9/24(日)オンライン読みもの作成入門講座 報告!

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9月24 日(日)午後4時より、第18 回「オンライン読みもの作成入門講座」を開催しました。
6名の方が参加してくださいました。日本国内から3名と、海外から3名です。海外から参加した方には、キルギス共和国とルーマニアからの日本語ネイティブではない方が含まれていました。

【作成の前に】
まず、粟野が、多読用読みもの全般について資料を示しながらお話ししました。日本語多読のための読みものは、出版されている本だけではなく、サイト上のものも増えてきたが、何千冊もある英語のレベル別読みものに比べてまだまだ少ないので作る必要があること、また、多読のための読みものの作成には「どうなるのだろう?」と先が楽しみになる作りが望ましいこと、語彙や文法を教えようとする意図で作るのは避けること、などの説明がありました。

続いて松田が、読みもの作りのポイントを、実際の例をあげながら簡単に話しました。

さらに読みもの作成を始める前に、「よくばりなイヌ」(イソップ)を使って、粟野が具体的に解説しました。はじめに、かなり難解な語彙の入っているレベル。それを1段階やさしくした初級後半~中級レベルを見ていただきました。さらに、わたしたちがこれをレベル0にしたときの手順、挿絵の決め方、実際の完成版を見ていただきました。

その後、いよいよ、読みもの作成体験です。
【レベル0の読みもの作成】
2つの班にわかれ、それぞれ「アリとキリギリス」「カラスとキツネ」(ともにイソップ)をレベル0で作っていただきました。

・「アリとキリギリス」班は、語彙表・文型表から逸脱する語彙や文型が出がちで、それを修正しながら進めていきましたが、時間がかかり完成に至りませんでした。

・「カラスとキツネ」班は、「よくばりなイヌ」にならって場面分けをしていきました。カラスをほめる場面で、カラスのどこがかわいいか、などについて楽しい意見が出ました。「羽?くちばし?脚?目?」「くちばしは黒かったっけ?脚は?」。何とか完成にこぎつけました。

 

(二つの作品の発表と、講評タイム)どちらの班からも、簡単な言葉で説明するのが大変で、思いのほか時間がかかった、という感想が聞かれました。筋の単純な話でも、日本語入門者は、絵を見ながらその物語世界に入っていくので、それをうまく気を持たせながら?誘導していくのがレベル0の読みものの役割でしょう。さらりと筋だけを書くのでなく、その「タメ」「山場」をどう作っていくかをもっと考えると良くなるだろうと思いました。

【中級用読みもの作成】
今度は、メンバーを入れ替え、小説をリライトして中級用読みものを作ります。
『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)と『注文の多い料理店』(宮澤賢治)の班に分かれ、どちらもレベル3で作りました。

・『蜘蛛の糸』班
まず、原文を読み直してみる、というところから始めたので、時間がかかってしまいました。どの程度省略するか、などにも迷いがあったようです。

・『注文の多い料理店』班
宮沢賢治の味をどこまで残すのかが、難しいところですが、ストーリーに影響がないものは、カットするという方針で、どんどん進みました。タンタアーンという鉄砲の音や、ざわざわ、かさかさ、ごとんごとん、という草や木の音なども、カットして進めました。

(二つの作品の発表と、講評タイム)

『蜘蛛の糸』は、かなりやさしくレベル2と言ってもぐらいでした。極楽の雰囲気を伝えるのに、もう少し情景描写をしてもいいのではないかとスタッフからコメントがあり、「静かな」を加えたらどうだろうという意見が参加者から出ました。

『注文の多い料理店』についても、すっきりした印象の文になっているのは良いが、あらすじになっているのではないか、もう少し原文を活かせたのではないか、宮沢賢治特有のオノマトペを残してもよかったのではないか、という意見が出ました。

最後の意見交換でも、リライトしてわかりやすく話の筋だけにしてしまうのか、それとも多少逸脱語彙が含まれても原作の味をなるべく残したほうがいいのか迷う、という意見が出ました。それについては、スタッフから、もし「レベル3」と決めたなら、その範囲でできるだけ、使える言葉を駆使して盛り込んでいった方がいいのではないかとお答えしました。また、作者らしさは、語彙だけに宿っているわけではないので、話の運び方、口調などいろいろな角度から考える必要があるだろうと思います。
何回このワークショップをやっても、みなさんから出た感想や意見に考えさせられることがあり、われわれスタッフも毎回、勉強になります。

(アンケートから抜粋)

・物語としての面白さを生かしつつ、やさしく書き換えることの難しさもよくわかりました。スタッフのみなさん、参加者のみなさんからのコメントでいろいろな気づきがあり、とても有益でした。

・今回、最後の落ちの付け方まで気が回らなかったのですが、ある程度練習していくとできるようになるのでしょうか。(回答:はい。できるようになります!)

・継承語や外国語の子どもたちのために、英語のOxford Reading Treeシリーズの日本語版のようなものが作れたらいいなあと思っています。

「読みもの作成入門講座」は、3時間で、入門用と中級用の読みものを2作リライトしていただくという入門講座です。何となく物足りなさの残った感じの参加者の皆さんに、「受講経験者向けに、1つの読みものをじっくり完成させる講座も予定していて、ご案内を送るのでぜひご参加ください」という粟野の挨拶で、講座を終了しました。

次回のオンライン読みもの作成入門講座は、11月26日(日)日本時間朝9時~12時です。

(松田 記)