10月2日(日)オンライン日本語多読授業入門講座 報告

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毎月恒例、第一日曜日に開かれる「オンライン日本語多読授業入門講座」の報告です。
今回は、日本語学校、ヨーロッパの大学、ボランティア教室、オンライン日本語教師のみなさんにお集まりいただきました。NPO多言語多読会員の方の見学もありました。正会員の高橋、片山、粟野が担当しました。
まず、高橋が「多読とは?」というタイトルでお話ししました。
高校の時受けた従来の英語訳読の授業との比較で多読を語り始めました。多読は、「自分で選んで」「楽しく」「たくさん」読むことで、ふだん母語でやっている読む行為に近いものだという話から、読み方の4つのルールや支援者の役割についての詳しい説明や意義が語られました。Z

支援者の鉄則、「教えない」は、学習者を突き放すのではなく、学習者と「一緒に考える」態度が大切だということです。一人一人と向き合い、「どうでしたか?」と声かけをして学習者に寄り添う支援が求められるとの話は、多読らしい支援の真骨頂で、参加者の胸にストンと落ちるものだったようです。事前資料の中にもありましたが、多読をしている学習者が本の内容を思わず、うれしそうに語り出す動画ももう一回一緒に見て、多読の楽しさを感じてもらいました。

次に、片山が大学での多読授業の実践の様子を詳しく報告しました。


多読の導入期には、「読むってどういうことか?」を学習者に考えさせ、精読や訳読、問題に答えるための「読む」ではない「多読」を理解してもらうことが大切だと強調されました。実際に、講座の参加者と字なしの読みもの『あいちゃん』を一緒に読んで、読むことは、単語や文法をチェックしていくことではないことを体感してもらいました。
レベルにあまり拘らない本の提示のしかたや、読書記録、ブックトーク、オンライン多読授業について、授業の詳細についても紹介がありました。

休憩を挟んで、参加者のみなさんからの質問や感想をお聞きしました。

・多読的な会話の授業はどうやったら実現できるか。
・すきま時間でも多読は意味があるのか。
・どのくらい続けたら効果が出るのか。
・まずは、素材がどこにどれだけあるか学んでから始めたい。
・声かけをしなさすぎたかもしれない。

など、いろいろな声が上がり、それに対して講師がお答えしていきました。

アンケートで寄せられた感想も以下に紹介します。

【アンケート回答より】

・たくさんの本を用意することが難しく、ネックになっています。学校にオンライン環境もなくて。こうした環境で何か多読の要素を取り入れるために、どんなことならできるか、何ならできるか、考えています。

・高橋さんの理論で、一緒に考える、一人一人に向き合う という柱を再度確認できました。それから片山さんの報告で、声掛けや自由度の大切さ 観察の重要さを考えました。自分のやっていることを反省できて、とても良かったです。私は、みんなの前でやるブックトークを順番でやらせていたので、もっとやりたい人がやれる形にしようと思います。

・多読の四つのルールを知ることが出来ました。またテストをしないということ、私が普段掛けてた確認する言葉はテストをしていた事なんだと気がつきました。

・感想を伝える男性の動画の撮影の際の話が聞けて、状況がわかり楽しかったです。

・手元に本がない海外の学習者とのオンライン授業で、多読的なことが取り入れられるかについて、ヒントが得られたこと(が、よかったです)。

・今日、早速、オンライン授業で「肉じゃが」「彼氏がほしい!」を生徒と一緒に読んでみました。大変盛り上がり、とても楽しい時間を共有することができました。生徒の一人が絵を描くことが好きで、日本で彼氏を作りたいと以前言っていたので、大ウケでした。他の本も読んでみると乗り気になったので、面白い本があったら教えてね、と伝えました。 昨日の講座のおかげです。今後、多読・多聴・多観をうまく取り入れていけるよう工夫していきます。ありがとうございました!

アンケートでは、早速の実践報告も届き、うれしかったです。これからも、みなさんが多読への一歩を踏み出していけるよう本講座を続けていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。次回は、11月6日です

(記 粟野)