お正月が明けた1月5日、2025年最初の入門講座が開催されました。
参加者は、大学、地域のボランティア教室、小中学校で日本語学習支援をしている方々、アメリカでオンラインで学ぶ高校生への日本語教育に関わっている方の4名でした。
まずは、会員で大学の非常勤講師として多読授業を実践している片山智子と作田奈苗がそれぞれ多読の概論と実践例について、1時間半ほどお話をしました。
片山の概論では、皆が同じものを正しく読むことが求められる一斉授業の「精読」と、各自が好きな読みものを選んで楽しむ「多読」を比較し、読み手が能動的に多様な読みを楽しむことが保障されていることが多読の一番の特徴であること、それを実現するために「多読の4つのルール」があるのだとお話ししました。
支援者は、学習者が正しく読めているかをチェックしたり、教えたりするのではなく、習者一人一人が楽しんで読めるように「支援」することが大切なのです。また、「多読」だけでなく聞き読みをしたり動画を見たりして多様なインプットを楽しむ「多聴多観」についてもご紹介しました。
作田からの実践報告では、対面授業とオンライン授業を比較しながら、多読のためにどのような読み物がありそれらをどう準備するのか、そして、最初の授業での導入の方法と1回の授業の中の流れについての説明がありました。
学習者に対するサポートについては、いろいろな特徴の学生を挙げながら具体的な実践例が紹介されました。自身の成功例、失敗例を出しながらの話は、多読授支援の楽しさと難しさを実感していただけたと思います。
以下、後半の質問タイムで出たご質問と私達からのお答えを一部ご紹介します。
Q:授業の場合、評価はどうしているのか
A:正しく読めているかなどは評価せず、出席や読書記録(簡単なメモ)の提出などで評価する。
Q:多読は、短時間でも定期的に継続して行った方がいいのか。
A:目的によっても違う。中高生で読み書き能力が必要なら、定期的にやって読むことに慣れさせたい。
Q:読みものについて
A:学習者向けの多読本ばかりでなく、学校図書館で絵本などを借りたらどうか。マンガも多読に向いている。
事後アンケートでは「どんな狙いで行う方法なのかが腑に落ちました」「辞書を引かない、途中でやめるなど、「読む」ことの学習について発想の転換になりました。でも自分の読書を顧みても、『その通りだ』と納得です」「これから生徒が自主的に日本語を学んでいけるように、大変役に立つ勉強会でした」等の感想が寄せられました。
「小中学生に向けた多読の支援方法についてもっと知りたかった」というご意見もありました。今後、年少者への多読支援について取り上げた勉強会も行っていけたらと思います。
(正会員 片山 記)