後半の多読相談会は、参加者がトピックごとにブレイクアウトルームに集まり、授業実践の悩みなどを話し合う時間です。前半と後半とそれぞれ30分ずつ行いました。
トピックは次の通りでした。
前半<多読相談会1>
1.なんでも相談(効果や意義、 声かけ、動機付けなど)
2.多読本について
3.読みもの作成
4.ブックトークとアクティビティ
5.短時間多読(ちょこっと多読)
後半<多読相談会2>
1.なんでも相談(効果や意義、 声かけ、動機付けなど)
2.多読本について
3.多読とシャドーイング
4.成績、評価
5.オンライン多読
以下、それぞれのブレイクアウトルームの様子を箇条書きでまとめます。
前半1.なんでも相談
自動翻訳で翻訳しながら読んでいる学生をどうするか。←納得して多読をしてもらう、一人ひとりに対応するなど。
眠そうな学生に対する対応。←一度寝てスッキリしてから読んでもらう。
声かけのタイミング。←読みが止まっている、おもしろくなさそうな学生に声かけ。観察が重要。
前半2.多読本について
参加者のおすすめの本は次の通り。
『もうじきたべられるぼく』(はせがわゆうじ作、中央公論新社 )漢字総ルビ レベル2,3ぐらい。
漫画『バットゥータ先生のグルメアンナイト』(亀作、秋田書店) 漢字総ルビ
漫画『神作家・ 紫式部のありえない日々』(D.キッサン作、一迅社)漢字総ルビ レベル5ぐらいでは。
『ゆうたはともだち』(きたやまようこ作、あかね書房)NPO多言語多読のお勧め市販本にも載っている。
『でんしゃはうたう』 (三宮麻由子作、みねお みつ (イラスト)、福音館書店)
『へいわとせんそう』(谷川俊太郎作、Noritake絵、ブロンズ新社)
『ぼく』(谷川俊太郎作 、合田 里美 イラスト、岩崎書店)漢字総ルビ 中級レベル。
『しんでくれた』(谷川俊太郎作、 塚本 やすし絵、佼成出版社)ひらがな
『たくさんのふしぎ』シリーズ(福音館書店 定期購読)漢字総ルビ 中級以上
漫画『おじさまと猫』(桜井海作、スクウェア・エニックス出版社)
紙芝居 『おおきく おおきく おおきくなあれ』(まついのりこ作・イラスト、童心社)
紙芝居 『よいしょ よいしょ』(まついのりこ作・イラスト、童心社)
前半3.読みもの作成
三浦さんの発表にあった「田丸メソッド」について。
学習者の読みもの作成についてなど。
前半4.ブックトークとアクティビティ
ブックトークのやり方がわからない。←型にはめる必要はない。グループで話す。緩いやり方で良い。
どんなアクティビティをしているか。←「読んだ本の中のベストcharacter・ワーストcharacterを発表する」など。
前半5.短時間多読(ちょこっと多読)
忙しくて時間が取れないボランティア教室などでも、「ちょこっと多読」なら取り入れられるのではないか。
初級などでは読み聞かせで慣れてもらい、その後、20分程度の多読でも効果がある。楽しめるようになったら長くしてもいい。
小学校の読書などで、冊数を読めばいいという読み方になっている子がいる。
授業の最後に多読を入れると時間が足りなくなるから、最初に取り入れている先生もいる。
後半1.なんでも相談
外国にルーツのある児童の多読、地域の図書館での多読。
読みたい本がない学習者への声かけをどうするか。
後半2.多読本について(後半)
参加者のおすすめの本は次の通り。
「お菊さん」(KCよむよむ)
「タクシー」「むじな・幽霊滝」(レベル別日本語多読ライブラリー にほんごよむよむ文庫/NPO多言語多読監修、アスク出版)
「いるのいないの」(京極夏彦作、町田尚子絵、岩崎書店)
「おもしろい!日本のトイレ」(にほんご多読ブックス Vol.7/NPO多言語多読監修、大修館書店)
「おふろやさん」(西村繁男作、福音館書店)
「にじいろのさかな」シリーズ(マーカス・フィスター/作、谷川俊太郎/訳、講談社)など
