6月27日(日)オンライン「読みもの作成入門講座」報告

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オンラインでの「読みもの作成入門講座」も4回目になりました。
今回もドイツ、フランス、アメリカなど時差にもめげず!、海外の方を含む11名が集まりました。
小中学校や高校で日本語学習支援にあたっている方、プライベートで教えている方、社会人の指導をされている方、大学の先生、大学院生とさまざまな立場からのご参加でした。

20210627_読みもの作成入門講座

多読用読みものについて

はじめに粟野が、多読用読みものについて説明しました。この講座のたびに数えるのですが、サイト上の無料の読み物が少しずつ増えてきて、現在約200話を作成してきたことになります。
常に読みもの作りで目指していることは、単純ですが、学習者が辞書なしで楽しく読めるものです。「オンラインのものといえども、表紙があり、奥付があり、裏表紙がある。その中に『世界』があること」、「先が気になる書き方をする」、「文型の練習をさせるようなものはダメ」、「漢字を使い、総ルビにする」、「わからなそうな言葉があるときは絵でわからせるように工夫する」など、これまでの多読向け読みもの作りで大切にしてきたことをお話しました。

読みものづくりのポイントとは?

続いて、理事の松田が、さらに具体的な文章の書き方について、にほんごたどく特設サイトの「日本語の多読向け読みものを作ろう」のページを見せて説明しました。
多読用読みものでは、まず、内容と対象を設定します。いざ、書くときは、無理なく本の世界に入ってもらうために、出だしが肝心。「最初の文は短く。話の設定が自然に頭に入ってくるように」書くのが鉄則です。レベルに応じてですが、「文と文のつながりを明確に。主語の省略はしすぎない」、「簡約(リライト)の場合、わかりやすくするために文を前後で入れ替えたり、大幅にカットしたり、小道具などをわかりやすいものに変える」など、ときには大胆に書き換えることが必要です。

実践その1

参加者のみなさんには、事前にウェブサイトを読んできてもらうなどして、ここまでの説明は極力短くしました。(いつも作成の時間が足りなくなるのです!)

いよいよ実践編です。

「にほんご多読ブックス」の「カラスとキツネ」を見ていただき、「レベル0」の絵と文の入り具合、展開の仕方を確認してからグループに分かれ、初級レベルのリライトに挑戦してもらいました。題材は「アリとキリギリス」、または、「ウサギとカメ」です。
ファイルを共有してどう作業を進めるかもみなさんにお任せで進めましたが、今回は、やや苦戦するチームが多かったようです。いざリライト作業に入る前の準備に時間をとられてしまったのは、私たちスタッフの反省点でもあります。
お話を(登場人物の紹介)、(競走の提案)、(ウサギの優勢)・・・そして、最後の(仲直り)まで、起承転結の場面にまず冷静に分析して分けてから作成していったチームがあったり、最初からさくさくとすすめてイラストも入れて完成したチームもありました。

休憩の後、実践編の後半は、中級レベルのリライトです。

実践その2

題材は「注文の多い料理店」です。事前に原作を読んできてもらっていました。文学作品のリライトとなると、原作の味わいをどの程度残してやさしくするかが問題になってきます。闇雲にレベルに合わせてカットしてしまうのではなく、話の肝となるところはなるべく残して生かし、宮沢賢治らしい作品にしてもらいたいところです。山の奥深さ、風の音、登場人物の性格が現れたセリフなどは削除してしまうわけにはいかないでしょう。各チームともそこを意識して書き換えができていたように思います。
短い時間でしたが、そんな読みもの作成の醍醐味を味わっていただけたのではないかと思います。

リライトの一例】
注文の多い料理店(新谷 西村 邊見) (1)

(※テキストに合わせて挿絵を選ぶことも読みもの作りの大切な要素です。)

 

アンケートより

  • とてもおもしろかったです。先生方のご経験によるお知恵もうかがえて勉強になりました。ぜひいつか一冊リライトしてみたいと思いました。
  • できたものをただ読むだけと、作ってみるのとの違いを実感しました。何事も自分でやってみて得るものは大きいですね。
  • グループで作業しながら、みんなで意見を出し合うことで、疑問点などが明らかになりました。最後にそれぞれのグループで作成したものを発表しましたが、とても参考になりました。
  • 前半ではシンプルな話を限られた表現で過不足なくリライトすることのむずかしさを、後半では作家性の強い作品における作者の意図を読み込んで味わいを生かしながら細部を省略したり、リライトすることのむずかしさを感じました。大変楽しかったです。
  • HPに書かれている読み物作成時のポイントを理解したつもりでワークショップに望みましたが、実際に作成することで何故それがポイントなのかを痛感しました。レベルごとに難しさの理由が変わってくるのもよく理解できましたが、それが作成時の面白さにもつながるのかなと感じました。
  • 読みやすさと面白さを意識しながら作り変えるのは難しいところもありますが、とても楽しい作業でした。語彙や表現のレベルを確認しながら進めるのは特に慣れるまでは大変だと感じました。時間があっという間でした。
  • グループでやってみたことで、小さな疑問はグループ内で消化しながら進めることができました。その後の発表では、即フィードバックがいただけたので、修正すべき箇所やよく考えるべき箇所をすっきり理解することができました。

駆け足で2作品のリライトを行いました。これをきっかけに読みもの作りに楽しく取り組んでいただけたらうれしいです。

(粟野 記)