第7回 シンポジウム「図書館多読への招待」 in 岐阜 【実践報告 その2、事例紹介】

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【実践報告 その1】では「図書館多読における学校との連携」をご紹介しました。【実践報告 その2、事例紹介】では、実際に多読を取り入れ、利用者との交流を図ってき多治見市図書館の6年間の軌跡、そして会場にご参加くださったみなさんより、ご自身の多読への取り組みをご紹介いただきました。

「多治見市図書館に多読の木を植えました」(多治見市図書館/飯沼恵子さん・ビデオ報告)

多治見市図書館の飯沼さんのビデオ動画による報告を視聴しました。まず多治見市図書館の紹介があり、次に英語多読6年間の取り組みについて報告がありました。

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多読資料導入の経緯として、所蔵資料の中でも英語関連資料は世代を問わず頻繁に利用されてきていたが、洋書絵本やペーパーバックの洋書はレベル高く利用されていなかった。既存のペーパーバックの利用につながるまで利用者のレベルをサポートすることを目標としている。

英語多読事業は、多読資料の収集、講座・講演会の開催、多読クラブ(たじみ多読を楽しむ会・通称 T.T.T.)開催の3つの柱で行われている。2014年9月に英語多読コーナーを開設し、当初は360冊でスタート、2020年8月には3,600冊所蔵となり、現在も資料を継続して拡大している。多読コーナーには多読3原則の説明、YL(読みやすさレベル)と語数の見方、シリーズリスト、記録用紙などが設置されている。音声CDも多く収集している。定期的な英語多読支援の講演会、初心者向けとフォローアップ講座、親子講座を開催、他の多読クラブと合同多読クラブの開催している。

多読クラブの活動では、メガネチャレンジ、多読マラソンを開催している。本の帯を作成する活動は、始まりは多読クラブ(T.T.T.)メンバーからで、他の図書館との人とつながり活動が広がっていった。そうして多治見市図書館は多読の森になった。多読資料の貸出数も毎年20,000冊を超えて、(2019年度はコロナの影響で減少したが)2018年度はメガネチャレンジと多読マラソン効果もあり2017年度から5,000冊も増加している。

現在はコロナ禍での支援活動として、リモートを活用したオンライン多読クラブを開催し、20代から70代の幅広い世代の参加者で実施している。これからも多読資料の収集を継続し、利用者と魅力的な棚づくりをして、ニーズに合わせた支援講座を開催、対面とオンライン開催を合わせた新しいかたちでの仲間づくりや他館との合同イベント、さらに帯の活動を広めていきたい。

多読の森のおひさまは利用者、日々の水やりは図書館職員、栄養をあたえてくれるのは支援してくださる先生方、今後も豊かな多読の森を目指している。

多治見市図書館ウェブサイト「英語多読を始めませんか」ページへ

事例紹介「各館の多読への取り組み」

シンポジウム参加の皆さんが、持ち時間わずか6分で最新の取り組みを紹介してくださいました。
各地に図書館多読の広がる様子を感じていただけたら嬉しいです。

関市立図書館 吉田智子さん

多読関連資料は現在約2,000冊、多読講座やスタンプラリー(多読を進めるための資料等が入った「スターターセット」付き)を開催。
電子図書館では現在715冊の英語のナレーション付き電子書籍が借りられるようになっています。

蒲郡市立図書館 谷澤琢朗さん

英文多読コーナーは2005年に開設、今年で15年目。今年は「蒲郡市立図書館・多治見市図書館・豊田高専」3館合同イベント「111本の帯プロジェクト」で利用者の方が作成したオススメの多読本の帯を交換しました。2019年11月には「多文化コーナー」が新しく設けられ、英語やその他の言語で書かれた日本に関する本や、学習者向けの日本語多読用の読みものも入りました。

豊橋市学校図書館 鈴木美希さん

小学校2校、中学校1校を対象に英語多読や読み聞かせ絵本の選書、リスト作成を行っています。生徒が自分から手に取ることができ、学習レベルと合う本を選び、公共図書館とも連携しています。

九州看護福祉大学 後藤隆昭さん

焼津図書館では昨年2019年8月から英文多読本の貸し出しが始まりました。同年度は多読入門講座として、多読本のPOPを作る講座やCDを使ったシャドーイングなどのワークショップを開催しています。

