6/4(日)オンライン日本語多読授業入門講座 報告

LINEで送る
Pocket

6月4日、入門講座が開講されました。海外の大学の先生、日本語学校の先生、地域おこしの一環として外国人支援をしている方、年少者のための日本語教育に携わっている方など、様々な背景を持つ7名が参加されました。講師は正会員の高橋と片山、司会はNPO理事の粟野が担当しました。

まず、正会員の高橋が「多読とは」というタイトルでお話しました。全体を通して強調されたのは、「多読の支援者は、常に学習者と寄りそう姿勢でいることが大切だ」という点です。多読では、教師は「教える」のではなく「支援者」として、学習者一人一人と対話をし、一人一人と向き合っていきます。また、多読と言っても様々な方法があります。授業で一コマ全部を多読に使う場合、授業内の少しの時間を多読に使う「ちょこっと多読」、授業外の課外活動、オンラインで誰でも自由に参加できる多読クラブなど、様々な形態の多読活動が紹介されました。さらに、多読用の読みものの説明や海外での入手方法、多読支援に役に立つサイト情報などの紹介もありました。

続いて、片山から大学での多読授業の実践を紹介をしました。学生の中には、普通の授業の「読解」と「多読」のアプローチが非常に異なるため、授業の最初で戸惑ってしまう人が多くいます。そのため、まずは丁寧に導入することが大切です。やさしい本から読む、辞書は使わないといった多読のルールも、これらが「本の内容から離れずに、翻訳しないで、日本語で日本語を楽しむため」にあるのだということを実感できると、受け入れやすくなるのです。学生のコメントシートから、レベルにこだわらず、さまざまな本を楽しんで読んでいる様子も紹介しました。
また、学習者が読んでみたいという気持ちになるような工夫として、「怖い本」「昔話」「日本の紹介」などジャンルに分けて本を並べてみたり、読み聞かせをしたりしていること、授業中は学習者の様子をよく観察して、いっしょに本についておしゃべりをすることもあれば、本に集中している学生の邪魔をしないようにそっと見守るだけのこともある等、実際の支援の方法を具体的にお話しました。オンラインでの多読授業の方法についても紹介しました。

最後に参加者からいただいたコメントや質問を少し紹介します。
・大学では評価を出す必要があるが、どのようにしているか。
⇒きちんと出席して楽しく読んでいるか、読書記録をつけているかなどを評価の中心にし、読んだ本の数や、書いたり話したりしたときの日本語の正確さなどでは評価しないようにしている。

・多読支援を始めるには、どのぐらい本を準備すればいいか。
⇒「よむよむ文庫」など、出版されている多読用図書を準備するといいが、機関で購入してもらえない場合などは、最初からあまり無理はせず、オンラインで提供されている無料の多読用読みものも併せて利用していくとよい。(すでに1000タイトル近く提供されている)。自分の本や図書館で本を借りて持って行くこともある。

・図書館を活用した多読活動はできるか。
⇒外国人が多い新宿区の大久保図書館とNPO多言語多読が協力して、年に2回日本語多読のイベントをおこなってきた(※現在はコロナ禍で中止)。英語多読では、東海地方など、積極的に「図書館多読」が行われるようになった地域もあるが、日本語多読ではほとんどない。

事後アンケートでは、「今は日本語を教えていないので /非常勤講師の立場なので、実践は難しいです」というお答えもありましたが、「課外活動から始めてみようと思います」「読み物作成講座に参加する予定です」「まずは、自分が英語多読をしてみるところから始めてみてもいいかなと思っています」と、できる範囲で多読に関わろうと思ってくださった様子が窺え、うれしく感じました。

(片山 記)