9月25日(日)「オンライン読みもの作成入門講座」報告

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9月25日(日)午後4時、第11回「オンライン・読みもの作成入門講座」を開催しました。今回受講なさったのはスペイン、タイ、そして日本各地からの5人。多言語多読からは粟野、松田、川本が参加しました。
5人の方々に自己紹介をしていただきましたが、大学などの組織ではなく、個人でオンラインでの日本語支援をなさっているという方もいらっしゃいました。このような形での支援は、コロナ収束後も、続いていくのだろうな、と思いました。

まず、粟野から、多読の読みものとはどういうものか、現在どのような読みものがあるか、題材選びや著作権、レベル分けなどについて「にほんごたどく特設サイト」の資料を示しながらの説明がありました。
次に松田が、読みもの作りのポイントを、具体例をあげて解説しました。

【実践その1・初級読み物】
さて、いよいよ作成の実践です。
まずは、初級読みもの作り。作業の前に、参考例として当NPOの「無料読みもの」から、レベル0「カラスと水さし」を紹介しました。絵を見ているだけでも話の展開がわかる、そして話に「オチ」がある、というあたりを実感していただけたのではないでしょうか。
今回は、2人の受講生に講師1人、3人の受講生に講師1人、という2つのグループを作って作業をしていただきました。イソップの「カラスとキツネ」「アリとキリギリス」のどちらかを選んでいただきましたが、両グループとも「カラスとキツネ」になりました。
グーグルスライドを画面共有して文を書き込んでいく、という方式で始めました。あらかじめカラス・キツネ・肉などのイラストをグーグルスライド上にあげておいたので、イラスト探しの手間は省けたと思いますが、語彙や文型の制限のある中で、日本語としての自然さを保ちながらレベル0の読みものを作る、という作業は大変だったようでした。

1つのグループは、初めに木の上に肉をくわえたカラスがいて、そこへ、ずる賢いキツネが来て「羽がきれい」「くちばしもきれい」とお世辞を言う、そして「声も」というところで鳴こうとしたカラスが肉を落とす。それを木の下のキツネがまんまとキャッチ。もう一つのグループも、初めの場面設定は、同じなのですが、お世辞を言われたカラスが「うれしい」と喜んでまんまと肉をとられてしまう方に重点がおかれています。同じ話なのに、視点が違うものができました。読みものづくりは奥が深いですね。

【実践その2・中級読み物】
後半は中級レベルの文学作品のリライトです。メンバーを変えた2つのグループで作業をしました。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」と、宮沢賢治の「注文の多い料理店」のどちらかを選んでいただきましたが、こちらも、両グループとも「注文の多い料理店」を選びました。また、どちらもレベル3でのリライトになりました。賢治らしい表現を残しながら、レベル3の語彙と文型で話を進めていくのは、難しかったようです。なにしろ、賢治ワールドですので話の展開は論理的には少々おかしいのですが、そのままにしておくべきなのだろうか。読者はわかるのだろうか。というあたりも、悩んだところだったようです。
作業後「1つ1つの言葉を入れ替えるのではなく、作り変えるイメージなのだということがわかった」「楽しかった。賢治らしさを残しながら、やさしい言葉に言い換えていくというのは、貴重な体験だった」などの感想が出ました。

【事後アンケートからの抜粋】
・みなさんと一緒に作ることで、自分にないアイディアとたくさん出会え刺激的でした。
・ただ平易な文章に直すだけではなく、オリジナルの良さを残しながら、話のオチに持って行くように考えたり、絵との兼ね合いも考えたりする必要があり、読みもの作りの奥深さを感じました。
・アイディアが浮かばず苦戦しましたが、楽しかったです。1つの文型を練習する教材ではなく、1つのレベルを対象にして教材を作るのはいろいろなことを考えなければならず、グループの方々のアイディアやアドバイスがとても勉強になりました。
・0レベルでは、「絵を見てわかるくらい簡単な文にする」という説明がとてもわかりやすかったです。まずは、0レベルで一つ作ってみたいです。

アンケートでは、今後も読みもの作りをしたい、と書いてくださった方が多く、心強い気持ちになりました。

当NPOには、初級の読み物を、もう少し時間をかけて作っていく講座や、中級の読み物をあらかじめ各自で作っておいてから完成に近づける講座も用意しております。ぜひまたご参加ください。

(NPO多言語多読理事 松田 緑 記)