まちライブラリー@高岡多読・富山県立志貴野高等学校 中村順子さん

富山県の高岡駅前のウイング・ウイング高岡は県立高校・市立中央図書館・県民カレッジが入る複合施設です。県民カレッジでボランティア多読講座を始め、まちライブラリーにも加入して富山県内のあちこちで無料体験会を開いてきました。家庭科教員としての勤務校、市立中央図書館も入っているこの場所で、図書館とも連携し多読活動を拡げていければと考えています。

三重県津市 英語多読ルーム 前田昇さん

三重県立図書館で年2回開催された英語多読講座に参加した有志で図書館の「英語多読ルーム」で活動するようになりました。月3、4回の活動は図書館ホームページで告知され、図書館カウンターで多読本を借りる人にも司書さんが声かけしてくれています。「100万語近く読んできたが、読めている気がしない」という人も、多読ルームに来ることで続ける励みになっているようです。

河内長野市立図書館 楠本美津子さん

2018年度から英語多読に取り組み、現在1,130冊。3回の英語多読講座にはのべ100名が参加しました。先発の図書館のいいところを全部入れられるので「後発はトク」です。
英語多読のために最初からシステムを作り、検索すればシリーズの貸出中もわかるようになっています。本の紹介文も全部、自分で書いて入れました。

豊田多読クラブ 西澤一(NPO多言語多読理事)

豊田高専図書館の豊田多読クラブでは、多読図書や学習の役に立つ情報の交換をしています。英語での3分ブックトークも別の時間帯で行うようになりました。昨年夏には、クラブのメンバーが海外に進出し、多読の国際学会で豊田多読クラブの紹介をしました。今年は多読クラブの開催数が同じ時期に111回に達した蒲郡図書館、多治見図書館と3館合同で手作りの多読本の帯を交換するイベントを行いました。

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アンケートより(抜粋)

  • 知多市立中央図書館での学校連携がとても参考になった。これからも知多図書館の多読の取り組みについて期待したい。また発表もお願いしたい。
  • 多読を英語教員や、生徒などに説得するのがとてもハードルが高いことが分かった。
  • 学校×図書館のお話しが新鮮で良かったです。
  • 学校連携について、まだまだ課題もみえてきましたが、できることについて考えさせられるところもあり、今回の発表をふまえて参考にできる取り組みを見つけられた気がしました。
  • いろんな図書館さんなどの取り組みがきけて、ぜひうちの図書館でもとりいれてみたいと思うこともありました。学校連携はなかなかむずかしいものですが、あきらめずに働きかけていこうと思います。
  • 岐阜県内で多読に取り組んでいらっしゃる方々との交流もできて楽しかったです。
  • “図書館と連携する”を前提に様々な事例を知り、大変有意義な時間でした。酒井先生のお話しから、多読はすばらしい学習方法と理解しながらも、どうして図書館なのか?を自分自身も消化しつつ、選定担当や管理職にも予算を割いてもらえるよう努力したいです。市町村レベルの図書館も頑張っているのを知り、新たな視点が得られました。
  • 英語多読セット文庫の存在を知り、ぜひ利用したいと思いました。まず、どのように授業に取り入れるのが効果的か検討を実施したいと思います。
  • 様々な事例があって参考になりました。
  • 小中高での事例、特に多読の効果をデータで示されて良かった。
  • 図書館や学校での様々な工夫や苦労がきけて勉強になりました。だんだんと多読の輪が広がっていることを実感できて元気をもらいました。本を読むこと、図書館を利用すること、プラス語学の力がつくこと、こんなにステキなことがもっと広がればいいと思っています。

次回は、2021年10月3日(日)山形県・市立米沢図書館で開催!

閉会の前に、来年の第8回シンポジウムの開催地が発表されました。開催館となる山形県・市立米沢図書館の岸館長から寄せられたビデオメッセージが上映され、東北初の開催に向けての抱負が語られました。市立米沢図書館は2019年4月より図書館多読を取り入れ、この年の8月から多読クラブ(ナセBA英語多読サロン)も開催している元気いっぱいの図書館です。


今年の報告は以上です。今回はコロナ禍もあり、会場となった岐阜県図書館のみなさんは準備から当日の運営まで大変だったと思います。このような時期に開催してくださり本当にありがとうございました。ご参加くださったみなさんもありがとうございました。

来年もまた顔を合わせ、図書館多読について語り合える1日となるよう願っています。

(NPO多言語多読 理事/米澤、小川)

図書館への多読普及活動