9/10(日)にほんご多読セミナー@タイ・バンコク 報告!

LINEで送る
Pocket

9月10日に、タイ・バンコクの泰日工業大学で「にほんご多読セミナー」を行いました(国際交流基金バンコク日本文化センター、泰日工業大学教養学部共催)。バンコクで多読の話をするのは2015年来3回目ですが、(これまでの活動報告はこちら。)なかなか多読実践の輪が広がらず、今度こそ・・・という気持ちで挑みました。
4時間のセミナーで、多読とは?という基本の話から、タイでの実践報告、多読体験ワークショップなど内容はたっぷり盛りだくさん、さて反応はいかに・・・?
参加者は約30人。主に大学で教える日本人の日本語教師のほか、中等教育機関のタイ人の先生たちもかなりいらっしゃいました。遠方からはるばる来てくださった方も。
会場に7つの「島」を作り、その上には、予め、多読用のレベル別読みものをはじめ、各種無料でダウンロードできる読みものや絵本がたくさん置かれました。

まず、最初に多読について聞いたことがあるかを尋ねるとかなり多くの方の手が挙がりましたが、一方、全く知らないという方も。
そこで、最初の小一時間は、多読が今までの読解とどう違うかという話、読み方のルール、支援の仕方などをお話しし、実践の様子の動画も見ていただきました。

その後、実際にタイの大学で多読実践をされている会員の山口ひとみさんから泰日工業大学とサイアム大学での実践報告、国際交流基金の日本語教師、橋本愛子さんには高校で行っている課外の多読の会について報告をしていただきました。「タイの学生は本を読む習慣がない」なんて聞くことがありますが、きっかけがあればその楽しさに目覚めるんですね。大学生は、読んだ後、創意工夫して自分の読みものを作ったそうですし、高校生は、普段マンガをよく読んでいて、高校の多読の会に参加した11名全員が「本を読むことは楽しかった」と答えたそうです!

たっぷりの休憩の後は、実際に「多読してみよう!」のワークショップです。
まず、字のない『あいちゃん』と字を消した『西町交番の良さん~助けて!』(レベル別日本語多読ライブラリー、アスク出版)をみんなで一緒に読みました。絵を見て質問を投げかけるとみなさん、口々に元気よく答えてくれました。絵を見ながら読むモードが高まった?ところで、早速いろいろな本を手に取っていただきました。みなさん、楽しそうです。やはり絵本が人気。みんなで『アンジュール』に見入るグループや『パンダ銭湯』に釘付けになる先生も。


その後は、ブックトークです。思い思いの本の紹介や感想で盛り上がっていました。
全体のシェアのとき、挙がった絵本は他に、『かようびのよる』『ねずみくんのチョッキ』『いるの いないの』『やさいのおなか』など。レベル別多読向け図書からは、『老人の町 『ぼくのお父さん』『ピーターラビットのお話』『ふしぎだな』何で行きますか?』などが紹介されました。


日本人教師からは、「日本語だから楽しめたのかも。外国語で多読をしてみたい」という声も。ぜひ、タイ語や他の言語でやってみてほしいと思います。

最後のセッションは、「多読を考える」。

ここまでの多読についての講義や多読体験を振り返って、多読の魅力や疑問などを書き出してもらいました。


各島から、たくさんのコメントが出て、最後にみんなでスクリーン上でシェアしました。

肯定的な意見の中には、楽しい、入り口のハードルが低いというコメントをはじめ、読むから、話す、書くへとつながる、一緒に読み合うことが楽しいといった「場の力」や「コミュニティ」に言及したコメントや、生徒が責任感を持つといった自律性への指摘もありました。

「疑問、むずかしそう」というコメントもずらりと並びました。
評価の難しさ、本の確保、本嫌いの学生への対処、教えない難しさなど・・・。
それらの疑問、質問に時間内に答えられなかった部分は後日、お答えしてみなさんと共有しました。

さて、最後に「多読をとりいれたい」と思う人に手を挙げてもらいました。

たくさんの手が挙がって一安心です。ぜひ、先生方に「初めの一歩」を踏み出してもらいたいと思います。

事後のアンケートには、以下のようなコメントがありました。

  • ワークショップが楽しかった。
  • 多読活動の様子を見ることができてイメージがつかめました。
  • 自分の勉強にも活かしていこうと思います。
  • 沢山読む経験を積むことで、場面と一緒に言葉が残る。
  • リラックスした雰囲気で、グループでの意見交換などもしやすかった。
  • 授業に取り入れたいという気持ちが強くなりました。

4時間ものセミナーでしたが、あっという間。
最後に仲良く記念写真に収まりました。

多読は、これまでと違うやり方ですから、学習者も支援者も馴染んでいくには時間もかかります。いきなり、長時間実践するのではなく、「ささやかに」やってみて様子をみることをお勧めします。そして、徐々に学習者と支援者の双方が多読は必要な活動という確信を深めていけたら、自ずから多読が続いていくのではないかと思います。
国際交流基金の方でも中等教育機関に多読を紹介する研修が始まるそうです。
かなうならば、バンコク日本文化センターの図書館をうまく活用できるようになり、多読が広がりますように。

(粟野)