」を読みはじめるとさらさらと速く読み終わっていました。はじめての多読には読む順番が大切ですね(そのあたりの説明が不十分でした)。質問に答えながらも、根気よく、学習者が読むことに熱中し始めるのを待つことが重要だと思います。

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問題は、ひらがなが読めない学習者への支援でした。
予想に反して10名ほどがひらがながまだ読めないゼロ初級者でした。
私のヨミが甘くて、字のない絵本、ほとんど字のない絵本の用意が少なかったのです!痛恨のミスでした。それでも、ボランティアさんは、できるだけやさしい絵本を手に取り、学習者ひとりひとりに絵を見せながら根気よく読み聞かせをしたり、語りかけたりしました。
1時間経って休憩を取ったときには、双方、かなりお疲れモード。
そこで、立て直せればよかったのですが、こちらも臨機応変な対応ができませんでした。申し訳ありませんでした。
何にもわからない学習者の方に、次々に本を見せて語りかけても、情報量が多すぎて受け止めきれません。途中から、ひらがなの練習を始めたり、なんとか会話をしはじめたりしたペアがありましたが、それが自然な流れだったと思います。
ひらがなが全くわからない学習者には、まず繰り返しばかりの簡単な絵本の読み聞かせ、それから挨拶、または文字がごく少ない絵本を1,2冊読み聞かせたり、学習者に読んでもらったり、が限度かもしれません。あとは、一人で本に向かう時間をとることが大切だと後で改めてしみじみ思いました・・・。

最後に本を読んだみなさんに好きな本を掲げてもらいました。感想がなんとか話せる学習者さんには一言発表してもらいました。ひらがなが読めない人が最後に「ねずみくんのチョッキ」が面白かった、と言ってもらえたのが救い?でした。絵で本の内容を楽しんでくれたのだと思います。

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その後の、ボランティアさんとの反省会では、みなさん疲れ切って言葉も出ない様子。
全くゼロの学習者へのアプローチの仕方をもっと準備して広くお知らせできるようにしなければいけないと深く反省しました。
それでも、事後に書いていただいたアンケートにはすばらしい言葉がたくさん並んでいました。ちょっと長い引用になりましたが、ぜひお読みください。
またうかがう機会がありますように!

(粟野)

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(参加者のアンケートより抜粋)
・2回目の受講です。日本語教室などで実践して感じていた疑問に答えていただけました。改めて学んで他の教室にも摂り入れていきたいです。
・初級を担当しているので参考になった。
・授業の中にもっと多読をとりいれたい。
・沢山知らない事を教えて頂けて良かったです。初めて聞いた事があり、目のさめる時がありました。
・多読という言葉を初めて聞き、楽しむというところから学習を始めていくという形に刺激を受けました。私自身が他言語を学ぶ際に取り入れたいと思いました。
・言葉を体にしみこませるというのはとても納得しました。すごく深いお話を聞けて本当に勉強になりました。
・実際に外国人を相手に多読をすると、結構疲れるし大変だなということがわかりました。特に日本語ゼロの人には、聞かれるので、どこまで説明したらよいのかわからなかったです。
・学習者にどのタイミングでお手伝いすればいいのか難しかったです。全く言葉が通じない学習者と一緒に2時間勉強するのは大変だと身をもってしりました。
・多読はあまり説明を要しないとのことですが、どうしても学習者が意味を知りたがって聞かれるので、説明したくなってしまいました。メモしておいて帰ってからみたいと言っていました。
・「多読」について理解が深まった。
・「多読の4つのルール」は最初は疑問も感じましたが、これが多読の方法かと理解。
・支援者の役目=多読が楽しいと感じさせることが重要と知った。
・教材が手に入りにくいのではと思えた。
・多読について楽しく沢山読むという説明がよく理解できてよかったです。本は自分本位で楽しく読むこと、またやさしいものから入ることをこれからの活動に活かしていきたいと思いました。
・多読の効果について改めて学ぶことができてよかったです。学校は環境を整えなければならず、実施は難しいですが、少しの時間でもできるところからはじめたいと思います。
・目からウロコだらけでした!!
・繰り返しの(多い)絵本は日本語力ゼロの生徒に明日からさっそく使いたいと思いました。
・「楽しい」「好き」をポイントに置くところに好感が持てました。
・(動画の中の)フィリピン女性が「漢字は同じでも読み方が違うものがある」ということに自分で気がついたり、(自分で「読めた」という)歓びの表情を見て、学習とは本来そのようなものだと久しぶりに思い出しました。指導者はそこまで導くことができたら、読むことについて半分の仕事は終わっていると思います。

以上

(粟野)