5/28 (日)オンライン読みもの作成入門講座 報告

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5月28日(日)午後4時より、第16回「オンライン読みもの作成入門講座」を開催しました。
7名が参加してくださいました。NPO多言語多読からは粟野、松田が参加しました。
まずは簡単な自己紹介から。なんと、今回は7名中4名が海外・朝だったり、昼だったり、夜だったり、のところからの参加でした。イギリスの大学、アメリカの大学、フランスの公立高校で日本語を教えている方々、ノンネイティブの方も2名いらっしゃいました。日本組も、兵庫県、高知県、佐賀県で日本語学校や地域の日本語教室で教えている方々と列島のあちらこちらから。オンライン講座ならではの状況です。

【作成の前に】

粟野が、多読用読みもの全般について「にほんごたどく特設サイト」の資料を示しながら、簡単に話しました。
次に松田が、読みもの作りのポイントを、実際の例をあげながら解説しました。

【レベル0の読みもの作成】

まず、NPOの「無料よみもの」からイソップの「カラスと水さし」を見ていただきました。「レベル0」の作品の、イラストと文の入り具合などを実感していただけたのではないかと思います。

それから、2つのグループに分かれて、イソップの「アリとキリギリス」か「カラスとキツネ」のどちらをリライトするか、選んでいただきました。A、Bグループとも「アリとキリギリス」を選びました。それぞれグーグルスライドを画面共有しながら、場面分けをしてレベル0の読みものを作っていきました。

1時間後に再集合して、できた作品を見せ合いました。Aが8ページ、Bが9ページの「アリとキリギリス」ができました。Aグループのものは、夏から秋まで遊び暮らしたキリギリスが、アリの家に入れてもらえず、雪の中で倒れているというのが最後のページでした。吹き出しを上手に使って、いきいきとした物語になっていました。

Bグループのものは、アリの家に入れてもらったキリギリスが、来年は夏も働こうと反省するラストになりました。

このラストについては、多言語多読の読みものは、悲しい雰囲気のものが多いので明るい終わり方がいいという意見や、そもそも古い童話は怖い終わり方のものが多く、ハッピーエンドにする必要はないのではないかという意見も出ました。

【中級用読みもの作成】

後半は、中級レベルの文学作品のリライトをしました。題材は「蜘蛛の糸」(芥川龍之介)と「注文の多い料理店」(宮澤賢治)です。メンバーを入れ替えて題材を選びました。Aグループは「注文の多い料理店」を、Bグループは「蜘蛛の糸」を選びました。どちらもレベル3で作りました。
初級とは違って、文学作品をリライトする作業なので、作品の味を殺さないことも条件になってきます。

冒頭の部分をリライトした後、発表と講評をしました。

「注文の多い料理店」のリライトでは、同じ動詞を何度も使うほうがいいのか、使わないほうがいいのか、オノマトペの扱いはどうしたらいいのか、などに迷ったということでした。

また、「蜘蛛の糸」のリライトは、極楽と地獄の情景描写に気を使ったということでしたが、極楽・お釈迦様を天国・神様と変えたこと、犍陀多(カンダタ)をカンタと言い換えたのはどうなんだろう、と疑問も出されました。

最後に参加者の方々に感想を伺うと「3時間が短く感じられた」「楽しかった」などと言ってくださいました。スタッフとして参加した私も、楽しかったです。

【事後アンケートからの抜粋】

・0レベルのアリとキリギリスは、スライドに既に絵も載っていて楽しく作れたような気がしています。0レベルで使える言葉を事前に把握していなければならないのが難しかったです。レベル3の蜘蛛の糸に関しては、やっと「リライト」の意味が分かった感じです。物語の内容が分かっているとやり易いことも感じました。

・読み物作りの奥深さを垣間見た気がしました。多くの制限がある中で、本来の文学作品の良さを損わずに書き変えていくことはとても難しいと感じました。ただ、逆にそこが多読の読み物作りの面白さだとも思います。

・限られた文法項目や単語で簡潔かつ易しい日本語に書き直すことはとても困難でした。また、簡略化しすぎると原作の味が失われる可能性があり、解釈によって物語の展開も変わることに気付きました。さらに、文化によっても面白さの感じ方が異なることもありますね。

・やってみての一番の感想は、リライトを通じて原作をちゃんと読みなおしたいという気持ちが出てきたことです。リライトという過程で、ストーリーやことばを分析的に読むことができ、原作や作品への理解が深まることが楽しいと感じました。

以上

入門講座では、慌ただしくレベルの違う2つの作品を作ることになります。後日ご案内する経験者向けの「初級用読みもの作成講座」「中級用読みもの作成講座」では、もう少しじっくりとリライトに取り組んでいただけると思います。是非、ご参加ください。                            (松田 記)