6月18日(日)、新宿区立大久保図書館主催(協力:NPO多言語多読)で、日本語多読ワークショップ「やさしい日本語の本を読んでみませんか?〜ゼロから始める楽しい日本語多読〜」が大久保地域センター会議室で開催されました。日本に住む外国出身の人、留学生などが、本を楽しく読みながら日本語力がつけられる――そんな図書館があったら、という私たちの思いが実現したのが2015年6月28日、翌2016年6月19日に第2回、2017年2月に第3回のワークショップが開かれ、今回は第4回の開催となりました。
参加者はこれまでで最多の20名(男性10・女性10)。新宿区在住で、徒歩で来たという人が多かったようです。出身国は、韓国・台湾・中国・ベトナム・ブラジル・スリランカなど多彩。日本語学校の学生、会社員、主婦など背景も多彩。このワークショップの開催を知ったのも、インターネットで、図書館のポスターで、ボランティア日本語クラスでチラシを見て・・・などさまざまでした。中には、図書館近くのカレー屋さんのチラシを見て来たという人もいました。
開始20分前に来て、早くも机の上に出ている本を読み始めている人たちもいましたが、ひとまず、本を置いてもらって午後2時の開始となりました。米田館長の挨拶、そして、NPO多言語多読副理事長の粟野が簡単に多読的な読み方の説明をしてワークショップをスタートしました。
今回は、NHKの取材・撮影が入りました。大久保図書館と町を中心に取材しているとのことでした。大きなカメラやマイクを持ったTVスタッフが部屋に入ったので、参加した人たちの気が散るのではないか、と心配しましたが、みなさんあまり気にする様子もなく、熱心に本を読んでくれました。
「初級」2グループ・「初中級」2グループ・「中級」1グループの5つにテーブルを分けました。
初級グループに小6の男の子を連れて参加した中国出身の主婦がいました。お子さんは日本語には不自由がないようで、漫画『ドラえもん』を読んでいました。お母さんがたどたどしくひらがな絵本を読むのを、とても心配そうにちらちら見ています。
同じ初級の今回2回目のリピーター・中国出身の主婦は読んだ話の内容を多言語多読会員の男性に日本語で再現して伝えていました。「ハチの話」(よむよむ文庫/アスク出版)には、身振り手振りも大きくなり、伝えたいという気持ちがいっぱい。眉間にしわを寄せて、支援者と懸命に文字をたどるだけだった初回のころとは別人のようでした。
もうひとつのテーブルには、来日したばかりの方、日本人の奥様と絵本が大好きな2歳のお子さんと参加された方、30年前に来日して、会話には困っていないが、ひらがなしか読めないという方がいました。こういう人にこそ早く「多読」を知ってもらいたかった、と思いました。
初中級のグループにはレベル0や1の「よむよむ文庫」や「にほんご多読ブックス」(大修館書店)を、笑いながら読んでいる日本語学校の学生さんが6人。蒲田から来てくれた学生さんもいました。CD付き絵本を楽しそうに読んでいたのは中国語の先生。この方は日本語ボランティアクラスから来たそうですが、メモを取りながら読んでいたのが、支援のスタッフのアドバイスもあり、やがてメモを取らずに楽しんで読んでくれました。
中級は韓国出身のママさん2組。それぞれ中2と小5、小5の男の子を連れて参加してくれました。子供たちは、2階の図書館へ行って(会議室は3階)『コロコロコミック』や歴史漫画など、好きなものを借りてきて読みました。中学生のお兄ちゃんは絵が大好き。「千と千尋の神隠し」をちょっと読むと絵を描き始めました。
お母さんは、「よむよむ文庫」のレベル1と2を聞き読み。亡くなった女の子の魂が母のもとに帰る「タクシー」を読んで涙ぐんでいました。
お母さんの一人が、「子どもとは最近、一緒に本を読む機会がなかった。今日は久しぶりに親子で本を楽しめてよかった」と言ってくれました。
中には、先生が教えながら読んでくれるものだと思っていた、と言って途中で帰ってしまった人や、一つ一つの単語にこだわって、メモをやめない人などもいましたが、初めての体験で「多読」を理解できる人ばかりではないのは当然でしょう。それでも、テーブルの上には「よむよむ文庫」と「にほんご多読ブックス」(大修館書店)0~1がずらりと並び、定番の絵本も置いてありますし、前方のテーブルの上には当日、支援のスタッフが図書館からピックアップしてきた絵本もたくさんありましたので、「たくさんの本から好きなものを選んで読むのが多読」という雰囲気は伝わったものと思います。
最後に、それぞれのグループに分かれて、今日読んだ本の中で一番おもしろかった本を選んでもらって話をしました。
「ゆうたのいばりいぬ」「ジョンさん日本へ」「タクシー」「屋久島」「千と千尋の神隠し」「結婚式」「日本のお風呂」など、思い思いの本をみなさん笑顔で挙げてくれました。
ブックトークのあと、数人の希望者を連れて、2階の図書館へ。米田館長の案内で、日本語、外国語、絵本の棚を確認したり、図書カードを作ったりしました。これを機会に、新宿区の図書館を気軽に利用してくれたらいいなと思います。
アンケートの結果は、回収した15人中、「とてもよかった」(9人)、「よかった」(5人)、「また参加する」(8人)でした。
自由記入欄のコメントは以下の通りです。
・図書館にポルトガルの本を入れてほしい。
・おもしろかったんです。
・蒲田の図書館でもしてほしいです。
・外国人に役にたつきかいをくださってありがとうございます。外国人とともに(このような)本を作るきかいがあったらさんかしたいです。
・文化について読みたい。
・日本語を読みたいです。
このような、日本語を読む機会が皆さんの身近にもっとあるといいのに、と思います。『しんじゅく多文化共生プラザ』で毎週土曜日開催の「にほんごの本を読む会」をみなさんにお知らせして別れました。
次回は来年2月の予定です。
松田 記