「なまえのないねこ」(竹下文子/文、町田尚子/絵、小峰書店)
「もうじきたべられるぼく」(はせがわゆうじ/作、中央公論新社)
「おまえうまそうだな」(宮西達也/作、ポプラ社)
「しじんのゆうびんやさん」(斉藤倫/作、牡丹靖佳/絵、偕成社)
「芥川龍之介の桃太郎」(芥川龍之介作、寺門孝之絵、河出書房新社)言葉・内容難しいが総ルビ
「どろぼうのどろぽん」(斉藤倫著/作、牡丹靖佳/絵 福音館書店)
後半3.多読とシャドーイング
NPOが英語多読をしている人向けにやっているシャドーイングの考え方ややり方を参加者に伝えるという形で進行。
日本人は、受けてきた英語教育が、かなり壁となっているので、洗い流す必要がある。英語本来のリズムなど体に入れる。アウトプットに役立つ。日本の英語教育は文字中心だったので、シャドーイングをして音への橋渡しが必要。経験者がよく言う効果は2つ。聞き取れるようになった/文章の切れ目がわかるようになった→これは読むことにも役立つ。
一つ一つの音をきちんとなぞるのではなく、内容はわからなくても、もごもごとついていってリズムをまねする。
一人一人楽しめる音源を探してやるのが続ける秘訣。好きな俳優とか好きなアニメのキャラとか。
後半4.成績、評価
Oral Book Reportとは何か。
どのような宿題を出しているか。←読書記録、プロジェクト。
多読は成績づけとの相性がよくない。アメリカではコロナ以降、content courseを中心にungradingが注目されている。
自己評価の難しさ。
後半5.オンライン多読
授業の仕方の紹介など。
以上、どのグループも時間が足りないところが続出で、普段の懸念や疑問を話し合いました。
最後に、アンケートの結果を抜粋して掲載します。
- テーマが多様で、いろいろなお話を聞けて、勉強になりました。
- 3名の方のプレゼンも素晴らしかったですし、その後のブレイクアウトルームでも学びが多く、いろいろと考えさせられました。来学期の授業をどうするかまた、考えたいと思いました。
- それぞれのお立場からの多読のとらえと実践事例を知ることができてよかったです。
- 第2部、中上級レベルの学習者で「難しいものを読みたがる」人への声かけについて、いろいろアドバイスをいただけてとてもありがたかったです。ぜひ、次回の授業で生かしてみたいと思います!
- 3時間は長い?と思いましたが、全てがあっという間で、もっと時間がほしいと思うぐらいでした…。
- 普段多読授業に直接かかわっていない私ですが、分科会ではオススメの市販の本を紹介いただき、いつも新しい視点をいただいてありがたいです。
- Breakout roomではシャドウイングについて疑問に思っていたことについてKatobushiさんや粟野さんにいろいろ説明していただいて、だいぶ納得がいきました。
- 多読をいろいろな形で実践されている方々のお話が聞けてよかったです。
- 後半の時間では、2回とも(私は多読支援の言語が違いますが)そういうことってありますよね、という話が次々に出てきて、課題解決のための案を持ち寄りながら語り合うことに、一種の連帯感と、心強さも感じました。
- 普段、聞くことが少ない海外での実践を知ることができたのでよかった。
- 多読には色々な活動があるということを今回もあらためて聞かせていただきました。
- 3名の方の発表、とても参考になりました。杉森さんの「多読を実践している学生の読解力が日本に留学した学生より高い」というお話、三浦さんのぼくよむ文庫の物語作成の方法、興味深くお聞きしました。池田さんの紙芝居、学習者に演じてもらいたいと思いました。池田さんの紙芝居、ひとつ持っていますが、他の紙芝居も欲しくなりました。
いろいろなトピックでの多読談義ができ、2024年のよい締めくくりとなりました。2025年もまた、多読支援、がんばりましょう。
よいお年を!
(正会員 作田 記)