2019年3月23日(土)マレーシア日本語教育セミナー・日本語教育のための「多読」

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3月23日、マレーシアの国際交流基金クアラルンプール日本文化センターが、毎年開催している日本語教育セミナーに日本語多読を取り上げてくださり、副理事長・粟野と正会員・作田がうかがいました。

クアラルンプールの日本語教育セミナーはこの時期、マレーシア国内の日本語の先生方が集まり、交流する機会でもあります。マレーシア各地、各教育機関で日本語教育に取り組むみなさんに加え、タイ、インドネシア、日本など国外から参加する方もいらっしゃって、60名以上の参加者となりました。

【午前の部】「多読のすすめ」

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午前中は粟野の講演で始まりました。参加者のみなさんのうち、かなり大勢の方は多読という言葉は聞いたことがあるものの、実践についてはご存じなく、多読の本も見たことがない、とのことです。

そのみなさんに、多読とは楽しくたくさん読むことであることであり、それを実現する方法として多読4原則があること紹介しました。そして、多読では教師の仕事は教えることではなく支援であること、どのような本を読むかなど、実践の基本をお話ししました。
多読の授業の実際については、サイトでも公開している授業風景のビデオ見ていただきながら、具体的に実践の説明をしました。絵を見る大切さ、聞き読みについて、多読学習者にどんなことが起こるか、いわゆる四技能との関係など、話すことは尽きません。学習者が主体的に読むことで、目が輝き、日本語が知識としてでなく、意味のある生きた言葉として体に取り込まれることがわかっていただけたでしょうか。

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さらに、実際の授業実施について考えていただくため、近隣の地域での多読授業の実施状況もご報告しました。会員の徳永由佳さんが日本語パートナーズとしてインドネシアで行なった多読授業の様子を粟野が報告、その後、タイの大学で多読授業を実践している山口ひとみさんがご自分の授業の様子を報告してくださいました。

【午後の部】「ワークショップ〜多読を体験し、多読授業を考えよう!」

午後は多読を学習者として体験し、それぞれの現場での実践に取り入れられるか考えていただくためのワークショップです。大学、予備教育、中等教育、教員養成、日本語学校、ボランティア教室など、所属する教育機関ごとにグループになってテーブルについていただきました。10グループ出来ました。普段から交流のある先生方でワークショップ開始前から和気藹々とした雰囲気です。

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まず、みなさんにスクリーン上で字のない絵本を見る体験をしていただきました。日本語多読の原則の1番はやさしいものから読むことですが、そのためには絵が大事であるということを実感していただくためです。

次にいよいよ多読体験開始です。字のない絵本からやさしいレベルの本を各テーブルに配り、「学習者として」やさしい本を読んでいただきました。絵本には教科書などで接することのない語彙も含まれますから、母語話者同然の流暢な日本語を操る先生方でも思いがけず知らない単語に遭遇したりします。みなさん、熱心です。

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続いて、読んだ本のブックトークです。やはり「学習者として」読んだ本について話し合っていただきました。マレーシアは多言語国家であり、日本語が母語ではない先生方も多いことから、ブックトークはそれぞれのグループで都合の良い言語で行いました。

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絵本のちょっとした小ネタを発見して報告する方、ほとんど言葉のない絵本が表現する豊かな精神性を伝える方、逆に、文化背景を知らない絵本を読み解く難しさに気づいた方、自分が読み取れなかったストーリーの事実をグループ内でのブックトークで気づいた方など、ブックトークの後で参加者全員に体験を共有していただきました。

最後には日本語教師にもどっって、「多読をクラスに取り入れたいか」についての話し合いです。

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話し合い終了後、グループ全体で「YES/NO」の結論を出して、報告していただくことにしましたが、みなさんの反応に「YES」が多かったのがうれしかったです。中には、すでに多読授業を実践していらっしゃる先生もいましたから、こちらから無理を言って、授業の様子のビデオをみなさんに見せていただきました。学生のみなさんが座り込んで読みふけっている様子が多読らしく、すばらしいです。

yesno

ただし、問題がないわけではありません。どの教育機関の方も口を揃えておっしゃったのは、日本語の本の確保が難しいこと、また、カリキュラムがびっしりと決められているため、多読を取り入れる時間的な余地がないことです。また、お金を払って学習している学習者が、教師が教えない授業に不満を持つという指摘です。これらの問題については、授業外活動として取り組めるのではないかなど、解決策のヒントも出てきました。

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今回のセミナーは、初めてクアラルンプール日本文化センターのオフィスを会場にして実施されたそうです。ぎっしり集まった参加者のみなさんが、近い距離で親しく交流するあたたかい集まりになりました。多読に対しても非常に好意的に受け止めていただけたようです。マレーシアで日本語多読が大きく広がることを期待します。
ちなみに、クアラルンプール日本文化センターでは、早速5月4日に多読サロンを開催するそうです。

国際交流基金クアラルンプールのスタッフのみなさま、お世話になりました!

(報告・作田)

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